真実と供養
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夏の夕暮れ。
ずらりと並ぶ電柱の中で、一つだけ、花が置かれている場所があった。
そこに案内された花村は、手を合わせてから隣に立つ青年―尚紀の方を見る。
「……ここ、毎日、花がたむけられてるらしいんすよ」
ポソリ。尚紀は呟く。
「アナウンサーのとこも、同じ花みたいで……律儀っていうか、まだ姉貴のこと、ちゃんと覚えてくれてる人がいるんだなって思って……」
それを聞いて、花村はクスリと笑いながら口を開いた。
「……その人な、実際、小西先輩に会って喋ったの、一回だけなんだってよ
アナウンサーに関しては、まるっきり会った事ないって」
「え?」
「しかも、会ったのだって先輩が失踪する少し前。……たったそれだけの関係だったのに、朝とか夕方に、ココに来て手合わせててさ……変だよな」
彼が遠くを見ながら話すのを、尚紀はただ見つめる。
ジャリ、ジャリと誰かが近づく音がして、花村は視線を戻して笑った。
「あ、うわさをすれば……おーい、ユキさん!!」
「……花村君?」
微かに見える白い髪に、青い目。
黒いフードを目深に被り両手にビニール袋を持った桜木は、コテンと首を傾げる。
「それ、うちで買った肉っすか?いつも贔屓にありがとうございます!」
「うん。今日は、唐揚げとか作ろうかなって。……そっちは?」
ふと視線を向けられた尚紀は固まり、花村が「ああ」と彼の肩を叩いて紹介した。
「小西先輩の弟っす。尚紀、こっちが最近越してきた桜木ユキさん」
「は、はあ……どうも」
「尚紀君ね。分かった。……花、また枯れそうだな」
桜木は視線を落とし、ビニール袋から花の束を抜き取って置く。
そして手を合わせると、尚紀が声をかけた。
「……アンタが、姉貴に最後に会ったんですか」
「多分な。最初で最後とは、中々に皮肉なものだけど」
「…その……姉は…どうでしたか」
「死のうとはしてなかったよ」
淡々と。
そう答えると、桜木は尚紀の方を見上げる。
「ジュネスもココもいい場所、ココがなくなってほしくないから、働いてるんだって。
……楽しそうだった」
「…そ、ですか……」
「だから尚紀君も、尚紀君が心から信じたい事を信じて、やりたい事をやればいいんじゃないかな。
周りの人の言葉なんて気にしないで、君がしたい事をさ」
立ち上がってそれだけ告げれば、彼はビニール袋を持ち直して「じゃあね」と通り過ぎていった。
尚紀は彼の言葉に呆然とし、そしてそれを見て花村が苦笑する。
「変な人だろ?こっちの心読んでるみたいな言葉がぽんぽん出てきてさ」
「……はい」
「…気持ち悪いと思うか?」
そう訊ねると、尚紀は少し考えてから、ゆるく首を横に振った。
「……そんなに、嫌な感じしないっていうか……ほんと、変なんですけど……哀れんだりとか、見透かして笑ったりとかしてないのが、分かるっていうか……」
「……」
「何、なんでしょうね、あの人、なんで、あんな……」
―なんで、他の人達以上に『何も無い』のだろう。
―あの人の言葉に、あの人の行動に。
―……ただこちら側が欲しい選択肢だけを、与えるだけで。
ぽたり、ぽたり。
彼の頬を温かい雫が伝い、肩が震える。
花村がその肩を優しく叩いて、二人はその場所から離れていった。
ずらりと並ぶ電柱の中で、一つだけ、花が置かれている場所があった。
そこに案内された花村は、手を合わせてから隣に立つ青年―尚紀の方を見る。
「……ここ、毎日、花がたむけられてるらしいんすよ」
ポソリ。尚紀は呟く。
「アナウンサーのとこも、同じ花みたいで……律儀っていうか、まだ姉貴のこと、ちゃんと覚えてくれてる人がいるんだなって思って……」
それを聞いて、花村はクスリと笑いながら口を開いた。
「……その人な、実際、小西先輩に会って喋ったの、一回だけなんだってよ
アナウンサーに関しては、まるっきり会った事ないって」
「え?」
「しかも、会ったのだって先輩が失踪する少し前。……たったそれだけの関係だったのに、朝とか夕方に、ココに来て手合わせててさ……変だよな」
彼が遠くを見ながら話すのを、尚紀はただ見つめる。
ジャリ、ジャリと誰かが近づく音がして、花村は視線を戻して笑った。
「あ、うわさをすれば……おーい、ユキさん!!」
「……花村君?」
微かに見える白い髪に、青い目。
黒いフードを目深に被り両手にビニール袋を持った桜木は、コテンと首を傾げる。
「それ、うちで買った肉っすか?いつも贔屓にありがとうございます!」
「うん。今日は、唐揚げとか作ろうかなって。……そっちは?」
ふと視線を向けられた尚紀は固まり、花村が「ああ」と彼の肩を叩いて紹介した。
「小西先輩の弟っす。尚紀、こっちが最近越してきた桜木ユキさん」
「は、はあ……どうも」
「尚紀君ね。分かった。……花、また枯れそうだな」
桜木は視線を落とし、ビニール袋から花の束を抜き取って置く。
そして手を合わせると、尚紀が声をかけた。
「……アンタが、姉貴に最後に会ったんですか」
「多分な。最初で最後とは、中々に皮肉なものだけど」
「…その……姉は…どうでしたか」
「死のうとはしてなかったよ」
淡々と。
そう答えると、桜木は尚紀の方を見上げる。
「ジュネスもココもいい場所、ココがなくなってほしくないから、働いてるんだって。
……楽しそうだった」
「…そ、ですか……」
「だから尚紀君も、尚紀君が心から信じたい事を信じて、やりたい事をやればいいんじゃないかな。
周りの人の言葉なんて気にしないで、君がしたい事をさ」
立ち上がってそれだけ告げれば、彼はビニール袋を持ち直して「じゃあね」と通り過ぎていった。
尚紀は彼の言葉に呆然とし、そしてそれを見て花村が苦笑する。
「変な人だろ?こっちの心読んでるみたいな言葉がぽんぽん出てきてさ」
「……はい」
「…気持ち悪いと思うか?」
そう訊ねると、尚紀は少し考えてから、ゆるく首を横に振った。
「……そんなに、嫌な感じしないっていうか……ほんと、変なんですけど……哀れんだりとか、見透かして笑ったりとかしてないのが、分かるっていうか……」
「……」
「何、なんでしょうね、あの人、なんで、あんな……」
―なんで、他の人達以上に『何も無い』のだろう。
―あの人の言葉に、あの人の行動に。
―……ただこちら側が欲しい選択肢だけを、与えるだけで。
ぽたり、ぽたり。
彼の頬を温かい雫が伝い、肩が震える。
花村がその肩を優しく叩いて、二人はその場所から離れていった。