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「ねぇねぇ宍戸、今日一緒に帰らない?」
「あ、わりぃ。今日は長太郎と寄るところがあるんだ」
眩しいほど爽やかな笑顔でサラリと断られた。
そう…私は今日も振られるのね…。
や、別に付き合ってるわけじゃないし
私の片想いだし
いいですけどね、しょうがないんですけどね
でもなんで毎回毎回
鳳長太郎の名前が出てくんのよぉっ!!!
私達三年はとっくに部活を引退してるってのに宍戸は毎日のようにテニスコートに顔を出す。
最初は“そんな面倒見イイところも素敵”って思った。
けど、
「長太郎のヤツ前よりもサーブ速くなったんだぜ」
とか
「今日も長太郎の特訓に付き合ってやっかな」
とか
「たまには長太郎の様子見て帰るか」
とか言っちゃって!!!
、、、、
たまにはって、ほぼ毎日様子見に行ってるくせに!!!
毎回私がどんだけ勇気を出して
「一緒に帰らない?」
って誘ってるのかこれっぽっちも気付きゃぁしない。
ホント鈍いよ宍戸。
「…鳳くんとどこに寄り道して帰るの?」
「駅前のスポーツ用品店だけど」
「駅前!!?」
いいなぁ!!駅前デート!!
私も宍戸と一緒に駅前歩きたい!!
しかもしかも、今ってバレンタインムード真っ盛りじゃないの!!!
これって私も一緒について行ってさり気なく宍戸好みのチョコを調べるチャンス!!?
「ねぇ宍戸!!あたしも一緒に行ってもいい!!?」
「は?何で?お前スポーツ用品なんて興味あったっけ?」
「そうなの!!だからさ、ね!?」
「別にいいけど…」
よっしゃぁ!!!
片想い歴半年ちょい、
ちょっとイイ感じ!!!
「宍戸さーん」
「お、長太郎」
憎きライバル鳳長太郎が手を振りながら我がクラスへやって来た。
「今日さぁ、コイツも一緒にいいか?」
「え?あ、先輩こんにちは」
「こんにちは、鳳くん」
ニッコリ微笑む私。
ニッコリ微笑み返す鳳長太郎。
そんな可愛い顔したって私は負けないんだから。
宍戸にとってのNO1はこの私よ!!
「おーい、何やってんだよ。おいてくぞ」
「え!?あ!!ちょっと待ってよー!!」
こうして私達は三人で歩き出した。
ちなみに私と鳳長太郎はまともに会話もしたことがないような仲である。
「わー‥」
駅付近に辿り着くと雰囲気はバレンタインムード一色。
たくさんの女子高生達がわんさか群がっている。
「な、なんだ?この人混みは…」
「クリスマス並みに賑やかですね」
「皆もう用意してるんだねぇ…」
なんとなく早い気もするけど
何事も準備は早い方がいいわよね。
「ねぇ宍戸ってどんなチョコが好―、」
そう言いながら振り向くと宍戸の姿はなかった。
「あれ…?」
「宍戸さんならあっちの隅にいますよ」
鳳長太郎の指す方向を見るとソワソワしながら歩いている。
さすが宍戸、このムードの中どうどうと歩くのはちょっと恥ずかしかったのか。
「先輩」
いきなりライバルに声をかけられてビクッとしながらその顔を見上げた。
「な、何?」
「宍戸さん、ミントチョコが好きなんですよ」
「え?」
何この人
何でそんなことわざわざ…
「あ、す、すみません。余計なお世話ですよね」
「や、えっと…え?」
「俺、宍戸さんに会いによくクラスへ行くじゃないですか。そしたら気付いちゃったんです」
気付いたって…
……まさか…
「先輩、宍戸さんのこと好きですよね?」
「!!!」
ライバルにばれてる!!!
ってかさすがライバル!!
勘が鋭いわ!!
でもミントチョコが好きって情報くれるなんて
敵に塩でも送ったつもり!!?
悔しーい!!!
「頑張って下さいね!!俺、応援してますから!!」
――え?
「先輩、宍戸さんとお似合いですよ」
「鳳くん…」
何この人…
超イイ子なんだけどっ!!!
