自分の影
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「ここで、早紀さんは倒れてた」
桜木は淡々と説明しながら、中を調べていく。
「彼女から生み出されたシャドウも、彼女自身も、消滅した。だから、ここに残っているのはただの投影の残滓だけだろうな……」
「……生み、出された?」
花村がかろうじて、そう尋ねた。
「シャドウって、人から生み出されるモンなんすか……?」
「俺はそう考えている。もう一人の自分、自分の見せたくない影。
shadowという名称からの推測だけどね」
『その通り!』
不意に、誰のものでもない声が聞こえてきて、桜木は身構える。
鳴上も花村もクマも、顔を強張らせてその声の主を見た。
『いつまで媚びへつらっていいヤツ面して生きてんだよ、俺』
―それは、花村そっくりの、シャドウだった。
花村は茫然と、そのシャドウを見つめる。
「……何、言ってんだよ……?」
『商店街もジュネスも、今の退屈な生活が……田舎暮らしがウゼーんだろ!?
ココに来たのも単にワクワクしてただけ!大好きな先輩が死んだからなんてのはただの口実さ!』
「違う!お前なんなんだ!誰なんだよ!?」
『お前は俺だろ?いいぜぇ、もっと、もっと言いな!』
「ふざけんな!お前は――」
「鳴上君、クマ。そいつの口塞いで。煩い」
耳を手で覆いながら、桜木は眉間に皺を寄せ言った。
鳴上とクマはほぼ反射的に、陽介の口を押さえに動く。
「あ、舌噛まないようにしてよ。死ぬから」
「はい!」
「分かったクマ!」
「んー!んー!!」
「黙れ」
声だけが威圧的に、陽介を押さえ込む。
彼は肩を震わせ、それっきり黙った。
「さて……アンタが、この人のシャドウなんだな?」
『大正解!さっすが、目の前で小西先輩を見殺しにしただけはあるなあ?』
シャドウの言葉に桜木はピクリと肩を揺らすも、特に反論せずに「それから?」と促す。
『アンタみてーな、なにもかも飄々としてるヤツ、一番嫌いなんだよ!
人殺しの癖にさあ!』
「そうかもな」
せせら笑う陽介の”影”に、彼はただ肯定する。
そして、今まで一番疑問に思っていた事を口から出した。
「そう思ってもらっても構わないが……シャドウ。アンタ、本当にそれだけの為に出たのか?」
『……ハ?』
「認めてもらえなくて、辛くて、苦しくて、もういっそ自分にさえ嫌われて否定されたいって……そういう諦めじゃないのか?」
そう言われ、ハッとなったシャドウは俯く。
それを肯定と取ったのか、彼は目を細めて息を吐いた。
「……悲しいな。それは、とても。……自分じゃ、どうにもできないもんな。
でも、少し過剰すぎだ。落ち着け」
桜木は陽介の”影”に近づいて、優しく抱きしめる。
鳴上も陽介もそれに驚き、言葉を失った。
「大丈夫、大丈夫だよ……お前は、お前の思いは、消されたりなんかしない。
……誰にも、否定させない」
小さな子供に、言い聞かせるように。
大丈夫、大丈夫と何度も言うと、”影”はほんの少しだけ、泣き出しそうな顔になった。
『、んで、アンタが、どうせ、俺は、』
「どうせとか言わないでよ。
君の事が一から知りたい。例えどれだけ醜い感情でも、それを俺は受け入れるから」
桜木は手を伸ばし、”影”の頭を少し背伸びをして撫でる。
そしてチラリと花村を見て、小さく息を吐いた。
「でも、本体は認めず、か……いいよ、暴走して」
『!?』
「君が本体に認められるまで……その声を叫んで。俺が、倒してあげる」
認められるまで、絶対に。
桜木のその言葉に”影”は目を見開き、そして笑った。
『ハハ……おかしいよ、アンタ』
「自覚はしてるよ。でも、はっきりと分離してる状態だったら、まだ”助けられる”し」
形を変えるシャドウに、桜木は双剣を構える。
鳴上はそれを見て、またドクンと、何かが動くのを感じた。
―あの人のように、俺も、助ける力を……
桜木は淡々と説明しながら、中を調べていく。
「彼女から生み出されたシャドウも、彼女自身も、消滅した。だから、ここに残っているのはただの投影の残滓だけだろうな……」
「……生み、出された?」
花村がかろうじて、そう尋ねた。
「シャドウって、人から生み出されるモンなんすか……?」
「俺はそう考えている。もう一人の自分、自分の見せたくない影。
shadowという名称からの推測だけどね」
『その通り!』
不意に、誰のものでもない声が聞こえてきて、桜木は身構える。
鳴上も花村もクマも、顔を強張らせてその声の主を見た。
『いつまで媚びへつらっていいヤツ面して生きてんだよ、俺』
―それは、花村そっくりの、シャドウだった。
花村は茫然と、そのシャドウを見つめる。
「……何、言ってんだよ……?」
『商店街もジュネスも、今の退屈な生活が……田舎暮らしがウゼーんだろ!?
