半兵衛さん、私の御主人様になってください! 裏
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「はぁ…、は、ごめんなさい、付き合わせてしまって…、その、ありがとうございました…すごく、気持ち良かったです…」
「うん、そうだろうね。あの様を見ていればわかるよ」
…行為後、意識が戻ってから、ベッドの中で抱き合いながら会話をする。
別に私達は恋人同士というわけではないのだけれど、行為の後に何もなく着替えて帰るなんて、少し味気がなさすぎると思った結果だ。
そも、私と彼はSMだって完成された一つの愛の形であると思っているタイプなので、行為の後は多少触れ合う時間が欲しくなる派閥なのである。
…あと、疲れた時はなんとなくこうすると落ち着く。恥ずかしいからこれは言わないけど。
…にしても、今日は凄かった。あんなになるとは自分でも思っていなかった。やろうと思えば、半兵衛さんは充分プロとしてもやっていけるんじゃないだろうか。
「そ、それで…、あの、半兵衛さん…」
「なんだい?」
「よければその、また付き合っていただけないでしょうか…?なんかその…もう他の誰かを相手にする気が起きなくて…」
癖になってしまった、というか、もう半兵衛さん以外をご主人様にする気が起きない。
申し訳なさを感じながらもそう言うと、彼は優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた。
「そもそもそのつもりだったよ。君は中々調教のしがいがありそうだし」
「……!」
どこか甘くて優しいその手つきと言葉に、私の中に初めて感じるような喜びが生まれる。…確実に私より経験豊富だろう半兵衛さんが、私の身体や反応を『悪くない』と思ってくれただけで、なんだか誇らしかった。
…私、今まで経験少なくてよかったかもしれない。あまり調教の進んでいない状態から、彼に躾けられることができるんだから。
「…あ、ありがとうございます…半兵衛さん、私、嬉しいです。あの、じゃあ、これから半兵衛さんは…私の『ご主人様』ってことで、いいんですよね…?」
「そうなるね。君の反応はとても可愛らしかったし…それにね、由香」
「っあ、あの」
突然、くい、と半兵衛さんの長い指が私の顎をひいた。枷や縄で繋がれているわけじゃないのに、彼から少しも目を離すことができない。
私を見つめる、その綺麗な瞳のせいだろうか。その美しい輝きは、この世のどんな宝石よりも価値があるだろうと思えた。
「…君を他の男に渡すことが、酷く勿体なく思えてしまったんだ」
「は、半兵衛さん…」
「…ねえ由香、先程はしなかったけれど…、今、君に口づけをしていいかい?」
…口づけ。その響きが、彼の口から発せられた途端妙にロマンチックなものに聴こえて、まるで初恋を知った乙女のように胸が高鳴る。
私らしくもない。キスだって行為だって、半兵衛さん以前に他の人と何回もしているのに。
そう思いながらも、さっきまで瞳から目が逸らせなかったのが嘘みたいに、彼の唇に視線が吸い寄せられてしまう。薄めだけど確かな厚さもあって、形のいい唇。
当たり前だけど、そう。今、キスの本当の意味に気付かされたような気分だ。
キスは、好き同士でするもの。そんな、幼稚園児でも知っている事実に、急速に顔に熱が集まっていく。
「あ…、あの……」
「勿論、無理強いはしないさ。由香、受け入れるかどうか、君が決めてくれればいい」
ほとんど誰でも『君』付けで呼ぶ彼が、私のことを呼ぶ時、呼び捨てに変わったのはなぜだろう。主従になったことによる上下関係のせい?
…それとも、もしかしたら。
結構結論をはっきり言うタイプの彼にしては、主語のない台詞。そこにはきっと、私が想像している通りの含みがあるんだろう。受け入れるか、受け入れないか…、彼は、猶予を与えてくれているのだ。
なんだかその返しに言葉を使うのも無粋に思えてしまって、すっと目を閉じて応じる。
「………由香」
「……半兵衛さん」
そっと唇が重なる。
手探りでお互いの指を見つけ出して、優しく絡み合わせた。
私達はその日言葉無いままに、新しく変わった関係の形を確かめ合った。