あいつとおれはオレンジの片割れだった。ひとつの果実をふたつに切り分けたその半分だった。あの日離れてからおよそ20年は経ったが、今でもおれは確かにそうだと思っている。否、そうだった、と思っている。
 あいつとおれは同じように青い果実だった筈なのに、あいつとおれじゃあ全く出来が違った。きっとあいつばかりが日当たりの良い場所に居て、だからあいつは眩しくて瑞々しくて、対するおれは日陰で萎れたスカスカで惨めなオレンジ。
 いや、少しばかり嘘を吐いた。育ててくれたロジャー船長たちに誓って言うが、おれだって決して日陰で育った訳じゃない。シャンクスと同じように、一緒に育ったのだから。あの遠く懐かしきオーロ・ジャクソン号で。
 あたたかい陽光の下で同じように育った筈なのに、何が違ったのか。そもそもの出来が違ったのか、ハナから種が違ったのか。だぁれが赤っ鼻だって? うるせぇよ。そもそも別に、おれ達は一緒に育っただけで、血の繋がりもない。兄弟でも何でもないのだ。違って当たり前だ。それなのに悔しかった。隣の芝が青くて、並べて比べられるのが惨めだった。
 あいつとおれは同じだと思っていた。心のどこかで、あいつとおれは通じ合っていると思っていた。そうなんだと純粋に、或いは愚直に、ずっと信じていたかった。
 けれど、そんな幼さ故の自他境界の曖昧さからくる運命共同体だと錯覚するようなぬるくて甘い幻想じみたものを、ずっと直向きに信じていられるほど、おれは盲目でも馬鹿でもなかった。あいつとの差はどっからどう見たって明らかで、だから、おれは惨めな気持ちになって、悔しくて、でも、見栄張ってでもあいつの隣に立ちたくて、所詮それが虚勢に過ぎなくても、あいつの前では弱みなんか見せたくなくて、だから恨み言を言ったりもした。それでも、あいつはいつも鷹揚に笑うばかり。太陽の恩恵を一身に受けたみたいな晴れ晴れしさで、余裕の顔で笑いやがる。
 あいつはおれに埋められないものを持っているのに。おれが背伸びして努力しても手に入れられないような力を持っているのに。あいつは何もかもを持っていて、満たされていて、ひとりで鮮やかなオレンジの果実になっていた。だのに、おれというのは精々欠けたオレンジで、あいつは切り分けた果実の片割れなんかじゃなかった。
 それでも、かつておれたちはひとつになれると信じていた。あいつの足りない部分をおれが補って、おれの足りない部分はあいつが補う。そうやって、お互いに補い合って一緒に居たら、それで完璧なひとつの丸い果実のようになれるんじゃないかと思っていた。けれど、そうではないと悟ってしまった、その寂しさ、虚しさときたら、シャンクスにはわからないだろうよ。
 おれ様のオレンジの片割れよ。お前がそうでないのなら、きっとそんなものどこにも居やしない。
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