ジュネス、フードコート。
「ゴールデンウィークだってのにこんな店じゃ、菜々子ちゃん可哀想だろ」
花村がそう言うも、菜々子は「ジュネス、だいすきだよ」と笑ってみせた。
「菜々子ちゃん……！」
「そう言ってもらえると有り難いな」
フッと花村の方に影が差し、そんな涼しげな声が聞こえてくる。
彼は声の方に振り向き、そしてニッと笑った。
「あ、ユキさん！ちょうど休憩っすか？」
「店長に無理矢理取らされたからね。……こんにちは」
白い髪、青い目。
そんな目立つ容貌を持った人なんて、この稲羽に一人しかいない。
彼は目を細めてから、鳴上達に軽く頭を下げた。
「ユキおにいちゃん、ジュネスでおしごとしてるの？」
「ん。今日は予定無かったから一日中入ってるだけだけどね。
　普段は午前中しか入ってないから」
「ユキさんすっげーの！今までケッコーサボリ気味だった人とかも、ちゃんと働くようになったんだぜ？」
「……俺は、ただバイトシフトについて色々愚痴を話されただけだけど」
花村の言葉を一部否定して、桜木は肩を竦める。
「シフトとか、仕事内容とか、そーゆーので改善してほしいとか、これはそのままにしてほしいとかあるだろ？
　それ聞いて、簡単に意見出してから店長に報告してるだけ。あとは、個人が頑張ってるから」
「へー……」
里中がそういうモンなんですか？と尋ねると頷き、ジュース缶と食べ物がテーブルに置かれた。
「？ユキさん、これって……」
「飲み物とそれ、俺の奢りだから。ごゆっくり」
特に休憩を満喫しようとか、もっと話したいとか、そう思ってはいなかったようで。
時間も早々に持ち場へと戻ってしまった桜木に、天城は目を丸くしてから笑う。
「……なんかユキさんって、本当に普段からあんな感じなんだね」
「あんなかんじ？」
「優しいけど、あまり人に寄りつかないっていうか……そう、野良猫みたいな！」
「野良猫って……まあ、そんなカンジするけどさ」
里中が苦笑すれば花村や鳴上も頷き、「ま、折角だし食おうぜ」とたこ焼きに手をつけ始めた。