熱気立つ銭湯
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―男の癖に。
……うるせぇ。
―裁縫好きなんて、気持ち悪い。
……うるせぇ。
『もうやめようよ嘘つくの…人を騙すのも自分を騙すのも嫌いだろ?
やりたいことやりたいって言って何が悪い?』
「うるせぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!」
「開けるよー…てい」
バンと背後の扉が開く音と、気の抜けるような、それでいて聞き覚えのある声に完二は振り向く。
白い髪に、”赤い”瞳。けれどその表情と声は紛れも無い、あの人のもの。
「……桜木、サン?」
茫然とたずねれば彼は頷いて、スタスタと自分に近づいてきた。
「んー…やっぱり大きいよな、完二君。少し屈んでくれない?」
「え、う、うッス……」
言われた通り少し屈めば、ユキはその身体を抱きしめて頭を撫でる。
「不器用だけど、手先は器用で、優しい……俺は好きだよ、君の事」
「え、な、な……!?」
『本当?君は、僕のカレになってくれるの?』
シャドウがそう水を差せば、ユキはパッと手を離して、今度はシャドウの方に近づいた。
「かれ?……は、わからないけど。俺から、友達になってほしいなって」
そう言いながら、シャドウにだけ聞こえる声で小さく何か言葉を発する。
するとシャドウは途端に泣き出しそうな顔になり、ユキの肩を掴んだ。
『……なんで、さいほうとかが好きだと、みんな男のくせにって言うの?』
『俺、男らしくないの?』
「ううん」
ユキは背中に手を回し、ぽんぽんと叩く。
「君は、ちゃんと一人一人に向き合おうとしてる。困ってる人がいたら、助けようとする。
それは、”男らしくない”って言ってきた人達よりも、充分男らしくてカッコいいよ」
『本当……?』
「うん。だから……完二君は、完二君のままでいい。
俺が受け入れる。誰にも、否定なんてさせない」
そう言うとくるりと振り返り、完二に目を合わせた。
「……認めなよ、完二君。幼い頃の自分を、ずっと否定してたこと」
「え……」
「こんな事、記憶のない人間から言われても何だってなるかもしれないけど……
君の中にこの子はずっといた。ずっと誰にも、君にも認められずに、独りだったんだ」
気が付けば、シャドウは小さな少年の姿に変わっていた。
少年はポロポロと涙を流し、完二に向かって泣き出す。
『さいほうとか、絵をかくことがとくいなんだ!
でも皆俺を変な目で見て、……もう嫌だ!!』
「ユキサン!危ないクマ!」
「っ、うわっ……」
シャドウが叫んだと同時。それは大型シャドウへと姿を変え、ユキの身体を掴んで持ち上げた。
シャドウは空いている方の手の指で、彼の背や脇をなぞる。
「ひゃんっ」
上擦った声。
彼は肩を揺らし、くすぐったさから身を捩らせなんとか抜けようとした。
しかし今ので思ったより力を入れられないのか、シャドウの指をただ受け入れる。
「…っ……ひぅ、……なんか、ぞわぞわする…っ」
『ココ弱いの?可愛い……!』
「…くすぐ、った…っ…ひぁッ」
甘い声が、身を捩らせた彼の口から溢れる。瞬間、千枝達がシャドウ向かって一直線に突き進みその足元を崩した。
「「ユキさんに、触るなーーーー!!!!」」
シャドウはその身体をぐらりと揺らし、ユキから手を離す。それにハッターが突進し、彼が地面に身体を打ちつける前に抱え込んだ。
「……わっ、…ビックリした……ハッター、ありがと」
そのままゆっくりと下ろされ、ユキはハッターに礼を言った。
そしてまた完二本人に向き直り、「完二君」と声をかける。
「さっきのシャドウが言っていたのが、君の声だよ」
「………桜木、さ……」
「俺ができるのは、この気持ちに一時的に蓋をしてしまう事だけ。根本的な解決は、本人しかできない。
……それでも、認めたくない?」
―それはきっと、君の望んだ事じゃないだろ?
