林間学校
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林間学校も終わって、しばらく後。
桜木がいつものように豆腐屋に足を向けると、何故か人だかりが出来ていた。
それを掻き分け中に入り、店の奥に声をかける。
「あのー、絹豆腐と、あと油揚げください」
そう言いながら軽く店の中を見渡せば、いつものおばあさんの姿はなく、代わりに割烹着をまとった女性が「ちょっと待ってて」と返した。
「いつものおばあさんは?」
「…野次馬で疲れちゃって」
「野次馬?」
キョトンと目を丸くすると、彼女は怪訝そうに「アタシの事、知らない訳じゃないでしょ?」とため息をつきながら答える。
それに桜木は首を振り、そして暫く考えてから口を開いた。
「……ごめん、俺、テレビとか観てない」
「へえ……めずらし」
「一人暮らしだから、あんまりつけようと思わなくて。
地元のニュースならたまにみるけど」
豆腐と油揚げの入った袋を受け取って、お金を出す。
「名前は?」と聞くと、「久慈川りせ」と返ってきた。
「あなたは……おばあちゃんの言ってた、”ユキちゃん”?」
「桜木ユキ。好きに呼んでいいよ」
桜木がそう言うと、りせは少し瞬きしてから、「そう」と笑った。
すると桜木が「あ、その顔」と目を向ける。
「へ?」
「その顔、本物のほうだ。……やっぱり、可愛いね」
遠くから、キツネの鳴き声が聞こえてくる。
りせは「え……」と呟くように口を開き、そして彼を凝視した。
「俺、アイドルとしての君のこと知らないから、もしかしたら苦しく感じるかもしれないけど……
でも今の、まっさらな表情も、俺は好きだよ?」
「……じゃあ、さっきまでのアタシ、どんな顔だった?」
「すごい疲れてた。休むっていうより、言葉を吐き出しちゃった方がいいと思うくらい」
いつの間にか入ってきたキツネを抱き上げて、桜木は淡々と答える。
「テレビ向けの性格を作りすぎて、多分どっちがどっちだかはっきりさせたくなってるんだと思うけど……
でも、俺はどっちの君も好きだなあって」
それだけ。
桜木はそう言うと、彼女の頭にぽんと手を置いてから踵を返す。
「久慈川さん、じゃあまたね」という声は、彼女の耳に入らず溶けていった。
桜木がいつものように豆腐屋に足を向けると、何故か人だかりが出来ていた。
それを掻き分け中に入り、店の奥に声をかける。
「あのー、絹豆腐と、あと油揚げください」
そう言いながら軽く店の中を見渡せば、いつものおばあさんの姿はなく、代わりに割烹着をまとった女性が「ちょっと待ってて」と返した。
「いつものおばあさんは?」
「…野次馬で疲れちゃって」
「野次馬?」
キョトンと目を丸くすると、彼女は怪訝そうに「アタシの事、知らない訳じゃないでしょ?」とため息をつきながら答える。
それに桜木は首を振り、そして暫く考えてから口を開いた。
「……ごめん、俺、テレビとか観てない」
「へえ……めずらし」
「一人暮らしだから、あんまりつけようと思わなくて。
地元のニュースならたまにみるけど」
豆腐と油揚げの入った袋を受け取って、お金を出す。
「名前は?」と聞くと、「久慈川りせ」と返ってきた。
「あなたは……おばあちゃんの言ってた、”ユキちゃん”?」
「桜木ユキ。好きに呼んでいいよ」
桜木がそう言うと、りせは少し瞬きしてから、「そう」と笑った。
すると桜木が「あ、その顔」と目を向ける。
「へ?」
「その顔、本物のほうだ。……やっぱり、可愛いね」
遠くから、キツネの鳴き声が聞こえてくる。
りせは「え……」と呟くように口を開き、そして彼を凝視した。
「俺、アイドルとしての君のこと知らないから、もしかしたら苦しく感じるかもしれないけど……
でも今の、まっさらな表情も、俺は好きだよ?」
「……じゃあ、さっきまでのアタシ、どんな顔だった?」
「すごい疲れてた。休むっていうより、言葉を吐き出しちゃった方がいいと思うくらい」
いつの間にか入ってきたキツネを抱き上げて、桜木は淡々と答える。
「テレビ向けの性格を作りすぎて、多分どっちがどっちだかはっきりさせたくなってるんだと思うけど……
でも、俺はどっちの君も好きだなあって」
それだけ。
桜木はそう言うと、彼女の頭にぽんと手を置いてから踵を返す。
「久慈川さん、じゃあまたね」という声は、彼女の耳に入らず溶けていった。