頼れる存在
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「鳴上君」
昼休み。
真っ黒なフードを目深に被った青年が、ずいと悠の目の前に包みを差し出す。
「えっと…ユキさん、ですよね?」
悠がそう訊ねると、彼はこくりと頷いた。
「これ、弁当の忘れ物」
「あ……すみません。忘れてたみたいで」
彼はそれを受け取り、そして周りをチラリと見る。
周囲は突如として教室に入ってきた謎の青年に視線を集中させていて、向かいでパンを頬張る陽介でさえ言葉を失っているようだった。
ユキはその視線に気づいたのか、ゆっくりと視線を移して首を傾げる。
「何?」
―無機質な青い瞳。
僅かに見えたそれに、陽介は息を呑む。
「い、いや…」
「こらー!そこのお前!なんだその服装は!たるんどる!」
廊下で巡回していた諸岡がユキの存在に気づき、眉間に皺を寄せて怒鳴った。
「…すみません、俺、部外者なんですけど」
「ったく!これだから腐った蜜柑は!こい!」
諸岡はどうやら彼を生徒だと思っているのか、ヅカヅカと教室に入り彼の手を取ろうとする。
「話は通じないか………鳴上君、じゃあ、またね」
「え……」
ユキは悠の机から一気に窓まで走り、そして窓を開けると平然と飛び降りた。
ぶわりとフードがあおられ、白い髪があらわになる。
「ちょ、ココ二階……!!」
慌てて下を見るも、もう彼の姿はそこにはない。
諸岡はこめかみに筋を立て、また足を鳴らして階下に下りていった。
教室にいた生徒達は唖然として、花村が苦笑する。
「……鳴上、今の人、知り合いか?」
「そうだな。最近隣に住み始めた人で、よくご飯を作ってもらってるんだ」
悠の返答に、花村はへーと曖昧な返事をした。
「えーっと……運動神経いーのな」
「あ、ああ……」
(二階から飛び降りるって……運動神経いいとかの問題じゃない気がするんだけど……)
悠が顔をひきつらせながら弁当箱を開けると、そこには決して手の抜かれていない綺麗な弁当の姿があった。
様々な動物の形に切られた、赤色のウインナー。ほうれん草のおひたしに小さくカットされたトマト、とろりとした綺麗な卵焼き。三角おにぎりは二段目に海苔が巻かれた状態で詰められていて、そしてデザートのりんごはウサギとなって小さな箱に整列していた。
「おお……なんか、王道中の王道、って感じだな?」
「そうだな。……いただきます」
早速おにぎりを口に入れると、中は梅干だったのか、程よい酸味と甘味が口の中に広がる。
もう一つは鮭、さらにもう一つは昆布のようだ。素朴な味が美味しくてどんどんとおかずも頬張っていれば、耐え切れなくなったのか陽介がそろりと手を伸ばした。
「鳴上……卵焼き一個分けてくんね?お前の、なんかすっげー旨そうでさあ……」
「……いいぞ」
悠は少し惜しい気もしたが、彼が購買のパンしか食べていないのを見て頷く。
「やりい!いっただっきまーす!……んん!んまい!
鳴上お前、こんなうめえ飯毎日食ってんのか!?」
「ああ」
「ずりい!こっちなんてさあ……」
陽介の愚痴が始まったのに対し、悠は相槌をうちながらおかずとデザートを平らげる。
(……今度はハンバーグがいい、なんて言ったら、作ってくれるだろうか……?)
ずっと昔、母親に言いたくて言えなかった、そんな我侭。
それさえ彼は平然と叶えてくれそうな気がして、悠はほんの少しだけ、それに縋りたいと目を閉じた。
昼休み。
真っ黒なフードを目深に被った青年が、ずいと悠の目の前に包みを差し出す。
「えっと…ユキさん、ですよね?」
悠がそう訊ねると、彼はこくりと頷いた。
「これ、弁当の忘れ物」
「あ……すみません。忘れてたみたいで」
彼はそれを受け取り、そして周りをチラリと見る。
周囲は突如として教室に入ってきた謎の青年に視線を集中させていて、向かいでパンを頬張る陽介でさえ言葉を失っているようだった。
ユキはその視線に気づいたのか、ゆっくりと視線を移して首を傾げる。
「何?」
―無機質な青い瞳。
僅かに見えたそれに、陽介は息を呑む。
「い、いや…」
「こらー!そこのお前!なんだその服装は!たるんどる!」
廊下で巡回していた諸岡がユキの存在に気づき、眉間に皺を寄せて怒鳴った。
「…すみません、俺、部外者なんですけど」
「ったく!これだから腐った蜜柑は!こい!」
諸岡はどうやら彼を生徒だと思っているのか、ヅカヅカと教室に入り彼の手を取ろうとする。
「話は通じないか………鳴上君、じゃあ、またね」
「え……」
ユキは悠の机から一気に窓まで走り、そして窓を開けると平然と飛び降りた。
ぶわりとフードがあおられ、白い髪があらわになる。
「ちょ、ココ二階……!!」
慌てて下を見るも、もう彼の姿はそこにはない。
諸岡はこめかみに筋を立て、また足を鳴らして階下に下りていった。
教室にいた生徒達は唖然として、花村が苦笑する。
「……鳴上、今の人、知り合いか?」
「そうだな。最近隣に住み始めた人で、よくご飯を作ってもらってるんだ」
悠の返答に、花村はへーと曖昧な返事をした。
「えーっと……運動神経いーのな」
「あ、ああ……」
(二階から飛び降りるって……運動神経いいとかの問題じゃない気がするんだけど……)
悠が顔をひきつらせながら弁当箱を開けると、そこには決して手の抜かれていない綺麗な弁当の姿があった。
様々な動物の形に切られた、赤色のウインナー。ほうれん草のおひたしに小さくカットされたトマト、とろりとした綺麗な卵焼き。三角おにぎりは二段目に海苔が巻かれた状態で詰められていて、そしてデザートのりんごはウサギとなって小さな箱に整列していた。
「おお……なんか、王道中の王道、って感じだな?」
「そうだな。……いただきます」
早速おにぎりを口に入れると、中は梅干だったのか、程よい酸味と甘味が口の中に広がる。
もう一つは鮭、さらにもう一つは昆布のようだ。素朴な味が美味しくてどんどんとおかずも頬張っていれば、耐え切れなくなったのか陽介がそろりと手を伸ばした。
「鳴上……卵焼き一個分けてくんね?お前の、なんかすっげー旨そうでさあ……」
「……いいぞ」
悠は少し惜しい気もしたが、彼が購買のパンしか食べていないのを見て頷く。
「やりい!いっただっきまーす!……んん!んまい!
鳴上お前、こんなうめえ飯毎日食ってんのか!?」
「ああ」
「ずりい!こっちなんてさあ……」
陽介の愚痴が始まったのに対し、悠は相槌をうちながらおかずとデザートを平らげる。
(……今度はハンバーグがいい、なんて言ったら、作ってくれるだろうか……?)
ずっと昔、母親に言いたくて言えなかった、そんな我侭。
それさえ彼は平然と叶えてくれそうな気がして、悠はほんの少しだけ、それに縋りたいと目を閉じた。