情熱のヴェルギリウス
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途端に過呼吸のようになって胸が苦しい。前触れもない痛みに苛まれて喉を掻きむしりたくなる日はいつも彼女のことを想ってしまう。これは途方もない痛みなのだと仁王は理解してなお苦しみから解放されることはないのだと愛おしさと苦しみの中でもがいている。
夢主が微笑んだ、とても愛おしい。
夢主が泣いている、これも愛おしい。
夢主が自分以外の誰かの前で楽しそうに振る舞っている、凄まじい苦痛だ。
喜びは絶え間なく幸福を与えるが苦痛は際限なく仁王を縛り付ける。夢主を愛するほど己の中の愛情が歪になり手から溢れたものが彼の足元を濁った海へと変えてしまう、その海はジリジリと肌を焦がすようで、臓物が口から零れ落ちてしまいそうで、頭を掻きむしって脳のすべてを暴いてしまいたくなるほど、馬鹿げた苦痛が群がって手の施しようがないものだった。
けれど夢主を目の前にすると海はまっさらになり鮮やかな世界が広がる。
「それはもはや依存ですよ」
柳生は冷静に彼に告げた。思慮深いが達観している彼の言葉に激しく同意した。仁王も馬鹿ではない、己の有様について考える余地はあるが激情に晒されると途端に脆くなるのだ。それでも柳生は諭すように彼に優しく語りかける。
「夢主さんのことが好きだというのは大いにわかります、あなたが中学生の時から私は見守っていましたから」
まるでカウンセリングのようだと机越しに思う。柳生は医者に向いていそうだ、広い視野を持ち的確に状況を判断し助言ができる。共にテニスをしていて頼りになる男だと散々知っていてなおその存在に助けられるとは、などと思いつつも仁王はじっと彼の言葉を待っていた。
「仁王くん…」
どうしてそんな顔をしているんじゃ。俺はただこの思いを理解したいだけで、夢主ちゃんが好きだと確信したくて、それだけで。
だが滲む視界の先で閉口する柳生の顔は、まるで傷だらけの宝石が誰にも拾われず転げ落ちていく様を憐れむかのようで、酷く残酷で救いようのない俺にはちょうど心地がよかった。
夢主が微笑んだ、とても愛おしい。
夢主が泣いている、これも愛おしい。
夢主が自分以外の誰かの前で楽しそうに振る舞っている、凄まじい苦痛だ。
喜びは絶え間なく幸福を与えるが苦痛は際限なく仁王を縛り付ける。夢主を愛するほど己の中の愛情が歪になり手から溢れたものが彼の足元を濁った海へと変えてしまう、その海はジリジリと肌を焦がすようで、臓物が口から零れ落ちてしまいそうで、頭を掻きむしって脳のすべてを暴いてしまいたくなるほど、馬鹿げた苦痛が群がって手の施しようがないものだった。
けれど夢主を目の前にすると海はまっさらになり鮮やかな世界が広がる。
「それはもはや依存ですよ」
柳生は冷静に彼に告げた。思慮深いが達観している彼の言葉に激しく同意した。仁王も馬鹿ではない、己の有様について考える余地はあるが激情に晒されると途端に脆くなるのだ。それでも柳生は諭すように彼に優しく語りかける。
「夢主さんのことが好きだというのは大いにわかります、あなたが中学生の時から私は見守っていましたから」
まるでカウンセリングのようだと机越しに思う。柳生は医者に向いていそうだ、広い視野を持ち的確に状況を判断し助言ができる。共にテニスをしていて頼りになる男だと散々知っていてなおその存在に助けられるとは、などと思いつつも仁王はじっと彼の言葉を待っていた。
「仁王くん…」
どうしてそんな顔をしているんじゃ。俺はただこの思いを理解したいだけで、夢主ちゃんが好きだと確信したくて、それだけで。
だが滲む視界の先で閉口する柳生の顔は、まるで傷だらけの宝石が誰にも拾われず転げ落ちていく様を憐れむかのようで、酷く残酷で救いようのない俺にはちょうど心地がよかった。