「所長～！頼まれてた書類まとめ終わりましたよ～！」

マンサム「おぉ、もう終わったのか！さすが陽輝だな」

あれから約一週間、陽輝が他の人の仕事を引き受けようとするところを見る度にサニーが怒鳴り込んでくるようになり、徐々に自分から仕事を詰め込むようなことはしなくなった。
だがやはり他の職員より陽輝の能力は高く、元の仕事量については減るどころか増えていた。

「いやいやこれくらい普通ですよ
あっ、サニーさーん！」

なにやらキョロキョロと何かを探しているサニーを見つけ、ダッシュで駆け寄ると背後から勢いよく抱きつく。
陽輝は研究所内でサニーを見つける度に後ろから突進して抱きつく、という行為を繰り返していた。

サニー「うおっ！おま、いつもいつも・・・！離れろ！」

「あ～・・・推し補給したかったのに」

触覚で引き剥がされる陽輝は不服そうな顔をしていた。

サニー「ったく・・・つか、相変わらず仕事に追われてんのなお前」

「今日は少ないほうですよ？ですよね所長」

マンサム「む、ワシに振るのか・・・
なるべく仕事量を減らせるよう調整しているんだが、どうしても陽輝がやったほうが正確で早くてな・・・」

気まずそうに陽輝を見ながら顎に手をやる。

サニー「ここの職員どんだけ無能なんだよ」

「言い過ぎですよサニーさん
それに、居候させてもらってる身なんで私は別に構わないですし、この世界のことについてはわからないことのほうが多いので、私なんかまだまだです」

陽輝の世界に存在しないトリコの世界独自のものに関しての知識はまだ少なく、新しく何かを知る度に驚く日々を送っている。

マンサム「すまんな、他の奴らが不甲斐ないばかりに・・・
ん？サニー、何だその紙は？依頼書か？」

マンサムはサニーが何かの用紙を持っている持っていることに気付き指摘する。
サニーはヒラヒラと用紙を揺らしながら答える。

サニー「いや、これはグルメタウンの広告チラシだ
今日グルメタウンで美容に良い食材がわんさか並ぶ美しいフェアが開催されるらしい！」

珍しく満面の笑みで楽しそうに語るサニー。

「グルメタウン？」

マンサム「満腹都市とも呼ばれる巨大都市”グルメタウン”
様々な飲食店や屋台、料理人には欠かせない調理器具などを取り揃えた巨大デパートまで、あらゆる食に関するものが乱立している、まさに食の遊園地だ！」

「おぉー！食の遊園地！いいな～、いつか行ってみたい・・・！」

サニー「そういうことだ、さっさと行くぞ」

その一言が誰に向けられたものなのかわからず、三人の間に沈黙が訪れる。
よく見るとサニーとマンサムの視線が自分に向いていることに陽輝は気付く。

「・・・ん？え？私！？」

マンサム「さっきから何か探しているなとは思っていたが、陽輝を誘うために探していたのか」

サニー「別に、偶然見つけただけだし」

マンサムのニヤニヤとした視線から逃れるためにそっぽを向くサニー。

マンサム「やれやれ、相変わらず素直じゃない奴だな・・・
陽輝！今日はもう仕事はなしだ！」

「えぇ！？い、いいんですか？」

マンサム「あぁ、楽しんでくると良い！」

ニカッと笑いながらマンサムは陽輝を送り出してくれたのだった。