門の前
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アメノサギリとの戦いが、ユキさん一人で終わって。
足立さんは、弁当を持ったまま病院に連れられていき、逮捕された。
「今日は夜までに帰ればいいって言われてるから」と言うユキさんの家に集まった俺達は、綾時の「頼みたいこと」が何かを尋ねる。
「えっと、改めて、僕はニュクス。ユキ君に封印されてたんだけど、ちょっとエレボスが増えてきててね、依頼しに来たんだ」
「にゅ、えれ……?」
「ニュクスは、死の概念そのもの。エレボスは、人々の死への欲求だと思って。
綾時はそもそも人間じゃない。死を宿す存在だ」
疑問符を浮かべた皆に、ユキさんが補足する。
「かつてニュクスは磐戸台に現れ、世界に死をもたらそうとした。人の”死”に対する好奇心が、渇望が、ニュクスを呼び起こしたからだ。
今は、俺の”記憶”がニュクスのいる門からエレボスを遠ざけ、ニュクスと共に存在している」
彼は話しながらテーブルにお茶の入ったコップを置いて、「飲んでいいよ」と付け足した。
「ありがとう、ユキ君。
それで、依頼はエレボスの討伐。報酬はユキ君の記憶と感情。条件はユキ君以外で戦うこと。どう?やってみない?」
それに、ユキさんは固まった。
動きが止まって、少し胸を抑えるような仕草をして、そしてゆっくりと座る。
「僕と湊の力で作った封印で再度封印するんだ。記憶を封印から解除するには封印を解除しないままエレボスを一旦討伐する必要があって、それを討伐するには、君たちの”絆”の強さが必要だからさ。
存在が”死”だからって、人間の死を望んでる訳ではないでーす」
「……悠達に迷惑かけるなら、別にもう戻らなくてもいい」
そう言ったユキさんの表情は、固い。けれど胸元を抑えた手はそのままで、少し有里さんの方にもたれかかっていた。
二人とも背があまり変わらないから、横から見ただけでは寄りかかっているとは気づけない。
それに望月さんも気づいたのか、悲しそうに笑った。
「そう思いたいんだけどさ。君の”記憶”とペルソナが、あれからちょっと危なくて。
できたら君のものを全部、壊れる前に返しておきたいんだ」
どうかな。尋ねられたユキさんは俯き、でも、と呟く。
他に何か手はないかと、考えているのだろう。できるだけ、俺達を巻き込まない手を。
「……俺たちは、ずっと頼ってばっかだった」
俺が、ぽつりと言った。
それに雪子も頷いて、言葉を続ける。
「……うん。ユキさんが強いことに、優しい事に甘えてばっかりで、ユキさんなら大丈夫、きっとなんとかするんだって思い込んでた」
「でも、今は違う!俺たちは、ユキさんと対等になりたい!」花村は言う。
「頼ってほしい!仲間になってほしい!……私たちの傍で、笑って欲しい!」千枝は言う。
「もう、一人にしたくない!もう、あんな悲しい顔をさせたくない!」りせは言う。
「俺たちがアンタより弱いことはわかってるっす!でも、肩を貸すくれえなら幾らだってできるっすから!」完二は言う。
「……もっと、甘えてください。今度は僕たちが、あなたを助ける番なんです」直斗は言う。
「ユキサンといっしょに、いっぱい笑いたいクマ!」クマは言う。
それを、ユキさんは驚いたように、どこか怯えたような顔で眺めていて。
「……ユキさん」
「……悠?」
「ごめんなさい。俺たちが頼りなくて、あんなにひどい思い、させてしまって。
お願いです。…………もう一度だけ、俺たちを信じてください」
頭を一度地面につけ、顔を上げて目を見る。
しばらくして、「……と、に?」と、微かな声が聞こえてきた。
「本当に、信じて、いいのか?また、……」
それは、小さいが確かな疑心。顔は歪み、困惑した瞳が俺を捉えた。
今までは、信じる事をやめたから、いつも通りだったのだ。
