文
ダンデはガラルのチャンピオン。
みんなのチャンピオン。
だから、誰のものにもならない。
当然、ソニアのものにはならないのだ。
「だから私、ダンデくんのことは諦めたの」
ソニアは努めて冷淡に聞こえるように語る。俯きがちで、ダンデからは表情が影になっていて見えない。
「私、普通に素敵な恋をして、幸せになりたいの。私の傍にいて、私のことちゃんと見てくれて、私だけを愛してくれる人。そんな相手と一緒になれたら幸せだろうなって。きっとさみしい想いもしないって思うんだよね」
滔々と語って、ソニアはくるりと背を向けた。サイドテールが慣性に従って揺れる。
「だから私、ダンデくんのことは好きにならないって決めてるの」
その言葉はダンデの胸にずんと重い衝撃になってのしかかった。けれど、ダンデはすぐに切り返す。
「じゃあ、オレがソニアの傍にいて、ソニアだけを見て、ソニアを愛すると言ったら」
「そんなことできるの? ダンデくんに」
どこか自嘲めいた棘のある響きを含んだソニアの台詞。
「ダンデくんには無理だよ。チャンピオンとしての責任感すっごく強いし、優しいから。私のことはほっといても大丈夫だからって、他の困ってる人のとこに行っちゃうでしょ」
声が弱々しく震える。このときダンデの目には、後ろを向いたままの彼女の背中がやけに小さく見えた。
「私は大丈夫なんだから、ほっといてよ。一人にさせてよ」
「寂しい想いをしたくないって、さっきソニアが言ったんじゃないか」
「やめてよ。ダンデくんのそれは、弱い人に対する憐れみじゃん。私、これ以上ダンデくんに弱いとこ見られたくないの。困らせたく、ないのに」
ソニアの声が辿々しく詰まりだす。小さな嗚咽が続いて聞こえた。顔は見えなくても想像は付く。泣いているのだ、ソニアが。
「オレはソニアのそばにいる」
だから、ダンデはきっぱりとよく通る声で告げた。彼女に心細い想いなんてさせたくない。その一心だった。
「オレはガラルのみんなが大好きだから、ソニアだけを見ていることはできない。だが、女性として、恋愛対象として愛するのはソニアだけだ」
ダンデの言葉を受けて、ソニアの肩が小刻みに震えた。
「ダンデくんの嘘吐き。口先だけのクセに」
「そうだな。口先だけになるかもしれない。それでもオレのこの気持ちに偽りはないぜ」
ソニアが顔だけを動かしてゆっくりと振り返る。チラリと見える瞳は思った通り潤んでいて、ダンデの胸がつきりと痛んだ。
「オレは叶うならソニアだけのものになったって構わないと思ってるんだ」
「どうせできないのに、そんなこと言うの、狡いよ。卑怯だよ。ダンデくんならしょうがないなぁって、また私、諦められなくなるじゃん」
「諦めないでくれ。オレはソニアが好きだから」
ダンデの真っ直ぐな告白の言葉に、ソニアが息を呑む。彼女がゆっくりと顔を上げると、ダンデと目が合った。やっと向き合ったソニアの潤んだ瞳は、傷付いている彼女に向けるには無神経な表現かもしれないけれど、綺麗だとダンデは思った。見惚れていたのかもしれない。じっと見つめていたら、その目からまた一粒の涙がこぼれ落ちる。
「私も……ほんとうはダンデくんのことがすき」
ダンデは手を伸ばし、親指でソニアの濡れた目元をなるたけ優しく拭う。掬ったソニアの涙はあたたかくて、愛がこぼれたみたいだった。
みんなのチャンピオン。
だから、誰のものにもならない。
当然、ソニアのものにはならないのだ。
「だから私、ダンデくんのことは諦めたの」
ソニアは努めて冷淡に聞こえるように語る。俯きがちで、ダンデからは表情が影になっていて見えない。
「私、普通に素敵な恋をして、幸せになりたいの。私の傍にいて、私のことちゃんと見てくれて、私だけを愛してくれる人。そんな相手と一緒になれたら幸せだろうなって。きっとさみしい想いもしないって思うんだよね」
滔々と語って、ソニアはくるりと背を向けた。サイドテールが慣性に従って揺れる。
「だから私、ダンデくんのことは好きにならないって決めてるの」
その言葉はダンデの胸にずんと重い衝撃になってのしかかった。けれど、ダンデはすぐに切り返す。
「じゃあ、オレがソニアの傍にいて、ソニアだけを見て、ソニアを愛すると言ったら」
「そんなことできるの? ダンデくんに」
どこか自嘲めいた棘のある響きを含んだソニアの台詞。
「ダンデくんには無理だよ。チャンピオンとしての責任感すっごく強いし、優しいから。私のことはほっといても大丈夫だからって、他の困ってる人のとこに行っちゃうでしょ」
声が弱々しく震える。このときダンデの目には、後ろを向いたままの彼女の背中がやけに小さく見えた。
「私は大丈夫なんだから、ほっといてよ。一人にさせてよ」
「寂しい想いをしたくないって、さっきソニアが言ったんじゃないか」
「やめてよ。ダンデくんのそれは、弱い人に対する憐れみじゃん。私、これ以上ダンデくんに弱いとこ見られたくないの。困らせたく、ないのに」
ソニアの声が辿々しく詰まりだす。小さな嗚咽が続いて聞こえた。顔は見えなくても想像は付く。泣いているのだ、ソニアが。
「オレはソニアのそばにいる」
だから、ダンデはきっぱりとよく通る声で告げた。彼女に心細い想いなんてさせたくない。その一心だった。
「オレはガラルのみんなが大好きだから、ソニアだけを見ていることはできない。だが、女性として、恋愛対象として愛するのはソニアだけだ」
ダンデの言葉を受けて、ソニアの肩が小刻みに震えた。
「ダンデくんの嘘吐き。口先だけのクセに」
「そうだな。口先だけになるかもしれない。それでもオレのこの気持ちに偽りはないぜ」
ソニアが顔だけを動かしてゆっくりと振り返る。チラリと見える瞳は思った通り潤んでいて、ダンデの胸がつきりと痛んだ。
「オレは叶うならソニアだけのものになったって構わないと思ってるんだ」
「どうせできないのに、そんなこと言うの、狡いよ。卑怯だよ。ダンデくんならしょうがないなぁって、また私、諦められなくなるじゃん」
「諦めないでくれ。オレはソニアが好きだから」
ダンデの真っ直ぐな告白の言葉に、ソニアが息を呑む。彼女がゆっくりと顔を上げると、ダンデと目が合った。やっと向き合ったソニアの潤んだ瞳は、傷付いている彼女に向けるには無神経な表現かもしれないけれど、綺麗だとダンデは思った。見惚れていたのかもしれない。じっと見つめていたら、その目からまた一粒の涙がこぼれ落ちる。
「私も……ほんとうはダンデくんのことがすき」
ダンデは手を伸ばし、親指でソニアの濡れた目元をなるたけ優しく拭う。掬ったソニアの涙はあたたかくて、愛がこぼれたみたいだった。
10/10ページ