~輝りは影に憧れる~

 「……そっか……そうだよね」

 ルミナスは静かに頷いた。ほんの一瞬、理解したような──
 シャドウが内心、わずかに安堵しかけたその刹那。

 「シャドウになるんだもん、シャドウみたいに落ち着かなきゃ。……"僕"はそう……シャドウ……"シャドウ・ザ・ヘッジホッグ"……!」

 シャドウの目がわずかに鋭さを増した。

 
 ─────努力の方向性が致命的にずれている。
 

 「……違う。そうじゃない。」

 低く、しかしはっきりと告げた。

 「君がなるべきなのは、誰かの“影”じゃない。“君自身”の姿だ」

 だが――その声は届かなかった。

 「“僕”はシャドウになりたいんだ!!」
 ルミナスは強く叫ぶ。
 言葉に力がこもりすぎて、声がわずかに裏返る。

 ……一人称まで変えてきた。
 さっきまで「俺」と言っていた少年は、今や完全に“シャドウになりきって”いた。

 シャドウは、腕を組み直し、少年の前に立ったまま、じっとその顔を見つめる。

 「……なぜだ?」

 静かな問いだった。
 感情を抑えた声。それでも、確かに“疑問”と“困惑”が滲んでいた。

 「君と会うのは……今日が初めてのはずだ。記憶違いはない。なのに、なぜ……ここまで僕に固執する?」

 ルミナスは少し口を開いたまま、言葉を探すように黙り込む。
 だがすぐに、翡翠の眼を伏せる様に俯きながら答えた。

 「……だって、あのとき……」

 炎の中、燃え盛る車の上に立っていた黒い影。
 気を失いかける中で、唯一、目に焼きついた存在。

 「俺を……助けてくれたのは、あなただから……!」

 その言葉に、シャドウの視線が揺れた。

 助けた? いつ? どこで――
 記憶を探っても、それらしい事実は見つからない。

 ルミナスの中にある“記憶”と、シャドウの中にある“記憶”が、確かに食い違っていた。

 (……どういうことだ……?)

 穏やかな風が、木々の葉を鳴らしていた。
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オリソニ豆知識図鑑