門の前
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歩いて、渡って、歩いて。
いつも通りの歩調に、いつも通りの背中。
「ここから先は、一人で行く」と言った声も、いつも通りの声。
あまりにいつも通りで、どう話しかけたらいいのか、悩んでしまう。
「じゃあ、待っててね」
「は、はい」
スタスタと歩きを進める彼を見て、鳴上は周りに「一応、皆警戒態勢で」と声をかけた。
「こんにちは、足立さん。朝ごはんどうですか?」
桜木の声が、奥の部屋から聞こえてくる。
それに対して笑ったのは、足立の声。
『キミさぁ、僕が犯人だって分かっててそれなの?』
「ええ、連絡したのは俺ですし。あ、ちゃんと今日のお昼もありますよ」
『馬鹿じゃねぇの?……ほんとにさぁ』
普段聞いているのとは随分と違う、足立の口調。
けれど桜木が動じた様子はなく、足立がぽつりと呟くように言った。
『……僕は、キミみたいな奴が……嫌いだと、思いたかった』
「……」
『アイツらみたいに無駄に青春して、馬鹿みたいに真っ直ぐだったら嫌いになれたのに。……なあ、なんでだよ?』
「……」
『幻滅もしない。糾弾もしない。……いっそ絶望してくれた方がよかった』
足立の言葉に、桜木はただただ淡々と返す。
「俺は、最初の2人を助けられなかった」
『……』
「1人目は、手さえ届かなかった。2人目は、届いたはずなのに手遅れだった。
それが全部、俺のせいじゃないとは思わないし、足立さんや生田目さんが全部悪いとも思わない」
椅子に座る音。そしてガサガサと何かを出した。
「俺は裁定者じゃない。俺は神じゃない。俺に出来るのは、沢山の道を考えてそれ以降の被害を減らす事。……例えば、」
トン。何かを置いた音。そして、
「足立さんがキャベツばかりの生活を逃れること、とか」
と言った。
『……ぷっ』
キミらしいなぁ!ほんとうに、もう……はーぁ』
大きなため息をついて、そして尋ねた。
『キミは、止められると思うのか?』
「止めるよ。1度世界を救ってるんだから、このくらい救えなきゃ俺じゃない」
手助けは、もしかしたらいるかもしれないけど。そう付け加えられ、足立はまた笑う。
『……終わった後も、僕に弁当を届けてきそうだ』
「勿論。それを足立さんが望むなら、いつだって」
バキン。
大きな、何かが割れる音。
「全員、防御態勢!」と声がして、次の瞬間、部屋の空間ごと景色が変わった。
目の前には大きな目玉のような何かがそびえていて、ただ桜木がひらひらと手を振る。
――手は出さなくていい。回避に集中しろ。
その合図に、鳴上達は頷いた。
いつも通りの歩調に、いつも通りの背中。
「ここから先は、一人で行く」と言った声も、いつも通りの声。
あまりにいつも通りで、どう話しかけたらいいのか、悩んでしまう。
「じゃあ、待っててね」
「は、はい」
スタスタと歩きを進める彼を見て、鳴上は周りに「一応、皆警戒態勢で」と声をかけた。
「こんにちは、足立さん。朝ごはんどうですか?」
桜木の声が、奥の部屋から聞こえてくる。
それに対して笑ったのは、足立の声。
『キミさぁ、僕が犯人だって分かっててそれなの?』
「ええ、連絡したのは俺ですし。あ、ちゃんと今日のお昼もありますよ」
『馬鹿じゃねぇの?……ほんとにさぁ』
普段聞いているのとは随分と違う、足立の口調。
けれど桜木が動じた様子はなく、足立がぽつりと呟くように言った。
『……僕は、キミみたいな奴が……嫌いだと、思いたかった』
「……」
『アイツらみたいに無駄に青春して、馬鹿みたいに真っ直ぐだったら嫌いになれたのに。……なあ、なんでだよ?』
「……」
『幻滅もしない。糾弾もしない。……いっそ絶望してくれた方がよかった』
足立の言葉に、桜木はただただ淡々と返す。
「俺は、最初の2人を助けられなかった」
『……』
「1人目は、手さえ届かなかった。2人目は、届いたはずなのに手遅れだった。
それが全部、俺のせいじゃないとは思わないし、足立さんや生田目さんが全部悪いとも思わない」
椅子に座る音。そしてガサガサと何かを出した。
「俺は裁定者じゃない。俺は神じゃない。俺に出来るのは、沢山の道を考えてそれ以降の被害を減らす事。……例えば、」
トン。何かを置いた音。そして、
「足立さんがキャベツばかりの生活を逃れること、とか」
と言った。
『……ぷっ』
キミらしいなぁ!ほんとうに、もう……はーぁ』
大きなため息をついて、そして尋ねた。
『キミは、止められると思うのか?』
「止めるよ。1度世界を救ってるんだから、このくらい救えなきゃ俺じゃない」
手助けは、もしかしたらいるかもしれないけど。そう付け加えられ、足立はまた笑う。
『……終わった後も、僕に弁当を届けてきそうだ』
「勿論。それを足立さんが望むなら、いつだって」
バキン。
大きな、何かが割れる音。
「全員、防御態勢!」と声がして、次の瞬間、部屋の空間ごと景色が変わった。
目の前には大きな目玉のような何かがそびえていて、ただ桜木がひらひらと手を振る。
――手は出さなくていい。回避に集中しろ。
その合図に、鳴上達は頷いた。