~輝りは影に憧れる~

「カオスコントロールが使えるようになったんだ」

 その日、ルミナスはいつになく真剣な表情でシャドウの前に立った。
 緑に輝く左眼の奥には自信と期待がぎらついていて、いつもの軽口もはしゃぎもなかった。

 シャドウは眉ひとつ動かさず、低く問う。

 「……なら、見せてみろ」

 それだけで、ルミナスはピッと姿勢を正し、両足を肩幅に開く。

 「カオス……コントロールッ!!!!」

 叫びと同時に、ものすごい勢いでルミナスは駆け出した。
 地面を蹴る音、空気を裂く風、砂埃まで巻き上げて――そのスピードは、確かに速かった。

 だが。

 ワープも、瞬間移動もしていない。

 ただの、超高速爆走。

 「……どう!?」

 ルミナスは得意げに、息を切らしながら胸を張る。
 隻眼がキラキラと期待に揺れている。

 シャドウはしばらく黙っていた。
 そして、静かに一言。

 「……それは“カオスコントロール”ではない。ただの“ダッシュ”だ」

 「えっ……」

 ルミナスの肩がすとんと落ちる。
 頬を赤らめながら、もじもじと足元を見た。

 「……でも、速かったでしょ?」

 「……速い。が、どちらかというとそのやり方はソニックに近い。」

 「ちがっ……!」

 勢いよく顔を上げたルミナスの目に、はっきりと怒りが宿る。

 「僕はシャドウなんだ!! ソニックじゃない!! 見てろよ……そのうちほんとに、瞬間移動するんだからな……!ほんとに!するんだからな!!」

 そして、悔しそうに唇を噛みながら、また走り出す。
 爆風のように、砂埃だけを残して。

 シャドウはその背中を見つめ、静かに目を細めた。

 ――どこかで、あの青いヤツと同じエネルギーを感じる。
 だが、彼の走る理由は、あいつとは似て異なる違う。

 シャドウはふと、自分の足元に視線を落とす。
 地面には、ルミナスが勢いよく蹴った足跡が刻まれていた。

 (……本当に、その力が使えるようになったとき。お前は、何を“選ぶ”というんだ。)

 その問いだけを、心の奥にそっとしまい込んだ。
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オリソニ豆知識図鑑