真実と供養
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消滅していくシャドウをぼんやりと眺めながら、桜木はふうと息を吐く。
これで何人目だったか。相談なんて沢山され過ぎて、ひとりひとりは覚えているけれどちゃんと数えていなかった。
そして戻ろうと踵を返すと、視界の隅で不自然に動く影に目を留める。
「クマ君?」
そう。そのシルエットは確か、彼のものだ。
そう思い声をかけると、クマのその後ろに”明らかに彼のものでない”影が立っているのに気づく。
「……久慈川さんも、鳴上君たちも一度退いて回復したりして。その間、時間稼ぐから」
「え……」
「はい。これ回復薬。いっぱい入ってるから使っていい」
鳴上に腰にさげてたポシェットを外して手渡し、すっかり疲れている彼女と共に一度退けと告げた。
―何か嫌な予感がする。影から、”クマのこと”が一切感じ取れない。
鳴上たちが急いで下がるのを気配で感じ、桜木は改めてクマに対峙する
クマはよたよたと桜木に近づき、「ユキサン、ユキサン」と縋るような声を出した。
「クマは誰クマ?本当の自分が幾らでも変えられるなら、クマは一体どこにいるクマ……?」
「………クマ君のずっと悩んでいた事は、それだね」
彼は確認するように呟いて、そして双剣を盾から剣に戻し構える。
そして後ろの影に視線を移すと、「アンタは、誰?」と警戒心を解かずに訊ねた。
『我は影、真なる我……”本当”?”自分”?ククク……実に愚かだ』
「……」
『真実など得ることは不可能だ…真実は常に霧に隠されている。
手を伸ばし何かを掴んでもそれが真実だと確かめる術は決してない…なら…』
真実を求める事に、なんの意味がある?
『目を閉じ、己を騙し、楽に生きてゆく……そのほうがずっと賢いじゃないか』
影はそう言い、嗤う。
桜木はただ静かにその言葉を脳内で反芻し、そしてゆっくりと口を開いた。
「そうか、アンタはクマ君の影じゃない。このマヨナカテレビに巣食ってきた、霧そのものだ」
『ほう……記憶無き者よ、何故そう思う?』
「アンタの声からクマ君の声が全然聞こえてこないから。
…それで、”クマ君は自分自身を騙している”、そう言いたいんでしょ?」
それに、クマも、鳴上達も皆目を丸くした。
影も少し息を呑み、そしてクスクスと嗤う。
『そうだ。あいつは”初めから”カラッポなんだからね。
心の底では気づいているのに、認められず別の自分を作ろうとしているだけさ……
全て奪われたおまえと違い、ただ自分の正体を認めたくないだけのな』
「…俺の事を知っているの?」
『ああ。おまえは、真実の正体もこの世界の正体も薄々気づいている。気づいていて、それから目を背けず正しく見定めようとしている。認めようとすれば、どんな霧の中から掴んだ真実でも容易に認めてしまうだろう。
だからこそ、おまえにはおまえ自身の真実を教えてやろう』
影は桜木に近づき、そして鳴上達にも聞こえる声で囁いた。
『おまえはその正しさと優しさ故に、いつか大切なものを失う。
自らの命を賭しても足りないほどの、重要なものを』
「……そう」
桜木は大して驚く事もなく返し、影をその瞳で見つめる。
巽が「何言ってんだゴラァ!」と怒鳴れば、影は彼から離れ、そしてまた元の位置に戻った。
『ククク……愚か者は見ていて飽きないな…
真実が欲しいなら簡単な事だ。おまえたちが”真実”と思えばいいだけさ……』
「……」
『ではおまえたちにもひとつ真実を教えてやろう……
おまえたちはここで死ぬ。知ろうとしたが故に、何も知り得ぬままな……』
「!クマ君、ごめん!」
桜木は唖然としていたクマの身体を思い切り引いて鳴上の方へ飛ばし、衝撃に身構える。
クマは巽や花村に支えられて、なんとか衝突は免れた。
彼は地面を割らんとする攻撃を跳躍で回避し、そして影の正面に立つ。
「…俺たちがココで死ぬと言ったな。俺たちが”真実”だと思えば、そうなると」
桜木の周りをキラキラとしたカードの破片が覆い、そして桜木はしっかりと影から目を逸らさないまま叫んだ。
「だったら俺は思わない。辛い?愚か?んなの聞き飽きてんだよ。
俺が今、”真実”を作ってやる。