ユキの言葉に、完二は目を見開いて、そして「そう、っスね」と呟いた。
「……あの、桜木サン」
「何?」
「………さっき言ってた、その……友達に、って……本当、っスか?」
「うん。というか、俺は結構完二君の事好きだよ?」
透明で、けれど真っ白で、どこまでも染み渡る声。
「一緒に裁縫してみたいし、編みぐるみとかも教えて欲しいんだ。
だから早く此処から一緒に出たいんだけど……ダメかな?」
そう首を傾げたユキに、完二は照れくさそうに笑って、「ダメじゃないっスよ」と答える。
「こんな俺でいいなら、いくらだって」
ぶわり。
完二の目の前に、カードが形成されていく。
ユキはそれを見て、小さく呟いた。
「…『マハブフダイン』」
するとそれまで悠達がなんとか止めていたシャドウがあっという間に消滅し、「アイス、完二君の奢りね」と彼は目を細める。
「ウッス!」
「ところで完二君、後でボコりに行っていいかな?」
「はあ!?」
悠が彼等に近づいてきては笑顔でそう尋ね、完二は眉間に皺を寄せた。
「……完二君悪くないでしょ。悪いことしたのはシャドウだし」
「でも……ユキさんの純潔が…」
「じゅっ……!?」
「え、完二君って吸血鬼だったの?俺の血そんな美味くないと思うけど…」
それは純血だ。
「ユキさん、そうじゃないです。収拾つかなくなるんで取り敢えず完二を殴らせてください」
「それはダメっつってるだろ、コラ」
平行線を辿る会話。
悠がどうにか理由を付けて完二を殴ろうとし、それをユキが訳も分からず止めるの繰り返し。
結局クマが「両成敗クマ!」と二人の頭を(ユキに対してはかなり軽く)叩いて、その場はお開きとなった。
……うるせぇ。
―裁縫好きなんて、気持ち悪い。
……うるせぇ。
『もうやめようよ嘘つくの…人を騙すのも自分を騙すのも嫌いだろ?
やりたいことやりたいって言って何が悪い?』
「うるせぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!」
「開けるよー…てい」
バンと背後の扉が開く音と、気の抜けるような、それでいて聞き覚えのある声に完二は振り向く。
白い髪に、”赤い”瞳。けれどその表情と声は紛れも無い、あの人のもの。
「……桜木、サン?」
茫然とたずねれば彼は頷いて、スタスタと自分に近づいてきた。
「んー…やっぱり大きいよな、完二君。少し屈んでくれない?」
「え、う、うッス……」
言われた通り少し屈めば、ユキはその身体を抱きしめて頭を撫でる。
「不器用だけど、手先は器用で、優しい……俺は好きだよ、君の事」
「え、な、な……!?」
『本当?君は、僕のカレになってくれるの?』
シャドウがそう水を差せば、ユキはパッと手を離して、今度はシャドウの方に近づいた。
「かれ?……は、わからないけど。俺から、友達になってほしいなって」
そう言いながら、シャドウにだけ聞こえる声で小さく何か言葉を発する。
するとシャドウは途端に泣き出しそうな顔になり、ユキの肩を掴んだ。
『……なんで、さいほうとかが好きだと、みんな男のくせにって言うの?』
『俺、男らしくないの?』
「ううん」
ユキは背中に手を回し、ぽんぽんと叩く。
「君は、ちゃんと一人一人に向き合おうとしてる。困ってる人がいたら、助けようとする。
それは、”男らしくない”って言ってきた人達よりも、充分男らしくてカッコいいよ」
『本当……?』
「うん。だから……完二君は、完二君のままでいい。
俺が受け入れる。誰にも、否定なんてさせない」
そう言うとくるりと振り返り、完二に目を合わせた。
「……認めなよ、完二君。幼い頃の自分を、ずっと否定してたこと」
「え……」
「こんな事、記憶のない人間から言われても何だってなるかもしれないけど……
君の中にこの子はずっといた。ずっと誰にも、君にも認められずに、独りだったんだ」
気が付けば、シャドウは小さな少年の姿に変わっていた。
少年はポロポロと涙を流し、完二に向かって泣き出す。
『さいほうとか、絵をかくことがとくいなんだ!
