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第一章 壊滅する秩序

 「……そんな事。俺が1番理解している」

低く、確かな感情が乗った声。その声は、まぎれもなく彼の声だった。

 一瞬固まった思考を引き戻されるかのように、頭を踏みつけていた足が側頭部を蹴り飛ばす。

 顔面に受けた衝撃で、世界がぐらりと傾く。

 シャドウの身体が床を滑り、壁に叩きつけられた。鋭い痛みと共に、意識が一瞬遠のきかける。

 壁にもたれながら、シャドウは口元を血で濡らしながら、ゆっくりと顔を上げた。

「……なぜ……」

 声が震える。けれど、問いは強く真っ直ぐだった。

「なら……なぜ、マリアの声を使った。なぜ、あの笑顔を模倣した」

 視界の先、黒衣の影はただ黙って立っている。

「汚していいはずがないと分かっているなら――どうして…っ」

 歯を食いしばりながら、シャドウは壁を支えに立ち上がる。

 体中が悲鳴を上げている。それでも――問わざるを得なかった。
 
 「何故、どうして、……疑問しか出さないな。少しは自分で考えたらどうなんだ?」

 呆れたように首を振る仕草――その一瞬が、シャドウの心にざらついた何かを残す。

 目の前の存在がフェイリャであると理解していながらも、マリアに似たその顔がふと記憶の中の彼女と重なる。
 かつて、加減をしないシャドウを窘める彼女のしぐさ。同じ仕草を見せたことが、確かにあった。

 だが、今のそれには温もりがなかった。表情だけが似ている、まるで剥製のような残像。

「……やめろ」

 絞り出すような声で呟いたシャドウと同時に、フェイリャの口元が動いた。

 「じゃあ俺も質問してやるよ。お前は、なんでここにいる。どうして…マリアを奪った奴らに肩入れしている。」

 その言葉は、容赦なくシャドウの胸を抉った。

 動きが一瞬止まる。

 鋭くも正確な問い──過去に、自分自身が何度も突きつけた疑問とまったく同じだった。

 なぜ自分はGUNに力を貸しているのか。
 なぜ、自分を兵器として扱い、そしてマリアを奪った連中と共にいるのか。

 「それ…は……」

「…答えられないのか。簡単な質問のはずだったが……究極生命体が聞いて呆れる。」

「………っ」

 その答えは、とうに出たはずだった。何故、今になって答えが揺らぐ。

疑問を搔き消すように、はぐらかす様に。首を強く振り。目の前の相手を睨み付ける。

「………僕の質問が先だろう、貴様は何者だ。何故……GUNや僕を狙う…‼」
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