自分が倒れていた神社。
赤い鳥居に辰姫神社と書かれたそこに入るかどうか少し悩んでいると、中からコーン……と狐の鳴き声が聞こえてくる。
「……狐？」
石段からそれた雑木林。
その陰で身を潜めるようにして、小さな狐が1匹、丸くなっていた。
怪我をしているのか、胴体の毛に血が滲んでいる。
「…食べるか？」
ユキは油揚げを出し、狐の前に差し出した。
狐は暫く彼を睨んだ後、ゆっくりとそれを口で受け取り咀嚼する。
「……ごめんね、包帯とか、明日持ってくるから」
優しく、少しぶっきらぼうに狐を撫でれば、狐はペロリとその掌を舐めた。
「わっ……」
「コーン！」
「えっと…大丈夫なの？」
ユキが首を傾げると、狐は頷いて彼の胸に飛び込む。
身体を触って確認すると、確かに血で汚れているものの、もう傷口は塞がっているようだった。
「そっか……じゃあ、おいで」
ユキは狐を肩に乗せ、神社から踵を返す。
「コン？」
「血、洗わないとゴワゴワするだろうし。お湯出してあげる」
そう呟けば、狐は嬉しそうに鳴いて、大人しく彼の首に尻尾を回して目を閉じた。