「あたし頑張るよ!!鳳くん!!」
「はい!!頑張ってチョコあげて下さいね!!」
ライバルが友情に変わる瞬間ってこんな感じなのねっ!!
(切り替え速っ)
「おい!!さっさと来いよ!!」
「あ、スミマセン宍戸さん!!」
「ごめーん!!」
不機嫌な宍戸の元へ私達は駆け寄った。
「ったく!!なんだってんだよ、この人混みは!!さっさと行こうぜ」
「もー、そんなに怒らなくたっていいでしょ。皆チョコ選びに真剣なんだからさ」
「そうですよ宍戸さん」
鳳くんと顔を見合わせて「ねぇ?」と肯くと宍戸が不思議そうに尋ねてきた。
「何でこんなにチョコ売ってんの?」
「「はい?」」
鳳くんと声がハモッた。
ってか…
マジボケですか?
「し、宍戸、2月14日が何の日か知らないってことない…よね…?」
「あ?」
「宍戸さん!!イベントに興味ないにもほどがありますよ!!」
年頃の男の子がバレンタインを全く意識していないなんて!!
そんなことあっていいの!!?
「2月14日ってあれだろ?
長太郎の誕生日」
………あぁ…、
やっぱり私のライバルは鳳長太郎だわ
私はそう確信した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あぁー!!もうどーしよ!!やっぱ無理だよぉー!!」
「先輩なら絶対に大丈夫です!!自信を持って下さい!!」
喚く私を宥める鳳くん。
昼休み、私達は二人で屋上に来ている。
あの日、3人で買い物に行った日から私達はよく話すようになった。
多少ジェラシーを感じることはあるけど相手は鳳くん。
女の子じゃないし、そこはもう諦めるしかない。
宍戸が鳳くんを可愛がってること
そんなことにいちいち嫉妬してたってしょうがない。
そう開き直ることにした。
「で、先輩。宍戸さんにいつ渡すんですか?チョコ」
「だから…どうやって渡したらいいのか分からなくて喚いてたんですけど」
「同じクラスで隣の席なんですし、いつでもチャンスはあるじゃないですか」
「そーゆう問題じゃないの!!!」
だって本命チョコだもん!!
ふられたら立ち直れない!!
「はぁ…。もう義理チョコとして渡しちゃおうかな…」
「ダメですよ!!せっかく宍戸さんのためにミントチョコ用意したんですから!!ちゃんと告白付きで渡さないと!!」
「鳳くんには感謝してるけどさ…チョコ買うのにも付き合ってもらったし…」
そう。
この宍戸に渡すミントチョコ、実は昨日鳳くんと一緒に駅前に買いに行ったモノ。
ギリギリまでどうゆうチョコを買うか悩んでいたら鳳くんが一緒に選んでくれた。
鳳くんは本当に優しい。
これはモテるはずだよ。
屋上に来て15分。
鳳くんの手元には既に3個のチョコレートがある。
昼休みだけで3人の女の子が渡しに来たのだ。
皆、誕生日も兼ねて手作りのチョコレートケーキらしい。
私なんて手作りどころかチョコ選んだのだって自分じゃないし。
全然ダメだよなぁ…。
「クラスで渡すのが嫌なら学校帰りとかですね」
「んー」
「それとも今ここに呼び出しちゃいます?俺呼んできますよ?」
「や!!それはまだ心の準備が!!!」
だってもし振られちゃったらこの後どうゆう顔して宍戸と接すればいいわけ!?
同じクラスな上に隣の席だよ!?
有り得ないっ!!!
「はぁ…」
「先輩…」
「ごめんね…グダグダしてて…」
「そんな謝る必要はないですよ。俺が好きで応援してるんだし」
「んーん。せっかくの誕生日なのに迷惑かけて本当にごめん」
「迷惑だなんて思ってません!!」
強い口調で首を横に振る鳳くん。
そんな彼に私はポケットから取り出したチロルチョコを渡した。
「はい、これ。お誕生日おめでとう」
「え…」
「分かってると思うけどソレ、義理チョコだから」
「どっからどう見ても義理にしか見えませんよ」
一口サイズのチョコなのに「ありがとうございます」と爽やかな笑顔。
なんて可愛いのかしら。
私が鳳くんのこと好きだったら今の笑顔でノックアウトだわ。
「あーあ、鳳くんにあげるみたいに簡単に宍戸にもチョコ渡せたらいいのになぁ」
「それなら…」
「ん?」
「俺で練習してみますか?」
練習!?
