かつての友人達
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「僕が望月綾時。で、彼が有里湊。ユキ君の元いた高校の同級生だよ。よろしくね」
彼――望月は、ユキさんの家に集まった皆に対し、まずそう挨拶した。
そして、「言いたい事っていうのは、ユキ君に君達が言った事についてなんだけど」と切り込む。
「言った事、って……」
「知ってるよ。何せ僕、今ユキ君の”記憶”と一緒にいるから。君達が何をして、何を言って、どうなったか。全部知ってるよ」
全部再現してあげようか?そう言われて、千枝は首を振った。
「僕らだって、結構怒ってるんだよ?湊なんて、僕が止めなかったら君達の息の根止めちゃうところだったんだから」
「……お前だって、全人類滅亡させようとしてたくせに」
「ちょっ!それは言わない約束でしょー!」
「中途半端に慕って頼って傷つけて。それの何処が”仲間”なのか、言ってみろ。
……ああ、”仲間”じゃなかったんだっけ?」
冷たい声だった。空気が張り詰める中、綾時が言葉を続ける。
「ユキ君は絶対感情的に怒らないし、特に自分の事が関わると怒れない。だからこそ、僕たちが勝手に彼の分まで怒っていると認識してほしいかな?」
怒られなくて、謝れもしないのはキツいでしょ?そう言われ、思わず俯いた。
「話を聞く限り、クロッカーやハッターも”怒れない”んだよ。クロッカーは約束を守るだけ、ハッターは記憶を探すだけに存在しているから。彼の感情を知り、彼をよく知っているのはイーターだけ。……イーターも、かなーり手加減してたみたいだけど」
「て、手加減、ですか……」
「……してたに決まってるだろ。何故ユキが大切にしたいと思っているものをアイツが壊すと思うんだ………
アイツはシャドウを躊躇いなく食える。そして、その力は強大だ。君達くらいが相手なら、数秒で全員のペルソナを屠る事が出来ただろうな」
それ自体が、ユキの強さだったんだから。そう言った有里の顔は、暗い影を落としている。
「ユキは今もなお苦しんでる。自分が辛かった事から立ち直れてなんかいない、ただ、目を逸らす時間も何もなかっただけだ。
事実を文句も言わず飲み込んで、受け入れて、ただ必死に前だけを見ている、それだけなんだよ」
頷いて、望月が続ける。
「……君達は、ちっちゃな彼に会った事があるだろ?あれが、彼が滅亡回避の代償として出した、”記憶”を司る媒体だ。
彼は彼自身の幼い頃の感情を有し、そして何度か、イーターに頼まれて君達に記憶となるモノを提供していた」
懐中時計とか、鏡がそれだね。戦いの記憶に比べたら僅かだけど。望月は肩を竦めた。
「”ユキを助けたい”って、彼は言ってた。もしかしたら、君達が助けてくれるかもしれないって。
……でもあの日、彼は涙で顔を汚しながら、渡した筈の懐中時計を手に戻ってきた」
目を伏せて、そして両手を広げて嗤う。
「本当、凄いよね君達は。普段散々甘えて頼ってを繰り返した恩を、何倍もの仇で返したんだから」
「っ……仇、なんて、そんなつもりは……」
「仇だよ、仇。『自分と同じ人殺しにさせたくない』っていう、小さな願いの、大きな報復」
「君達が大切だった。だから、人殺しになってほしくなかった。
だから止めたのに、部外者は引っ込んでろ、とかさぁ。自分の持つ力で悪いことをしようとしてるのは確実に君達なのに、何様のつもりだって」
「……それ、は……」
「理由と力があったら人を殺していいなら、君達は生田目の救済も赦すべきだろ?生田目だって、理由と力が存在していたんだからさ」
望月の言葉に、誰も何も返せない。有里はため息をついて、「話を戻すけど」と口を開いた。
