ただ一人の声
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「俺は、……ッ諦めて、たまるかああああああ!!!!」
大きな、唸るような声がした。
ユキはピタリと動きを止め、声の主を……鳴上を、ジッと見る。
「……悠?」
「ユキさん、大丈夫です。まだ、戦えます」
「……どうして?」
「貴方の、大切なものなんでしょう?」
ゆらりと立ち上がって、悠は笑う。その顔はボロボロで、血が少し付いていた。
身体だって、限界に近いだろうに。それでも彼は笑顔のままで、ユキに言った。
「貴方が守りたかったもの、俺達じゃその1割だって、守れないかもしれないけど。
それでも、その力に少しでもなれるなら。俺は絶対に、負けません」
その声に、一人、二人、彼の仲間が立ち上がって、エレボスを睨みつける。
「悠……」
『お、にいちゃ、おね、ちゃ』
小さな、声がした。
それは扉の前から聞こえて、クロッカーが顔だけを少年の石像に向けている。
『しなな、で、うしな、の、こわい、よ』
少年から涙が零れ落ち、その光がふわりと、鳴上達を覆いこんだ。
「なに、これ……!?先輩達の力が、どんどん回復していってるよ……!?」
久慈川が驚きの声を上げる。鳴上達の怪我や血のあとは瞬く間に消えていき、傷一つない状態に戻っていった。
「これは……?」
「あー……”記憶”のユキ君だね、これは。
今回の作戦には影響ないから安心して」
「”記憶”の……?」
「そ、君達に大嫌いって言ったユキ君。あんまり頻発はできないだろうけど、彼もそれなりの力は持ってるからね」
とはいえ、今のユキ君ほどではないけど。
綾時は苦笑しながら言って、そして「仕方ないな」と一歩前へ出た。
「あの子、中身ユキ君だから無茶しかねないし……
湊。いける?」
「ああ」
「湊……?」
不安げな顔で、ユキが僕の名前を呼ぶ。
「大丈夫。少し彼等の手伝いをしてくるだけだから」
「でも、湊は封印も……」
「予め、封印に使う分は取っておいてあるんだ。それに、さ」
一度言葉を区切って、ユキの冷たい頬に手を当てた。
「僕、きっと彼等より強いから大丈夫。ね?」
「それは少しだけ聞き捨てならないんですけど!!」
僕の言葉に、鳴上が攻撃を続けながら言う。
それに二人で顔を見合わせて、僕がくすりと笑いユキが目を細めた。
「行ってきます」
「……行ってらっしゃい」
手を離して、ペルソナを召喚する。
そうして鳴上の隣に立つと、ぽつりと言った。
「君の出番、取ったらごめんね」
「その台詞、そのまま返します」
そこまで返せるなら、上等だ。
僕は召喚銃を手に、鳴上はカードを手に。
もう一度エレボスに向き直って、一歩を踏み出した。