ホテルグルメ内には事務作業を行うための事務室があり、そこにはいくつかデスクが置かれている。
そのうちの一つに陽輝は腰掛けており、操作しているパソコンの周りには大量の書類があった。

陽輝がここに来てから数時間経っており、朝早くに作業を開始したはずが既に昼過ぎになっていた。
だが陽輝はよほど集中しているのかずっと無言で休まずに作業を続けている。
そんな時、事務室のドアが開き、とある人物が入ってくる。

？「失礼する」

黒のスーツに身を包んだ男性が事務室の中に入ると辺りを見渡し、目当ての人物を発見すると迷いなくその人物の元へ近づいていく。

スーツの男性は陽輝のデスクの前で立ち止まった。

「・・・ん？」

？「君が實景陽輝さん？」

「そうですけど」

？「私はIGO事務局所属の者だ、いつも我々の仕事も請け負ってくれて感謝している
ウーメン局長も大変助かっている、と仰っていた」

IGOの職員だという男性は礼儀正しくお辞儀をする。
以前グルメ研究所で仕事をしていた頃の様子がマンサム経由でIGO各局に伝わっており、普段の仕事以外にIGOの仕事も任されることが多かった。

「そ、そうですか・・・」

急にお礼を言われ陽輝は戸惑うがこれが本題ではないだろうと思い、続きを待った。

職員「そんな君に言いにくいのだが・・・頼みがある」



陽輝は事務室の外で職員から話を伺ったが、何故自分に？と疑問を持つ内容だった。

「要はゼブラが依頼を受けてくれないから私からもお願いしてみてくれ、ってことですか？」

職員「あぁ、こちらがいくら要請しても無視されてしまってな・・・
小松シェフは今休暇を取っているし、君しかいないんだよ」

「まぁそれは別にいいんですけど、私でも結果は変わらないと思いますよ？」

職員「そんなことはない、我々が行くよりマシさ」

「・・・ん？行く？」