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第二章 交差する思惑永い夜

ソニックの足がフェイリャの側頭部を捕らえた───はずだった。

 放った蹴りが、手応えと共に抜ける。そこにあったのは、どろりと溶けるように形を失った“肉体”。

 「なっ……!? すり抜けやがったッ!」

 そのまま着地するも、着地音と同時に背後から冷たい気配が迫る。
すぐさま反転し、再び側頭部を狙って拳を繰り出す。

 だが───
 
 その一瞬の隙に、フェイリャは首をわずかに傾け、衝撃をまるで風のように流す。

 その動きで、フードがふわりと落ちた。

 ソニックの目に、その素顔が初めて映る。

 「っ……!」

 マリアを知る者なら、きっと心を乱すその顔立ち───
けれど、ソニックにとってそれは初めて見る異質な存在。

 肌も、髪も、白目さえも闇のように真っ黒。
それでいて、紅玉のように鮮烈な真紅の瞳だけが、鋭く、冷たく光っていた。

 「……へぇ…随分綺麗な顔だな、でもその仏頂面はあいつにそっくりだ。……何なんだ?お前」

 軽口交じりに問いただす。
 
 「俺は“フェイリャ”……プロフェッサー・ジェラルドが造った、"失敗作"だ」

 感情の欠けた声が静かに響く。

 「名前も、顔も、記録には残されなかった……"誰にも知られなかった命"。それが俺だ。」

 ソニックが身構え直す。

 「……そんな失敗作が、どうして暴れてくれてるってんだ?」

 「失敗じゃなかったと証明する。それが……俺の生きる意味だ」

 その言葉の裏にある、計り知れない空虚と執着に、ソニックは眉をひそめた。

 「成程な…だとしても、誰かを傷つけるってんなら……止めるしかないな」

 「止められるものなら、やってみろ」

 瞬間、空気が引き裂かれるように、再び二人が衝突する。
当たらない拳。すり抜ける肉体。

 「──っ!!」

次の瞬間。

 ほんのわずか、ほんの一瞬の間合い。
その隙を、フェイリャは見逃さなかった。

 黒い脚が弧を描く。
迷いも、躊躇も、一切ない。狙いは腹部───急所。

 鈍く、重たい音が鳴る。

 「ぐっ……あッ!!」

 ソニックの身体が宙に浮き、吹き飛ばされる。
そのまま金属の壁に激しく叩きつけられ、轟音が通路に響いた。

 「くっ……ちょ、っと…思ったけどさぁ……その避け方、チートじゃねーの……!」

 腹を押さえ、壁からずるりと落ちるソニック。
あえて軽口を叩いてみせるが、鋭い痛みが体幹に走り、息が詰まる。

 前を向くと───フェイリャが、ただ無言で歩いてくる。
足音は変わらず、ぺた……ぺた……と不気味に響く。

 「お前のスピードは確かに脅威だ。でも──」

 顔は無表情のまま。瞳だけが、冷たい獣のように光っていた。

 「それだけだ」

 そう言い放つフェイリャの瞳には、まるで"処理対象"を見下ろすような冷ややかさが宿っていた。

だが───

 ソニックは、苦しげに笑みを浮かべる。

 「……そっかよ……なら、その"スピードだけ"で、お前を止めてやるよ……!」

 痛みに耐え、再び足に力を込める。
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オリソニ豆知識図鑑