練習って、まさか鳳くんを宍戸と仮定して告白しろと!!?
「慣れるためですよ!!先輩!!」
「で、でも…」
「さぁ!!」
さぁ!!じゃないよ!!
何で両手広げてんだよ鳳!!
………。
まぁ…練習…した方が…うん。
「え、えーっと…宍戸、これ…」
そう言いながら宍戸用ミントチョコを鳳くんに渡した。
「はい、ダメです」
「え!!?」
「今の渡し方じゃ本命なんて思いません」
「えー!!!」
「相手は宍戸さんですよ?ちゃんと“好き”って言わないと!!」
ス、スパルタ…。
「はい、もう一度」
「ず、ずっと前から好きでした…」
「先輩らしくない告白の仕方ですね。もっと元気よく言った方がいいですよ」
「宍戸!!これチョコ!!意味分かるよね!!?」
「分かりません!!先輩、宍戸さんが鈍感だって知ってますよね!?」
「宍戸、大好きー!!」
「何か違うなぁ」
おぉい!!
何で私こんな細かい指導までしてもらってんだよ!!
「もういい―、」
「そうだ!!この際チョコを渡した後に抱きつくってのはどうですか!?」
「は?」
抱きつくって…、
宍戸に!!?
「な、なんで!?抱きつく意味が分からないんですけど!!!」
「万が一宍戸さんが先輩のこと何とも思ってなかったとしても、抱きつかれたらドキドキして意識しだしますよ」
告白だけじゃ宍戸をドキドキさせれないって言いたいのかコイツは!!
「さぁ、先輩!!俺を宍戸さんだと思って!!」
だから!!そんな両手を広げられても…っ!!!
………。
周りには誰もいないし…
…練習だし…
まぁ…いっか…。
「このチョコ…本命なんだよ…アンタの好きなのちゃんと選んだんだから…」
そう言って私はチョコを鳳くんに手渡した。
そしてその腕の中に飛び込んだ。
「………」
「………」
ちょっと待て
練習なのにメッチャ恥ずかしい!!!
ちょっと何とか言ってよ!!鳳長太郎!!!
アンタが言いだしっぺでしょうが!!!
(ちょっとぉー!!?)
(お、俺がドキドキしてどうするんだよ!!)
何故か硬直してしまった私達。
そんな私達の背後から
「お前等…っ」
そう驚いてるような声。
二人同時に振り向くと宍戸が立っていた。
「し、宍戸!!?」
「宍戸さん!!?」
何故ここに!!?
「長太郎に渡してほしいってチョコ預かったから持って来たんだけど…」
「あ、そ、そうだったんですか。わざわざスミマセン」
「お、鳳くんモテるねぇー」
私も鳳くんもぎこちなすぎるっ!!
やばいって、これマジでやばい!!!
「悪かったな。お前等がそうゆう関係だって知ってたら預かってなんかこなかったのによ」
は!!?
「つうか、言えよな。水臭ぇな」
「「違っ!!!」」
「実はよぉ、お前等二人怪しいと思ってたんだよなぁ。昨日とか一緒に帰ってただろ?」
ちょっ!!ウソでしょ!!?
「良かったなぁ、長太郎!!誕生日を彼女と過ごせて!」
「し、宍戸さん、何言って…」
「まさかお前の好きなヤツが長太郎だとはなぁ…全然気付かなかったぜ」
「あ、あのね、宍戸、これはね」
「おっと、邪魔者は退散すっかな。じゃぁな」
宍戸は爽やかに手をふりながら屋上から去って行った。
…あれ…
あれれ……
「鳳くん…今の宍戸、動揺してたと思う?」
「あれは…素で喜んでたように見えました」
「本当はあたしのこと好きだから鳳くんにヤキモチ妬いてるように見えたよね?」
「見えません。あれは素です」
「違うよ」
「違いません」
「………」
「………」
この後、私が泣き喚いたのは言うまでもない。
終わり
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