そういえば誕生日プレゼントに妹と映画を観に行く約束をした。



俺達は支度を済ませると誰もいない家の鍵を閉めて映画館へ向かった。






「今日もお父さんとお母さん帰り遅いってさ」

「ホンマ、ようけ働くわ」

「今度はあたしと侑士のお小遣いでお父さん達に旅行をプレゼントしたいね」

「妹、貯金あるん？」

「……あ、あんまり…」

「無駄遣いばかりするからやで？来年のお年玉は貯金しとき」




俺の発言に「わかりましたよっ」と、不服そうに言い放った。




駅前は年末でバーゲンをしているデパートが多いせいか人だらけ。



はぐれないように、と口実に手を繋げば学校のヤツ等に見られても何の問題もない。





俺達は手を繋いで歩いた。






「…なんか…」

「どないしたん？」

「侑士と手を繋いで歩いたりって、前からしてるはずなのに…」

「ん？」

「前とは違って感じるの。なんでだろう」

「なに可愛えこと言っとんの」

「へ？」





ポカンとした表情の妹に苦笑する。




手を繋いだ感じが違って感じるのは、多分気持ちの問題。




今までとは違って


俺を男として好きになったから




だから感じが違って感じるんやと、



俺は思うのですが。







「そういえば侑士、観たい映画あるの？」

「それがなぁ…今回の正月映画ってアクション物ばかりやねん」




ラブロマンス好きな俺としては微妙や。




「んじゃさ、ミニシアター覗いてみようよ」

「んー、そうやな」

「よっし!!決まり!!掘り出し映画見つけよう!!」

「あ、コラ、そんな引っ張らんくても映画館は逃げへんって」





俺の手を引いて妹はミニシアターに向かって駆け出した。




ふいにショーウインドーに映る俺と妹の姿が目に入った。




ブーツを履いてる妹の身長は俺の肩くらいで



俺の手を引っ張りながら


「はやくー」


と、笑う姿は可愛い彼女





恋人同士のデートにしか見えへん




俺達が



血の繋がっていない兄妹やと





誰がそんなふうに思うやろ―――‥









「中学生２枚」



映画館に着くと妹は二人分の料金を支払った。





「ホンマにええんか？俺、自分の分くらい出すで？」

「何言ってんの？これ侑士の誕生日プレゼントでしょ」

「まぁ…そうゆう約束やったけどな…」

「いいからいいから!!入ろう!!」




財布からお金を出そうとした俺の背中を押して館内に入る。




ラブロマンス映画だけあって女の子同士や、カップルで観に来てる子が多い。





「ミニシアターのわりに結構混んでるね」

「せやな」

「人気の映画だったのかな？」

「どうやろ…全然チェックしてへんかったヤツやけど…」

「面白いといいね」





俺の隣に座って首をこっちに傾ける妹。



映画館なんて何度も一緒に来たことがあるのに違って感じる。





「………」

「どうかした？」

「…あ、いや…日常がこうも変わって感じるんやな、と…」

「え？」


「幸せってこと」




そう耳元で囁くと妹は照れくさそうに微笑んだ。





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