~輝りは影に憧れる~

 シャドウ・ザ・ヘッジホッグは、屋上から街を見下ろしていた。
夕日がビルの窓に反射し、遠くで子供たちの笑い声が風に乗って届く。

 視線の先には、爆風のように走り抜ける黄色と黒の軌跡。

 ルミナス・ザ・ヘッジホッグ。

 彼の足元には、ホバータイプのスケートボード。
加速には自分の脚力を使い、瞬間的に乗り込んで推進力と操縦性を確保するという、いわば「ダッシュ+スケボー」のスタイルだった。

 スケートのように地を滑るシャドウのエアーシューズとは違い、彼の走りには"肉体の躍動"があった。
 足で地面を蹴る瞬間、ボードに乗り込む動き、ジャンプして空中で一回転、トリックを決めるその姿は──まるで、ソニック。

 「うぉー!見たか!?今の、!」
 「すげー!ルミナス、今日めっちゃキレてるじゃん!」

 同級生たちの歓声に、ルミナスは隻眼を細めて笑い返す。
高く飛び、風を切り、ボードで回転して、空を切るその姿。

 無邪気で、自由で、速さを楽しむその様子───

 シャドウは黙ってその様子を見つめる。
 胸の奥に、妙なざわめきが広がる。

 (……本当に、僕になる気はあるのか?)

 隠すこともない表情で笑い、友と競い合い、風を楽しむ。
まるで世界を敵に回したかのように闘っていた、かつての"自分"とはあまりにも遠い。

 (……いや、違う。なって欲しいわけじゃない)

 そう、あの少年に"なって欲しい"なんて、一度だって思ったことはない。
 むしろ、そのままでいてほしい。
 誰にも染まらず、自分だけの風を走っていてほしい。

 だが──

 なぜ、あいつは僕を選んだ?
 僕の"背中"を、ヒーローだと思ってしまった?

 問いは答えを持たぬまま、風に溶けて消えていく。

 下では、ルミナスがまたひとつトリックを決めて歓声を浴びていた。
 彼はまだ気づいていない。

 自分の走りが、シャドウではなく、別の誰かに近づいていることに。
 そして、その"誰か"は、彼が否定してやまない存在だということに───
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オリソニ豆知識図鑑