マヨナカテレビ内。
「……というわけで、今度から俺たちのサポートをしてくれるキツネです」
「コンッ」
「わっ……」
鳴上が説明するのが早いか、キツネは真っ先に桜木の胸元に飛び込み、彼は目を丸くしながらもそれをしっかりと受け止めた。
キツネは飛び込んだ後、ぺろぺろと彼の顔を舐める。
「ん、舐めるな」
「あれ、知り合いなんですか？」
「うん。たまにお稲荷さん作ってあげてるくらいだけど」
桜木は肩に移動したキツネを撫でながら「狐さん、回復出来るの？」と訊ねた。
するとキツネは一声鳴き、彼はそれを肯定と受け止めた。
「そっか。じゃあ、よろしくね。」
「あ、でも一応、回復にはお金が必要で……」
「金ならある。問題はない。……けど、無意味な暴走をしたら回復自体使う気は無いから」
そうジロリと睨まれた花村と里中はウッと息をつまらせた。
それに天城が首を傾げると、鳴上がこっそり教える。
「二人とも結構後先考えず突っ走っちゃうから、ユキさんの双剣がギリギリのところで止めにかかるんだ」
「そうなの？でも双剣でどうやって止めるんだろ……」
その疑問に、鳴上は少し間を置いて口を開いた。
「二人の顔を掠める程度を狙ってシャドウごと壁に突き刺す」
「うわあ……」
「さ、最近は減ったんだって！流石に！」
「そ、そうだよ！」
哀れんだような目を向ける天城に、里中と花村は反論する。
しかし桜木の「前回は３回あったけどな」という返しに、ぐうの音も出ず黙りこくった。
「で、でもそれ、もし本当に刺さったら大変ですよね？」
そう天城が訊ねると、桜木はキツネを置きながら「そんなヘマはしない」とさらりと言い放つ。
「まだシャドウは弱い。動きが鈍間だしどこが弱点かもわかる。それに……
　君たちもまだ弱いから、動きが予測しやすい。これで刺さったら驚きだ」
「……ですよね…」
「ユキサンはヨースケ達と比べ物にならないくらい強いクマ！
　少なくとも、戦闘でかろうじて右に出られるのはセンセーだけクマよ！」
「…俺でも、まだキツイかな……」
かろうじて。そう頭に付いてしまうくらいだ。
自分達が使っているのより何倍も重い武器を平然と操り、ペルソナの出番も少なく倒してしまう。
「ユキさん、記憶ないって言ってましたけど、もしかして元からこういう事したことあるんじゃ……？」
「その可能性はあるだろうな」
桜木はさらりと答え、「それで、今回マヨナカテレビに映ってたの、完二君、だっけ？」と確認を取る。
「は、はい！アタシら、あんまりどーゆーヤツなのか知らないんですけど…」
「それは別に期待してない。学年が違うなら、それだけ機会も少ないだろ」
里中の返事に肩を竦め、「俺、用事あるからもう行くな」と鳴上に告げた。
「わかりました。俺らも、後もう少し探索したら帰ります」
「ん」
桜木は手を軽くあげて、自分の家に繋がるテレビへと姿を消す。
それにキツネが呼応するように鳴き、そして鳴上の足元に擦り寄った。