『クマは此処で生きている』、『俺は”真実”を見つけ出すまで諦めない』ってな!!」
これで何人目だったか。相談なんて沢山され過ぎて、ひとりひとりは覚えているけれどちゃんと数えていなかった。
そして戻ろうと踵を返すと、視界の隅で不自然に動く影に目を留める。
「クマ君?」
そう。そのシルエットは確か、彼のものだ。
そう思い声をかけると、クマのその後ろに”明らかに彼のものでない”影が立っているのに気づく。
「……久慈川さんも、鳴上君たちも一度退いて回復したりして。その間、時間稼ぐから」
「え……」
「はい。これ回復薬。いっぱい入ってるから使っていい」
鳴上に腰にさげてたポシェットを外して手渡し、すっかり疲れている彼女と共に一度退けと告げた。
―何か嫌な予感がする。影から、”クマのこと”が一切感じ取れない。
鳴上たちが急いで下がるのを気配で感じ、桜木は改めてクマに対峙する
クマはよたよたと桜木に近づき、「ユキサン、ユキサン」と縋るような声を出した。
「クマは誰クマ?本当の自分が幾らでも変えられるなら、クマは一体どこにいるクマ……?」
「………クマ君のずっと悩んでいた事は、それだね」
彼は確認するように呟いて、そして双剣を盾から剣に戻し構える。
そして後ろの影に視線を移すと、「アンタは、誰?」と警戒心を解かずに訊ねた。
『我は影、真なる我……”本当”?”自分”?ククク……実に愚かだ』
「……」
『真実など得ることは不可能だ…真実は常に霧に隠されている。
手を伸ばし何かを掴んでもそれが真実だと確かめる術は決してない…なら…』
真実を求める事に、なんの意味がある?
『目を閉じ、己を騙し、楽に生きてゆく……そのほうがずっと賢いじゃないか』
影はそう言い、嗤う。
桜木はただ静かにその言葉を脳内で反芻し、そしてゆっくりと口を開いた。
「そうか、アンタはクマ君の影じゃない。このマヨナカテレビに巣食ってきた、霧そのものだ」
『ほう……記憶無き者よ、何故そう思う?』
「アンタの声からクマ君の声が全然聞こえてこないから。
…それで、”クマ君は自分自身を騙している”、そう言いたいんでしょ?」
それに、クマも、鳴上達も皆目を丸くした。
影も少し息を呑み、そしてクスクスと嗤う。
『そうだ。あいつは”初めから”カラッポなんだからね。
心の底では気づいているのに、認められず別の自分を作ろうとしているだけさ……
全て奪われたおまえと違い、ただ自分の正体を認めたくないだけのな』
「…俺の事を知っているの?」
『ああ。おまえは、真実の正体もこの世界の正体も薄々気づいている。気づいていて、それから目を背けず正しく見定めようとしている。認めようとすれば、どんな霧の中から掴んだ真実でも容易に認めてしまうだろう。
だからこそ、おまえにはおまえ自身の真実を教えてやろう』
影は桜木に近づき、そして鳴上達にも聞こえる声で囁いた。
『おまえはその正しさと優しさ故に、いつか大切なものを失う。
自らの命を賭しても足りないほどの、重要なものを』
「……そう」
桜木は大して驚く事もなく返し、影をその瞳で見つめる。
巽が「何言ってんだゴラァ!」と怒鳴れば、影は彼から離れ、そしてまた元の位置に戻った。
『ククク……愚か者は見ていて飽きないな…
真実が欲しいなら簡単な事だ。おまえたちが”真実”と思えばいいだけさ……』
「……」
『ではおまえたちにもひとつ真実を教えてやろう……
おまえたちはここで死ぬ。知ろうとしたが故に、何も知り得ぬままな……』
「!クマ君、ごめん!」
桜木は唖然としていたクマの身体を思い切り引いて鳴上の方へ飛ばし、衝撃に身構える。
クマは巽や花村に支えられて、なんとか衝突は免れた。
彼は地面を割らんとする攻撃を跳躍で回避し、そして影の正面に立つ。
「…俺たちがココで死ぬと言ったな。俺たちが”真実”だと思えば、そうなると」
桜木の周りをキラキラとしたカードの破片が覆い、そして桜木はしっかりと影から目を逸らさないまま叫んだ。
「だったら俺は思わない。辛い?愚か?んなの聞き飽きてんだよ。
俺が今、”真実”を作ってやる。
『クマは此処で生きている』、『俺は”真実”を見つけ出すまで諦めない』ってな!!」