情熱のヴェルギリウス
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自分の感情はどこにあるのだろうか。
夢主の疑問は些細なものだった、だから本人すらそこに目を向けようとはしなかった。
それが罪でも罰でもない、ただの疑問でしかないのなら別に解決しなくとも良いのだ。情熱の前でそれが障害にならないのなら意義や意図など知ったことではない。夢主はつくづく自身の無頓着っぷりを感じていた。
だから白石という男との関係に今まで疑念や疑問を提唱することはなかった。むしろそれ以上踏み込みことは愚かな気がしてならなかったのだ。
自分からダブルスを組みたいと頼み込んだのに、その関係に名をつけたり、縛り付けるのはあまりにも図々しい。彼女なりに弁えてはいた、それが感情を置き去りにしたとしても現状を維持するためには都合が良かった。
しかし、そうした現状は永遠には続かないのだろう。
「すまん」
「…謝る必要はないよ。わかった…待ってる」
「自分、相変わらず優しいな」
白石から切り出された提案に自分は承諾した。いつもより影を落としたその顔を見てなぜ、と問い詰めることは到底できなかった。
これを臆病だと責められる自分がいればすぐにでも解決したのだろう。だが夢主は無駄に優しい、だから白石のその顔を見て時間が必要なのだろうと思った。
「(ダブルスを、休みたい、か…)」
白石の真意を理解することはできない。体の不調、心の不調、はたまた第三者のそれか。どれにせよ夢主は踏み込めなかった。
夢主も白石も部長を務めながらダブルスをしていることを考えると身体的にも精神的にも負担がかかるのは当然のことだ。だから互いに歩幅を合わせながら今までやってきたがそれが辛いというのなら夢主にはどうしようもできないことだ、けれど白石は自分の何倍も器用に生きられる、だからこれは当てはまらないだろう。ほかにあるとしたら家庭の事情だったり、男子テニス部や他者に苦言を呈されたり。
夢主なりに色々と考えてはみたがちっとも答えは出なかった、しかしそれを悲観するつもりはない。
あくまで彼は”休みたい”と告げただけだ。別に解消したいと言い出したわけではないのだ。
「(きっと時間が解決してくれる)」
夢主にはそう願うしかない。
だが一向に戻る気配もなく、それどころか日常生活に支障をきたすようになると流石に夢主も参ってしまった。
避けられていることは明白だった。何か気に障ることをしたかと思い声を掛けようにも夢主の顔を見る白石の表情は曇ったままで、目の前に立とうにもそれが揺らいでしまう。
「謙也、私、何かしたか?蔵ノ介を傷つけるような真似、したつもりじゃなかったんだけど…不快にさせたならちゃんと謝らないといけないなって…」
普段の素行が彼の身に余ったのかと思い忍足謙也に相談してみたが彼の表情もまた曇ったままだ。夢主同様、謙也も混乱しているのだろう。
「…俺も何て言ったらええんかわからんわ…せやけど、なぁ…」
言い淀む彼の姿を見て夢主は問い詰めようとも思ったが謙也は続けて「もう少しだけ待っとってほしいとしか、俺には言えんわ」と申し訳なさそうに告げた。
白石の事情を少なからず知っているような素振りでありながら夢主には真実を教えてはくれないのだ。夢主も困ったが謙也の後ろめたい何かを察してそれ以上言葉を紡ぐのをやめた。快活とした彼ですら言葉を選び損ねるほど、白石は追い詰められているのかもしれない。
時が経つにつれて白石を見やる数は増えたが一方で解決策は全く不明瞭なままである。部長としての役目を全うしていることは変わらないが以前ほど笑わなくなった彼を周囲も心配してはいるが男女間ともなれば何をどう伝えればよいのか。不器用な己を呪いながらも事態が解決することを夢主は祈るばかりだった。
夢主の疑問は些細なものだった、だから本人すらそこに目を向けようとはしなかった。
それが罪でも罰でもない、ただの疑問でしかないのなら別に解決しなくとも良いのだ。情熱の前でそれが障害にならないのなら意義や意図など知ったことではない。夢主はつくづく自身の無頓着っぷりを感じていた。
だから白石という男との関係に今まで疑念や疑問を提唱することはなかった。むしろそれ以上踏み込みことは愚かな気がしてならなかったのだ。
自分からダブルスを組みたいと頼み込んだのに、その関係に名をつけたり、縛り付けるのはあまりにも図々しい。彼女なりに弁えてはいた、それが感情を置き去りにしたとしても現状を維持するためには都合が良かった。
しかし、そうした現状は永遠には続かないのだろう。
「すまん」
「…謝る必要はないよ。わかった…待ってる」
「自分、相変わらず優しいな」
白石から切り出された提案に自分は承諾した。いつもより影を落としたその顔を見てなぜ、と問い詰めることは到底できなかった。
これを臆病だと責められる自分がいればすぐにでも解決したのだろう。だが夢主は無駄に優しい、だから白石のその顔を見て時間が必要なのだろうと思った。
「(ダブルスを、休みたい、か…)」
白石の真意を理解することはできない。体の不調、心の不調、はたまた第三者のそれか。どれにせよ夢主は踏み込めなかった。
夢主も白石も部長を務めながらダブルスをしていることを考えると身体的にも精神的にも負担がかかるのは当然のことだ。だから互いに歩幅を合わせながら今までやってきたがそれが辛いというのなら夢主にはどうしようもできないことだ、けれど白石は自分の何倍も器用に生きられる、だからこれは当てはまらないだろう。ほかにあるとしたら家庭の事情だったり、男子テニス部や他者に苦言を呈されたり。
夢主なりに色々と考えてはみたがちっとも答えは出なかった、しかしそれを悲観するつもりはない。
あくまで彼は”休みたい”と告げただけだ。別に解消したいと言い出したわけではないのだ。
「(きっと時間が解決してくれる)」
夢主にはそう願うしかない。
だが一向に戻る気配もなく、それどころか日常生活に支障をきたすようになると流石に夢主も参ってしまった。
避けられていることは明白だった。何か気に障ることをしたかと思い声を掛けようにも夢主の顔を見る白石の表情は曇ったままで、目の前に立とうにもそれが揺らいでしまう。
「謙也、私、何かしたか?蔵ノ介を傷つけるような真似、したつもりじゃなかったんだけど…不快にさせたならちゃんと謝らないといけないなって…」
普段の素行が彼の身に余ったのかと思い忍足謙也に相談してみたが彼の表情もまた曇ったままだ。夢主同様、謙也も混乱しているのだろう。
「…俺も何て言ったらええんかわからんわ…せやけど、なぁ…」
言い淀む彼の姿を見て夢主は問い詰めようとも思ったが謙也は続けて「もう少しだけ待っとってほしいとしか、俺には言えんわ」と申し訳なさそうに告げた。
白石の事情を少なからず知っているような素振りでありながら夢主には真実を教えてはくれないのだ。夢主も困ったが謙也の後ろめたい何かを察してそれ以上言葉を紡ぐのをやめた。快活とした彼ですら言葉を選び損ねるほど、白石は追い詰められているのかもしれない。
時が経つにつれて白石を見やる数は増えたが一方で解決策は全く不明瞭なままである。部長としての役目を全うしていることは変わらないが以前ほど笑わなくなった彼を周囲も心配してはいるが男女間ともなれば何をどう伝えればよいのか。不器用な己を呪いながらも事態が解決することを夢主は祈るばかりだった。