「話がある」


そう言って景吾は忍足くんを引っ張って行く。


引きずられながらも手を振ってくる忍足くんが面白くて私は手を振り返した。





あーあ…

何処か行っちゃった…。



あの二人って仲いいのかな…？


そう言えば車で景吾が言ってた“眼鏡をかけた微妙なロン毛男”あれって忍足くんのこと…？




見たとこ忍足くんくらいしかいないけど…。
後で聞いてみよう…。



英語の教科書を鞄にしまいながらそんなことを考えていると




「日向さん」



と、女の子が３人話しかけてきた。



嬉しい!!
話しかけに来てくれた!!


ちゃんと挨拶しなくちゃ!!





「は、初めまして。宜しくね」



私は席から立って軽く頭を下げた。





「何処から転校して来たの？」
「編入試験は難しかった？」
「跡部様とどういう関係なの？」




転校生ってよく質問責めにあうって言うけど…本当に質問ばかり…。


　　　、、、
って、跡部様!!?


やっぱり景吾って凄いんだ…。




「え、えっと…普通に…都内の公立中学からの転校だよ」

「えぇ!!?公立!!?」

「一般の中学に通ってた子がどうして氷帝に!!」



驚きの声が上がる。


ど、どうしよう…言っちゃまずかったかな…。





「編入試験は!?」

「じ、実は受けてなくて…」

「受けてない!!?そんなことってあるの!!?」

「じゃ、じゃぁ、跡部様とはどうゆう関係なのよ!!今朝一緒に登校してたでしょ!!?」




えぇ!!?

どうしよう!!!
使用人とか言っちゃっていいの!!?
いや、ダメだよねぇ!!?


あぁ…景吾早く戻ってきて…!!!





「え、えっと…景吾はー‥」

「“景吾”!!?跡部様を“景吾”って呼んだ!!?」

「ちょっと!!!どうゆうこと!!?」

「アナタ跡部様の何なのよ!!!」




な、何って…!!!



「え、えっと…」




何て答えたらいいのか言葉に詰まっているとタイミングよく鐘が鳴った。




ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝ…




女の子達は「あぁ、もう!!また後でね!!」と、言い捨てて席へ戻って行った。



た、助かった…。




それにしても…


あの子達って、どう見ても景吾のこと好き…なんだよね？




もし私が景吾に面倒を見てもらってることを知ったら…。




妬いちゃうよね…。


私なんかのせいで皆に嫌な思いさせたくないな…。




きっと朝一緒に登校したせいだよね。

これからは一人で登校して一人で帰らないと。



あ、道ちゃんと覚えなくちゃ。





それはそうと…次の授業の用意しなくちゃ。

数学か…また難しそう…。



机の上に数学の教科書を出していたら



「ただいま～、葵ちゃん」



と、笑顔で忍足くんが戻って来た。


その後ろには眉間にシワを寄せた不機嫌な景吾。




怖い顔…。
どうしたんだろう…。





「景吾どうかした？」

「…どうもしねぇ」

「あんなぁ、跡部が不機嫌なんはいつものことやねん。いちいち気にしとったらキリないで」




そう言いながら忍足くんに頭を撫でられた。


んー‥忍足くんて笑顔なのに何だか不思議な感じ。




こう、思ってることとか表情に出さないタイプ…。


そんな気がする。






「おい!!いつまで頭触ってんだ!!?あぁん!!?」



さっきよりも険しい顔つきになった景吾に忍足くんの手は掴まれた。



「痛いやん」


と、苦笑してる。



やっぱりこの二人って仲良さそう。



そんな二人のやり取りを笑いながら見ていたら先生が教室に入って来た。




号令がかかって授業が始まる寸前、隣から





「勉強、ちゃんと教えてやるから。分からないとこメモっておけ」



と、優しく言ってくれた景吾に私は笑顔で頷いた。




何でもかんでも景吾に迷惑かけちゃう。




このまま甘えてばかりじゃダメ…。



ダメよ…。








NO6 END