~輝りは影に憧れる~

 その日、シャドウはひとり静かに高台に立ち、街を見下ろしていた。
 
 空は夕焼けに染まり、遠くで列車の音がかすかに響く。
 だが彼の意識は、遠く過去の記憶へと沈んでいた。

 ──なぜ、あの少年は僕にそこまで執着する?

 ルミナス・ザ・ヘッジホッグ。

 毎日のように現れては、僕に「なりたい」と言い続ける奇妙な少年。
 
 だが、ただの憧れとは違う。彼の目には、もっと深く、もっと痛切な何かが宿っていた。

 彼の語った"記憶"。
 
 炎。衝撃。倒れた両親。そして──燃え盛る車の上に立つ、黒いハリネズミ……僕の後ろ姿。

 シャドウは眉をひそめた。
 燃え盛る車……

 ………車…?



 ふと、思い出す。

 かつて初めてソニックと対峙したあの夜。
 まだ人類を憎み、すべてを滅ぼすためだけに動いていた自分。
 街を混乱に陥れ、兵器を破壊し、民間の車も……無差別に。

 車の一台、その上に立って、ソニックを見下ろしていた。

 ──それはまるで、彼の記憶にある"あの姿"そのもの。

 「……」

 そしてもう一つ、脳裏に蘇るルミナスの言葉。

 「……そのあと、両親の葬式があって、伯母さんに連れられて行ったんだ。」

 シャドウの胸の奥で、何かが重く沈む。
 
 「……まさか…。」
 
 点と点が、最悪の形で繋がった。

 もし、あの時──
 もしあの車に、彼の両親が乗っていたとしたら──

 ルミナスが「ヒーロー」だと信じているその存在が。
 
 本当は彼の家族を奪った張本人だったとしたら──

 シャドウは奥歯を噛み締めた。
 風が、彼のまわりを寂しげに吹き抜ける。

 彼に真実を告げるべきか。
 それとも、このまま偽りの"ヒーロー"でい続けるべきか。

 ルミナスの、あのまっすぐな瞳が脳裏をよぎる。
 
 『俺は、シャドウになりたいんだ!!』

 あの言葉が、今は刃のように胸を刺す。
かつて全てを憎み、壊すだけだった"過去の自分"を、誰かが"なりたいもの"と呼んでいる。

 シャドウは静かに目を閉じた。
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オリソニ豆知識図鑑