悪い夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜の12時。
クマに呼び出されたユキは、『誰かがいるかもしれない』という情報を元に、人探しをしていた。
数日の散策で何処に何があるのかは大体分かっていたので、心当たりをただ駆け抜ける。
すると誰かの悲鳴が聞こえて、その足を止めた。
柔らかくウエーブがかった髪。見たことのある、学校の制服。
『私は私じゃない!!!』
「、早紀、さ……?」
そう声を掛けようとして、その彼女が”2人いる”ことに気づいた。
片方は嬉々とした表情でもう片方を見下ろし、もう片方は、バタリとその場に倒れ伏していた。
倒れているほうに近づきしゃがみこむと、彼女は顔を上げ、「桜木、君?」と言って弱弱しく笑った。
「あの人は誰だ?君は何故、ここにいる?」
「…わかんない、でも、きっと……」
早紀は憔悴しきっていて、何かボソボソと言った言葉も上手く聞き取れない。
すると彼女もそれが分かったのか、グッと手に力をこめて言葉を紡いだ。
「…花ちゃんって、子に会ったら、伝えてくれる?……――――」
言われた言葉にユキは頷き、早紀はまた「ごめん」と笑って今度こそ倒れる。
するとサラサラと音を立て、彼女は消滅した。
残ったのは、もう一人の彼女とユキのみ。
「…君は誰?」
『アタシ?アタシはあの子。あの子はアタシ』
彼女はそう言って微笑み、それに「そう」と返した。
「じゃあ、君がクマ君のいう”影”なわけか……ねえ、早紀さんの、シャドウさん」
『?なあに?』
「君の好きな花、教えてもらっていいかな?君なら、分かるんだろ?」
ユキが訊ねると”シャドウ”は目を見開き、自嘲気味に笑った。
『何?自分の不甲斐なさを慰めたいの?』
「それもあるかもしれない。それと……普通に、彼女の嫌いな花を手向けたくないなって」
『……百合よ、白い百合。それが一番好きだった』
「そう」
彼女の返しにユキは目を細め、そして彼女に対して腕を広げた。
「シャドウさん。俺は別に、アンタを否定しないよ。だから、……おいで?」
もうすぐ、君は消えるんだろ?
それまでは、一緒にいるから。
それに反応した”シャドウ”はゆっくり彼に近づき、そして彼の腕の中におさまる。
『……アンタ、変なヤツだよね。殺されたりとか、全然考えてなさそう』
「自覚はあるよ。でも、認められないまま消えていくのは、辛いと思うし」
彼は”シャドウ”の頭を優しく撫で、そしてボソリと呟くように言った。
「……助けられなくて、ごめん、許してあげられなくて、ごめんな…」
『………ありがとう』
”シャドウ”が笑って、ユキの腕の中で徐々に白くなっていく。
『多分、アタシ、アンタのこと……――』
呟かれた最後の言葉は聞こえずに、サラサラと音を立てシャドウも消滅した。
一人残ったユキは、さてと口元に指を当てる。
「……刑死者、殺された自分自身……”シャドウ”はもう一人の自分……」
ただ単語を呟き、それらを細く不確定な糸で結んでいく。
「誰かに入れられた?時刻は?何故入れた?可能性の高い人間は?」
もしこういう人が犯人なら。もしこういう状況なら。何通りも何通りも考えて今の状況から潰せるだけ潰し、そして残された答えに眉をしかめる。
「…………最悪だ」
その呟きは、黄色い空間にとけて消えていった。
―その日のマヨナカテレビには、苦しんでいるような小西早紀の姿と、それを茫然と見ている白い髪の青年の姿が映った。
クマに呼び出されたユキは、『誰かがいるかもしれない』という情報を元に、人探しをしていた。
数日の散策で何処に何があるのかは大体分かっていたので、心当たりをただ駆け抜ける。
すると誰かの悲鳴が聞こえて、その足を止めた。
柔らかくウエーブがかった髪。見たことのある、学校の制服。
『私は私じゃない!!!』
「、早紀、さ……?」
そう声を掛けようとして、その彼女が”2人いる”ことに気づいた。
片方は嬉々とした表情でもう片方を見下ろし、もう片方は、バタリとその場に倒れ伏していた。
倒れているほうに近づきしゃがみこむと、彼女は顔を上げ、「桜木、君?」と言って弱弱しく笑った。
「あの人は誰だ?君は何故、ここにいる?」
「…わかんない、でも、きっと……」
早紀は憔悴しきっていて、何かボソボソと言った言葉も上手く聞き取れない。
すると彼女もそれが分かったのか、グッと手に力をこめて言葉を紡いだ。
「…花ちゃんって、子に会ったら、伝えてくれる?……――――」
言われた言葉にユキは頷き、早紀はまた「ごめん」と笑って今度こそ倒れる。
するとサラサラと音を立て、彼女は消滅した。
残ったのは、もう一人の彼女とユキのみ。
「…君は誰?」
『アタシ?アタシはあの子。あの子はアタシ』
彼女はそう言って微笑み、それに「そう」と返した。
「じゃあ、君がクマ君のいう”影”なわけか……ねえ、早紀さんの、シャドウさん」
『?なあに?』
「君の好きな花、教えてもらっていいかな?君なら、分かるんだろ?」
ユキが訊ねると”シャドウ”は目を見開き、自嘲気味に笑った。
『何?自分の不甲斐なさを慰めたいの?』
「それもあるかもしれない。それと……普通に、彼女の嫌いな花を手向けたくないなって」
『……百合よ、白い百合。それが一番好きだった』
「そう」
彼女の返しにユキは目を細め、そして彼女に対して腕を広げた。
「シャドウさん。俺は別に、アンタを否定しないよ。だから、……おいで?」
もうすぐ、君は消えるんだろ?
それまでは、一緒にいるから。
それに反応した”シャドウ”はゆっくり彼に近づき、そして彼の腕の中におさまる。
『……アンタ、変なヤツだよね。殺されたりとか、全然考えてなさそう』
「自覚はあるよ。でも、認められないまま消えていくのは、辛いと思うし」
彼は”シャドウ”の頭を優しく撫で、そしてボソリと呟くように言った。
「……助けられなくて、ごめん、許してあげられなくて、ごめんな…」
『………ありがとう』
”シャドウ”が笑って、ユキの腕の中で徐々に白くなっていく。
『多分、アタシ、アンタのこと……――』
呟かれた最後の言葉は聞こえずに、サラサラと音を立てシャドウも消滅した。
一人残ったユキは、さてと口元に指を当てる。
「……刑死者、殺された自分自身……”シャドウ”はもう一人の自分……」
ただ単語を呟き、それらを細く不確定な糸で結んでいく。
「誰かに入れられた?時刻は?何故入れた?可能性の高い人間は?」
もしこういう人が犯人なら。もしこういう状況なら。何通りも何通りも考えて今の状況から潰せるだけ潰し、そして残された答えに眉をしかめる。
「…………最悪だ」
その呟きは、黄色い空間にとけて消えていった。
―その日のマヨナカテレビには、苦しんでいるような小西早紀の姿と、それを茫然と見ている白い髪の青年の姿が映った。