それだけのことをしたのだと噛みしめながら、強く頷く。
「はい。俺達は、ユキさんの記憶と感情を取り戻します」
足立さんは、弁当を持ったまま病院に連れられていき、逮捕された。
「今日は夜までに帰ればいいって言われてるから」と言うユキさんの家に集まった俺達は、綾時の「頼みたいこと」が何かを尋ねる。
「えっと、改めて、僕はニュクス。ユキ君に封印されてたんだけど、ちょっとエレボスが増えてきててね、依頼しに来たんだ」
「にゅ、えれ……?」
「ニュクスは、死の概念そのもの。エレボスは、人々の死への欲求だと思って。
綾時はそもそも人間じゃない。死を宿す存在だ」
疑問符を浮かべた皆に、ユキさんが補足する。
「かつてニュクスは磐戸台に現れ、世界に死をもたらそうとした。人の”死”に対する好奇心が、渇望が、ニュクスを呼び起こしたからだ。
今は、俺の”記憶”がニュクスのいる門からエレボスを遠ざけ、ニュクスと共に存在している」
彼は話しながらテーブルにお茶の入ったコップを置いて、「飲んでいいよ」と付け足した。
「ありがとう、ユキ君。
それで、依頼はエレボスの討伐。報酬はユキ君の記憶と感情。条件はユキ君以外で戦うこと。どう?やってみない?」
それに、ユキさんは固まった。
動きが止まって、少し胸を抑えるような仕草をして、そしてゆっくりと座る。
「僕と湊の力で作った封印で再度封印するんだ。記憶を封印から解除するには封印を解除しないままエレボスを一旦討伐する必要があって、それを討伐するには、君たちの”絆”の強さが必要だからさ。
存在が”死”だからって、人間の死を望んでる訳ではないでーす」
「……悠達に迷惑かけるなら、別にもう戻らなくてもいい」
そう言ったユキさんの表情は、固い。けれど胸元を抑えた手はそのままで、少し有里さんの方にもたれかかっていた。
二人とも背があまり変わらないから、横から見ただけでは寄りかかっているとは気づけない。
それに望月さんも気づいたのか、悲しそうに笑った。
「そう思いたいんだけどさ。君の”記憶”とペルソナが、あれからちょっと危なくて。
できたら君のものを全部、壊れる前に返しておきたいんだ」
どうかな。尋ねられたユキさんは俯き、でも、と呟く。
他に何か手はないかと、考えているのだろう。できるだけ、俺達を巻き込まない手を。
「……俺たちは、ずっと頼ってばっかだった」
俺が、ぽつりと言った。
それに雪子も頷いて、言葉を続ける。
「……うん。ユキさんが強いことに、優しい事に甘えてばっかりで、ユキさんなら大丈夫、きっとなんとかするんだって思い込んでた」
「でも、今は違う!俺たちは、ユキさんと対等になりたい!」花村は言う。
「頼ってほしい!仲間になってほしい!……私たちの傍で、笑って欲しい!」千枝は言う。
「もう、一人にしたくない!もう、あんな悲しい顔をさせたくない!」りせは言う。
「俺たちがアンタより弱いことはわかってるっす!でも、肩を貸すくれえなら幾らだってできるっすから!」完二は言う。
「……もっと、甘えてください。今度は僕たちが、あなたを助ける番なんです」直斗は言う。
「ユキサンといっしょに、いっぱい笑いたいクマ!」クマは言う。
それを、ユキさんは驚いたように、どこか怯えたような顔で眺めていて。
「……ユキさん」
「……悠?」
「ごめんなさい。俺たちが頼りなくて、あんなにひどい思い、させてしまって。
お願いです。…………もう一度だけ、俺たちを信じてください」
頭を一度地面につけ、顔を上げて目を見る。
しばらくして、「……と、に?」と、微かな声が聞こえてきた。
「本当に、信じて、いいのか?また、……」
それは、小さいが確かな疑心。顔は歪み、困惑した瞳が俺を捉えた。
今までは、信じる事をやめたから、いつも通りだったのだ。
それだけのことをしたのだと噛みしめながら、強く頷く。
「はい。俺達は、ユキさんの記憶と感情を取り戻します」