覚醒
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
沢山、周りに迷惑をかけて。
退院後は殆どを、謝罪する時間に使っていた。
遼太郎さんは「そんな事しなくたっていい」とは言ってくれたけれど、一応やっておいた方がいい事だろう。
「桜木君」
学校の校長室。校長先生はいつも通りに自分を迎え、ソファーに座るように言った。
「どうですか、調子の方は?」
「ご迷惑をおかけしました。今は、なんとか」
学校に来ても、前ほどは怖くない。
きっと、自分の中で一つ、折り合いがついたんだと思う。
出されたお茶を礼を言いながら飲むと、校長は向かい側に座り口を開いた。
「……前の学校で、長らく虐めにあっていたと聞きました」
「……」
「そのせい、だったんでしょうね。夏から学校に行けなかったのは」
「……はい」
湯呑を置いて、目を伏せる。
「あの時は、辛いって思ってたなんて知らなくて、何ともなかったんですけど……おかしい、ですね」
「いいえ、おかしくありません」
手を、皺の多いあたたかな手が包み込む。その時初めて、自分の手が震えていた事を知った。
「君は、約束を守りたかったんでしょう。それまでよく、頑張りましたね」
優しい言葉。それがとても温かくて、はいと小さく頷いた。
その様子を見て、校長は続ける。
「……提案なのですが、冬休み明け少しだけでも、ウチに通常クラスでの登校をしませんか?」
「え……」
「今年の3年生は皆進路は落ち着いてますし、いい子達ですから。勿論、無理にとは言いません」
卒業資格もありますし、入試にはもう応募していますからね。
校長の提案に、少し考える。そして「……いき、たいです」と呟くように答えた。
「俺、あんまりクラスの人と沢山話した事とか、なくて。……クラスメートって、言うのかな。一員になるっていう事を、体験してみたいです」
その答えに、校長は嬉しそうに頷く。
「ええ、ええ。構いませんよ。休み明けから授業も予備的なものに変わりますし、体育なんてドッヂボールをしたりしますからね。気軽に体験してみてください」
ありがとうございます。頭を下げながら、ふとあることを思い出した。
「……あの、」
「はい?」
「もし、大丈夫そうだったら……」
これ以上迷惑はかけたくなかったので、もしも、の話だった。
それでも校長は嬉しそうに頷いて、いいですよ、と答えた。
退院後は殆どを、謝罪する時間に使っていた。
遼太郎さんは「そんな事しなくたっていい」とは言ってくれたけれど、一応やっておいた方がいい事だろう。
「桜木君」
学校の校長室。校長先生はいつも通りに自分を迎え、ソファーに座るように言った。
「どうですか、調子の方は?」
「ご迷惑をおかけしました。今は、なんとか」
学校に来ても、前ほどは怖くない。
きっと、自分の中で一つ、折り合いがついたんだと思う。
出されたお茶を礼を言いながら飲むと、校長は向かい側に座り口を開いた。
「……前の学校で、長らく虐めにあっていたと聞きました」
「……」
「そのせい、だったんでしょうね。夏から学校に行けなかったのは」
「……はい」
湯呑を置いて、目を伏せる。
「あの時は、辛いって思ってたなんて知らなくて、何ともなかったんですけど……おかしい、ですね」
「いいえ、おかしくありません」
手を、皺の多いあたたかな手が包み込む。その時初めて、自分の手が震えていた事を知った。
「君は、約束を守りたかったんでしょう。それまでよく、頑張りましたね」
優しい言葉。それがとても温かくて、はいと小さく頷いた。
その様子を見て、校長は続ける。
「……提案なのですが、冬休み明け少しだけでも、ウチに通常クラスでの登校をしませんか?」
「え……」
「今年の3年生は皆進路は落ち着いてますし、いい子達ですから。勿論、無理にとは言いません」
卒業資格もありますし、入試にはもう応募していますからね。
校長の提案に、少し考える。そして「……いき、たいです」と呟くように答えた。
「俺、あんまりクラスの人と沢山話した事とか、なくて。……クラスメートって、言うのかな。一員になるっていう事を、体験してみたいです」
その答えに、校長は嬉しそうに頷く。
「ええ、ええ。構いませんよ。休み明けから授業も予備的なものに変わりますし、体育なんてドッヂボールをしたりしますからね。気軽に体験してみてください」
ありがとうございます。頭を下げながら、ふとあることを思い出した。
「……あの、」
「はい?」
「もし、大丈夫そうだったら……」
これ以上迷惑はかけたくなかったので、もしも、の話だった。
それでも校長は嬉しそうに頷いて、いいですよ、と答えた。