今晩の寝る場所の話を出すと、「寝るのは廊下でいい」と彼は口を開いた。
「いや、でもそれは…」
「慣れてるから。そっちのほうがいい」
「……悠。お前の部屋で寝させてやれ」
遼太郎がため息をつきながら言う。
腕を掴まれ、トントンと階段を登ると、突き当たりの部屋のドアが開かれた。
「……取り敢えず、一緒に寝ますか？」
「………」
ユキは肩を竦め、もう疲れてしまっている悠の顔を見ると、「先に寝たら」と口を開く。
すると悠は手を引いて、一緒にベッドに身を落とした。
「一緒に寝ましょう？」
「……近い」
「え？」
ぼそりと呟かれた声に、首を傾げる。「気配が近い」と再度言うと、ユキはベッドからするりと降りた。
「落ち着かない。やっぱり、床で寝る」
ドアの近く、ベッドから離れた位置で、彼は床に蹲る。
「ちょっ……」
「そもそも、ベッド自体落ち着かない。固い床の方が落ち着く。だから、おやすみ」
彼はそう言うと、静かに目を閉じた。
悠は呆然とそれを見、しかし何かを考えようとする前に眠気が勝ったのか、布団をかけず眠りについた。