ココに来たのも単にワクワクしてただけ!大好きな先輩が死んだからなんてのはただの口実さ!』
「違う!お前なんなんだ!誰なんだよ!?」
『お前は俺だろ?いいぜぇ、もっと、もっと言いな!』
「ふざけんな!お前は――」
「鳴上君、クマ。そいつの口塞いで。煩い」
耳を手で覆いながら、桜木は眉間に皺を寄せ言った。
鳴上とクマはほぼ反射的に、陽介の口を押さえに動く。
「あ、舌噛まないようにしてよ。死ぬから」
「はい!」
「分かったクマ!」
「んー!んー!!」
「黙れ」
声だけが威圧的に、陽介を押さえ込む。
彼は肩を震わせ、それっきり黙った。
「さて……アンタが、この人のシャドウなんだな?」
『大正解!さっすが、目の前で小西先輩を見殺しにしただけはあるなあ?』
シャドウの言葉に桜木はピクリと肩を揺らすも、特に反論せずに「それから?」と促す。
『アンタみてーな、なにもかも飄々としてるヤツ、一番嫌いなんだよ!
人殺しの癖にさあ!』
「そうかもな」
せせら笑う陽介の”影”に、彼はただ肯定する。
そして、今まで一番疑問に思っていた事を口から出した。
「そう思ってもらっても構わないが……シャドウ。アンタ、本当にそれだけの為に出たのか?」
『……ハ?』
「認めてもらえなくて、辛くて、苦しくて、もういっそ自分にさえ嫌われて否定されたいって……そういう諦めじゃないのか?」
そう言われ、ハッとなったシャドウは俯く。
それを肯定と取ったのか、彼は目を細めて息を吐いた。
「……悲しいな。それは、とても。……自分じゃ、どうにもできないもんな。
でも、少し過剰すぎだ。落ち着け」
桜木は陽介の”影”に近づいて、優しく抱きしめる。
鳴上も陽介もそれに驚き、言葉を失った。
「大丈夫、大丈夫だよ……お前は、お前の思いは、消されたりなんかしない。
……誰にも、否定させない」
小さな子供に、言い聞かせるように。
大丈夫、大丈夫と何度も言うと、”影”はほんの少しだけ、泣き出しそうな顔になった。
『、んで、アンタが、どうせ、俺は、』
「どうせとか言わないでよ。
君の事が一から知りたい。例えどれだけ醜い感情でも、それを俺は受け入れるから」
桜木は手を伸ばし、”影”の頭を少し背伸びをして撫でる。
そしてチラリと花村を見て、小さく息を吐いた。
「でも、本体は認めず、か……いいよ、暴走して」
『!?』
「君が本体に認められるまで……その声を叫んで。俺が、倒してあげる」
認められるまで、絶対に。
桜木のその言葉に”影”は目を見開き、そして笑った。
『ハハ……おかしいよ、アンタ』
「自覚はしてるよ。でも、はっきりと分離してる状態だったら、まだ”助けられる”し」
形を変えるシャドウに、桜木は双剣を構える。
鳴上はそれを見て、またドクンと、何かが動くのを感じた。
―あの人のように、俺も、助ける力を……