~輝りは影に憧れる~

 ルミナスは、足が速かった。
 
 風を切るように走るその姿は、まだ幼さの残る体つきにも関わらず、誰よりも地面を蹴る音が力強く、そして速かった。
 ソニックほどではない。だが、同級生の中では群を抜いていた。

 「うおーっ、またルミナスが一番だー!」
 「やっぱ“ソニック”ってあだ名、正解だよなー!」

 そんな声が上がるたびに、ルミナスはピタリと足を止め、むすっとした表情で振り返る。

 「……違う。僕はシャドウだ。ソニックじゃない」

 頬を少し膨らませながら、片方しかない眼でにらみ返す。
 それでも周りは笑いながら「いや、速さ的にソニックじゃん!顔も似てるし!」とからかってくる。

 ルミナスはぐっと拳を握りしめる。

 「………似てない…!」

 彼の中では、それは明確な“違い”だった。

 ソニックは明るく、自由で、みんなのヒーロー。
 でも自分は──自分がなりたいヒーローは、記憶の中のヒーローシャドウだった。

 「俺はシャドウになるんだ…!」

 その言葉と共に、地面を力強く蹴る。

 「見てろよ…! カオス……!! コントロール!!」

 叫びながら、全力で走る。
 実際にはワープなど起きない。風が巻き起こるだけだ。
 それでも彼の中では、今この瞬間、あの黒いハリネズミの背中を追っているのだ。

 そして──いつか、追いついてみせるのだと。
8/25ページ
オリソニ豆知識図鑑