頼れる存在
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下に飛び降りた後、諸岡の怒声が遠くなったのを確認してから、ユキは靴を取りに戻った。
すると後方から足音が聞こえ、びくりと肩を震わせ後ろを向けば、初老の男性の姿があった。
「おや、見慣れない顔ですね」
「…こんにちは」
しまった。まだ誰かいたのか。
ユキは立ち止まり、その男性に挨拶をする。
「どうされたのですか?」
「……知り合いが弁当を忘れたので、届けに」
「そうでしたか。……今、時間はありますか?」
「?はい。もうバイトは終わったので」
何か用ですか。ユキがそう訊ねると、男性は微笑みながら口を開いた。
「少し、お茶でもどうでしょう?」
この学校の校長だと、男性は名乗った。
暖かい緑茶を少し喉に流すと、男性は十数枚の紙を彼の前に出す。
「これは、今年のセンターの問題と、この高校での入試問題です」
「……この問題、解けばいいんですか?」
「はい」
彼は鉛筆と消しゴムを借りて、何を迷うでもなく問題に手をつけ始めた。
彼自身、自分がどこまで知識があるのか分からなかったが、それでも問題をみてすぐ解法が出る辺り、そこそこに知識は残ってるのだろうと客観的に考えていた。
「…解けました」
そういってペンを置けば、流石にもう3時になっていた。
校長は笑顔でそれを受け取り、「ありがとうございます」と言った。
「さて、桜木君。この高校に通いたくはありませんか?」
「…確かに卒業単位は取りたいけど、でも俺、記憶ないし、多分、もう19だし…」
それは流石に無理だろうと肩を竦めると、校長はそれでも表情を変えずに提案する。
「では、こういうのはどうでしょう。他の生徒と同じく、定期考査は受けてもらいますし、教科書もお渡しします。定期考査の日のみ、登校してもらっても構いませんし、分からない事を先生方に聞きに来られても大丈夫です。ですがその代わり、学校の行事やイベントのお手伝いをしてくれませんか?」
「…お手伝い?」
「はい。先生方のボランティアとして前日の準備に出てさえもらえれば、出席したとみなします。」
「本当にいいんですか?それ」
そうなると、完全に優遇されてるじゃないか。
確かに、バイトをすでに入れてしまっている身としてはありがたいが、それはどうなのだろう。
その考えが読み取れたのか、校長は彼の解いた答案を見て頷いた。
「ええ。成績に問題はないようですし、家庭の事情などとなればある程度譲歩は可能ですからね。
それとも、何か不都合が?」
「…いや、それでいいです。何か、誰かと約束した気がするから」
「約束、ですか?」
「高校まで通って、卒業するって」
―誰との、約束だったのかは忘れたけれど。
そう言うと男性はそうですかと笑って、そして必要な書類などの話を始めた。
「できたら、戸籍のコピーと診断書なんかを貰えるといいんですが……」
「……少し、頼んでみます」
すると後方から足音が聞こえ、びくりと肩を震わせ後ろを向けば、初老の男性の姿があった。
「おや、見慣れない顔ですね」
「…こんにちは」
しまった。まだ誰かいたのか。
ユキは立ち止まり、その男性に挨拶をする。
「どうされたのですか?」
「……知り合いが弁当を忘れたので、届けに」
「そうでしたか。……今、時間はありますか?」
「?はい。もうバイトは終わったので」
何か用ですか。ユキがそう訊ねると、男性は微笑みながら口を開いた。
「少し、お茶でもどうでしょう?」
この学校の校長だと、男性は名乗った。
暖かい緑茶を少し喉に流すと、男性は十数枚の紙を彼の前に出す。
「これは、今年のセンターの問題と、この高校での入試問題です」
「……この問題、解けばいいんですか?」
「はい」
彼は鉛筆と消しゴムを借りて、何を迷うでもなく問題に手をつけ始めた。
彼自身、自分がどこまで知識があるのか分からなかったが、それでも問題をみてすぐ解法が出る辺り、そこそこに知識は残ってるのだろうと客観的に考えていた。
「…解けました」
そういってペンを置けば、流石にもう3時になっていた。
校長は笑顔でそれを受け取り、「ありがとうございます」と言った。
「さて、桜木君。この高校に通いたくはありませんか?」
「…確かに卒業単位は取りたいけど、でも俺、記憶ないし、多分、もう19だし…」
それは流石に無理だろうと肩を竦めると、校長はそれでも表情を変えずに提案する。
「では、こういうのはどうでしょう。他の生徒と同じく、定期考査は受けてもらいますし、教科書もお渡しします。定期考査の日のみ、登校してもらっても構いませんし、分からない事を先生方に聞きに来られても大丈夫です。ですがその代わり、学校の行事やイベントのお手伝いをしてくれませんか?」
「…お手伝い?」
「はい。先生方のボランティアとして前日の準備に出てさえもらえれば、出席したとみなします。」
「本当にいいんですか?それ」
そうなると、完全に優遇されてるじゃないか。
確かに、バイトをすでに入れてしまっている身としてはありがたいが、それはどうなのだろう。
その考えが読み取れたのか、校長は彼の解いた答案を見て頷いた。
「ええ。成績に問題はないようですし、家庭の事情などとなればある程度譲歩は可能ですからね。
それとも、何か不都合が?」
「…いや、それでいいです。何か、誰かと約束した気がするから」
「約束、ですか?」
「高校まで通って、卒業するって」
―誰との、約束だったのかは忘れたけれど。
そう言うと男性はそうですかと笑って、そして必要な書類などの話を始めた。
「できたら、戸籍のコピーと診断書なんかを貰えるといいんですが……」
「……少し、頼んでみます」