本編
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曹操、字は孟徳。それが彼の名前らしい。
名前は字とは何ぞやと頭に疑問符を並べていたが人の話を聞くに苗字と名のようなものだと薄々勘づいたもののやはり文化が違うためか戸惑いを隠せなかった。
恐らくは中国寄りの文明か、そのまま中国であるかの二択だろうがいかんせん名前はこういったことに疎かったため決定的な事実を判断できない、こうして酷く後悔したのだ。もう少し勤勉であればよかったなと。
曹操が馬に跨っている中名前はその横を小走りで歩いた。馬の後ろは危ないだとか言っていたのを聞いていたため辛うじて命の保証は得たものの曹操の横を歩くのはおこがましいのではと気を使ったが曹操は特に怒るでもなく許したため名前は裸足で必死についていったがそもそも裸足で砂利の上を歩くだけで痛いのでまだだろうかと悶々としていると馬を走らせこちらに向かってくる影が幾つか見えた。
「孟徳!あちらの制圧は終わったぞ」
「ご苦労、淵もよくやってくれた」
「いやぁこれくらいなら朝飯前ですって…ん?殿、その小さいのは…?」
「拾い物だ。戦場で宛てもなく彷徨っていたようだが自分より一回りも大きい輩を斬って見せたのでな。いずれ使い物になろう」
「また面妖なことを…」
自分に対する評価が小童のそれだと傍観していた名前であったがよく見てみると現代の頃に比べて確かに小さくなっていた。とはいえ歳は10歳半ばといったところだろうか、顔はわからないが恐らく多少幼いものになっているであろう。
「ともかく居城へ帰るぞ」
「うむ。名前、走れるか」
「え」
「殿、まさか居城まで走らせる気ですか!?」
「よい鍛錬になろう、お主にはいずれは戦場に身を置かせるつもりだ。ここでくたばるようでは困る」
畜生かと言いたくもなったがぐっと堪えた、変な発言をしたら首が飛ぶような気がしたからだ。恐ろしい話だがここはそういうことが当たり前に起きそうな世界だろう、少なくとも人の死がそれほど珍しいものではないようであったのを見るに争乱の最中であると思ってほぼ間違いはない。
おまけにその中でも曹操は埋もれぬ才を持つものだということは後ろ姿を見ている限りでも十二分にわかるものでカリスマ性とはこういうものかとひしひしと感じる始末である。
と物思いに更けている間に三人は馬で駆け出して行ったので慌てて追いかけた。足の裏が痛かろうが今回ばかりは耐える他ない、あの人に捨てられた後落ち行く先がろくでもないことを戦場で見たのだから、より一層名前は必死に走った。