熱気立つ銭湯
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「完二君。この前の巾着のことで相談なんだけど……」
巽屋の前。
学校から戻って来た俺を待っていたのは、数種類の布を見比べ立っている”あの人”だった。
「……な、なんスか?」
少し怖気づきながら訊ねると、「巾着に何か模様付けた方がいいかなって思って。どれがいいと思う?」とやはり淡々と布を見せてくる。
「……オレは、こっちの方が……」
「こっち?」
俺が指差したのは、淡い桃色の、桜が舞った模様の布。
その人は真っ赤な瞳でそれを見、ふむと頷いた。
「じゃあ、これにしようかな。この色、巾着の緑色と合ってるし。
お会計、お願いできる?」
「は、はあ……」
俺は呆気に取られつつ、レジを動かし会計を済ませる。
するとその人はすぐ踵を返そうとし、思わずその服を掴んだ。
「あ、あの!アンタの、名前……」
「ああ、言ってなかったっけ」
パチクリと、瞬きして。
その人は俺に向き直り、そして手を伸ばす。
「桜木ユキ。改めてよろしくね、完二君」
「……桜木、サン」
おそるおそる手を握りそう呟くように言えば、桜木さんはこくりと頷いて目を細めた。
(……ほっせえ、それに、白い手……)
ひんやりとしたそれに驚いていると、彼は「あったかいね」と呟く。
「へ?」
「完二君の手。俺、体温低いから」
くい、と手を握ったまま自分の頬に当て、そこからじわりと熱が奪われた。
「……冷たい、っス。つか、生きてるんスか?」
「それは酷い言い草だな。生きてるよ、多分ね」
「多分、って……」
「記憶無いから、そこらへんがよく分かってないんだ。俺が実際失踪していた期間もあるらしいし。
もしかしたら、とっくに死んでて幽霊なのかもしれないよね」
淡々、淡々。
冗談なのか分からない言葉を吐くと、桜木さんは手を離して「ま、そんな事考えても仕方ないけど」と肩をすくめる。
「ごめんな、変な事言って。忘れていいから」
「う、ウッス……」
「じゃあまたね、完二君」
ひらひらと手を振って、今度こそその人は踵を返して去って行った。
巽屋の前。
学校から戻って来た俺を待っていたのは、数種類の布を見比べ立っている”あの人”だった。
「……な、なんスか?」
少し怖気づきながら訊ねると、「巾着に何か模様付けた方がいいかなって思って。どれがいいと思う?」とやはり淡々と布を見せてくる。
「……オレは、こっちの方が……」
「こっち?」
俺が指差したのは、淡い桃色の、桜が舞った模様の布。
その人は真っ赤な瞳でそれを見、ふむと頷いた。
「じゃあ、これにしようかな。この色、巾着の緑色と合ってるし。
お会計、お願いできる?」
「は、はあ……」
俺は呆気に取られつつ、レジを動かし会計を済ませる。
するとその人はすぐ踵を返そうとし、思わずその服を掴んだ。
「あ、あの!アンタの、名前……」
「ああ、言ってなかったっけ」
パチクリと、瞬きして。
その人は俺に向き直り、そして手を伸ばす。
「桜木ユキ。改めてよろしくね、完二君」
「……桜木、サン」
おそるおそる手を握りそう呟くように言えば、桜木さんはこくりと頷いて目を細めた。
(……ほっせえ、それに、白い手……)
ひんやりとしたそれに驚いていると、彼は「あったかいね」と呟く。
「へ?」
「完二君の手。俺、体温低いから」
くい、と手を握ったまま自分の頬に当て、そこからじわりと熱が奪われた。
「……冷たい、っス。つか、生きてるんスか?」
「それは酷い言い草だな。生きてるよ、多分ね」
「多分、って……」
「記憶無いから、そこらへんがよく分かってないんだ。俺が実際失踪していた期間もあるらしいし。
もしかしたら、とっくに死んでて幽霊なのかもしれないよね」
淡々、淡々。
冗談なのか分からない言葉を吐くと、桜木さんは手を離して「ま、そんな事考えても仕方ないけど」と肩をすくめる。
「ごめんな、変な事言って。忘れていいから」
「う、ウッス……」
「じゃあまたね、完二君」
ひらひらと手を振って、今度こそその人は踵を返して去って行った。