でも皆俺を変な目で見て、……もう嫌だ!!』
「ユキサン!危ないクマ!」
「っ、うわっ……」
シャドウが叫んだと同時。それは大型シャドウへと姿を変え、ユキの身体を掴んで持ち上げた。
シャドウは空いている方の手の指で、彼の背や脇をなぞる。
「ひゃんっ」
上擦った声。
彼は肩を揺らし、くすぐったさから身を捩らせなんとか抜けようとした。
しかし今ので思ったより力を入れられないのか、シャドウの指をただ受け入れる。
「…っ……ひぅ、……なんか、ぞわぞわする…っ」
『ココ弱いの?可愛い……!』
「…くすぐ、った…っ…ひぁッ」
甘い声が、身を捩らせた彼の口から溢れる。瞬間、千枝達がシャドウ向かって一直線に突き進みその足元を崩した。
「「ユキさんに、触るなーーーー!!!!」」
シャドウはその身体をぐらりと揺らし、ユキから手を離す。それにハッターが突進し、彼が地面に身体を打ちつける前に抱え込んだ。
「……わっ、…ビックリした……ハッター、ありがと」
そのままゆっくりと下ろされ、ユキはハッターに礼を言った。
そしてまた完二本人に向き直り、「完二君」と声をかける。
「さっきのシャドウが言っていたのが、君の声だよ」
「………桜木、さ……」
「俺ができるのは、この気持ちに一時的に蓋をしてしまう事だけ。根本的な解決は、本人しかできない。
……それでも、認めたくない?」
―それはきっと、君の望んだ事じゃないだろ?
ユキの言葉に、完二は目を見開いて、そして「そう、っスね」と呟いた。
「……あの、桜木サン」
「何?」
「………さっき言ってた、その……友達に、って……本当、っスか?」
「うん。というか、俺は結構完二君の事好きだよ?」
透明で、けれど真っ白で、どこまでも染み渡る声。
「一緒に裁縫してみたいし、編みぐるみとかも教えて欲しいんだ。
だから早く此処から一緒に出たいんだけど……ダメかな?」
そう首を傾げたユキに、完二は照れくさそうに笑って、「ダメじゃないっスよ」と答える。
「こんな俺でいいなら、いくらだって」
ぶわり。
完二の目の前に、カードが形成されていく。
ユキはそれを見て、小さく呟いた。
「…『マハブフダイン』」
するとそれまで悠達がなんとか止めていたシャドウがあっという間に消滅し、「アイス、完二君の奢りね」と彼は目を細める。
「ウッス!」
「ところで完二君、後でボコりに行っていいかな?」
「はあ!?」
悠が彼等に近づいてきては笑顔でそう尋ね、完二は眉間に皺を寄せた。
「……完二君悪くないでしょ。悪いことしたのはシャドウだし」
「でも……ユキさんの純潔が…」
「じゅっ……!?」
「え、完二君って吸血鬼だったの?俺の血そんな美味くないと思うけど…」
それは純血だ。
「ユキさん、そうじゃないです。収拾つかなくなるんで取り敢えず完二を殴らせてください」
「それはダメっつってるだろ、コラ」
平行線を辿る会話。
悠がどうにか理由を付けて完二を殴ろうとし、それをユキが訳も分からず止めるの繰り返し。
結局クマが「両成敗クマ!」と二人の頭を(ユキに対してはかなり軽く)叩いて、その場はお開きとなった。