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第二章 交差する思惑永い夜

夜の帳が街を覆い、無数の灯りが地上を宝石のように彩っていた。
 そのはるか上空、風の音すら届かぬほどの高さに、細く聳え立つ塔の先端。

 そこに、一人の影が立っていた。

 フェイリャ。
 黒いフードを目深に被り、顔のほとんどを闇に沈めたまま、街をじっと見下ろしている。
 まるで、この世界そのものを監視する者のように。

「……綺麗なもんだな」

 そう呟いた声は、風にかき消されそうなほど静かで――けれど確かに、彼の中に熱を秘めていた。

 眼下の世界に広がる光。それは、彼が拒絶した"人間たち"の営み。
 それでも、どこか懐かしげに視線を落とすその目には、わずかな揺らぎがあった。

 思い出すのは、眠っていた日々。
 ガラスの中、羊水に似た液体に包まれた、あの静かな“胎児”の時間。

 人知れず、ただ造られ、捨てられた"存在"。

 ――でも、あの人だけは違った。

 まだ自分が"物"として扱われていた時。
 
 自分を造ってくれた生みの親が、「失敗作FAILURE」とレッテルを張り、誰も名前すら与えなかった中───

「でも、この子、生きてるわ。」

 彼女は、毎日のようにやってきて、カプセルの前で笑ってくれた。

 「FAILURE…それが、この子の名前なの?」
 「分類じゃあ可哀想だわ。生きてるんだもの」
 「おはよう、フェイリャ」

 "フェイリャ"───それが、俺の名前になった。
 
 風が吹き抜ける。フードの裾が揺れ、赤い瞳が月明かりを反射する。

「……マリアが願い、信じた世界は……マリアを拒み、裏切った。」

 "俺だけが、お前を守れる存在だった。"

 それを壊したのは───世界か。
 それとも、あの"究極生命体"か。

「マリアが望んだ世界だから、いいって言うのか?」

 「なぁ、マリア……」

 フェイリャは、ただ静かに夜空に問いかけた。

 誰にも届かない言葉を。
 誰にも理解されない祈りを。

 そして、その赤い瞳に映る街は───
 優しさを知らぬまま、ただ静かに煌めいていた。

 「マリアを奪った世界なんて、要らない。」
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オリソニ豆知識図鑑