このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第二章 交差する思惑永い夜

───夢の中、赤い警報灯がアークの廊下を染め上げていた。

 断続的に鳴る警報音、響き渡る銃撃、兵士たちの怒号、科学者たちの悲鳴──
 あの時と、同じだった。

 「マリア……!」

 僕は彼女の手を引き、逃げていた。
握るその手は細く、小さくて、でも必死だった。

 「シャドウ…ッ…」

 息を切らせながら、マリアは僕を信じていた。
僕も、彼女を守ると、あの時、誓っていた。

 だけど───その瞬間。

 銃声が響いた。僕のすぐ後ろで。

 「っ……!」

 マリアの身体が、ぐらりと傾く。
 振り向いた僕の胸元に倒れ込んできたその重さに、心臓が冷たくなる。

 「マリア……!?」

 名を呼びながら支えた彼女の顔が、ゆっくりとこちらを見上げる。
だが──そこにあったのは、もう彼女の優しさではなかった。

 赤い瞳、黒い髪。
マリアの姿は、いつの間にかフェイリャへと変わっていた。

 「……あの時、お前が制圧部隊を殺していれば……」

 低く、静かな声。
耳元で、まるで刃のように刺さる。

 「……選択を間違わなければ……マリアは、こうならなかった」

 その言葉に、身体が動かなくなる。
胸の奥が締め付けられるような感覚。

苦しい。悔しい。───怖い。

「うあああああああッ!!」

 夢の中の自分の叫び声と共に、汗に濡れた身体がベッドの上で跳ね起きる。

「はぁっ……はっ……!!」

 シャドウの胸が激しく上下し、喉が焼けるように乾いていた。

 視界がまだ夢の残滓で霞む中、彼は両手で頭を抱え、肩を震わせた。

 「……また……ッ」

 夢の中の“あの言葉”が、耳の奥にこびりついて離れなかった。
9/19ページ
オリソニ豆知識図鑑