「僕らはユキを助ける為だけに来た。もし君達が協力してくれないならそれでいい。その時は、君達の力を奪ってでも為すべきことを為すまでだから」
有里のその言葉には、力があった。
「……俺は、……もう二度とユキさんに許されなくても、いい」
「鳴上……」
「もう、どうにもならないことは分かってる」
覆水、盆に返らず。
もうあの人との距離は、戻らない。
「ただ、あの人を苦しみから助ける手段があるなら、俺は協力したい」
「……うん。君は一番、感じる余裕はあっただろうし」
望月は頷いて、そして全員の方を見た。
「他の子達も、もう一度聞くまでの間に決めて欲しい。誰かにつられて、じゃなく、自分の意思でね。
じゃないと、ただ死ぬだけになっちゃうから」
それじゃあ、解散。
両手を叩く音がして、それでも、皆すぐには帰れなかった。
今日言われた事を、ユキさんに言われた事を、イーターに言われた事を、思い出して、噛みしめて。
「……そういえば、明日ユキは真犯人の所に行くんだっけ」
「ついてきていいよって言ってたから、行くだけ行ってみてもいいんじゃないかな」
望月達がそう喋るのを聞きながら、それぞれの家へと帰っていった。
彼――望月は、ユキさんの家に集まった皆に対し、まずそう挨拶した。
そして、「言いたい事っていうのは、ユキ君に君達が言った事についてなんだけど」と切り込む。
「言った事、って……」
「知ってるよ。何せ僕、今ユキ君の”記憶”と一緒にいるから。君達が何をして、何を言って、どうなったか。全部知ってるよ」
全部再現してあげようか?そう言われて、千枝は首を振った。
「僕らだって、結構怒ってるんだよ?湊なんて、僕が止めなかったら君達の息の根止めちゃうところだったんだから」
「……お前だって、全人類滅亡させようとしてたくせに」
「ちょっ!それは言わない約束でしょー!」
「中途半端に慕って頼って傷つけて。それの何処が”仲間”なのか、言ってみろ。
……ああ、”仲間”じゃなかったんだっけ?」
冷たい声だった。空気が張り詰める中、綾時が言葉を続ける。
「ユキ君は絶対感情的に怒らないし、特に自分の事が関わると怒れない。だからこそ、僕たちが勝手に彼の分まで怒っていると認識してほしいかな?」
怒られなくて、謝れもしないのはキツいでしょ?そう言われ、思わず俯いた。
「話を聞く限り、クロッカーやハッターも”怒れない”んだよ。クロッカーは約束を守るだけ、ハッターは記憶を探すだけに存在しているから。彼の感情を知り、彼をよく知っているのはイーターだけ。……イーターも、かなーり手加減してたみたいだけど」
「て、手加減、ですか……」
「……してたに決まってるだろ。何故ユキが大切にしたいと思っているものをアイツが壊すと思うんだ………
アイツはシャドウを躊躇いなく食える。そして、その力は強大だ。君達くらいが相手なら、数秒で全員のペルソナを屠る事が出来ただろうな」
それ自体が、ユキの強さだったんだから。そう言った有里の顔は、暗い影を落としている。
「ユキは今もなお苦しんでる。自分が辛かった事から立ち直れてなんかいない、ただ、目を逸らす時間も何もなかっただけだ。
事実を文句も言わず飲み込んで、受け入れて、ただ必死に前だけを見ている、それだけなんだよ」
頷いて、望月が続ける。
「……君達は、ちっちゃな彼に会った事があるだろ?あれが、彼が滅亡回避の代償として出した、”記憶”を司る媒体だ。
彼は彼自身の幼い頃の感情を有し、そして何度か、イーターに頼まれて君達に記憶となるモノを提供していた」
懐中時計とか、鏡がそれだね。戦いの記憶に比べたら僅かだけど。望月は肩を竦めた。
「”ユキを助けたい”って、彼は言ってた。もしかしたら、君達が助けてくれるかもしれないって。
……でもあの日、彼は涙で顔を汚しながら、渡した筈の懐中時計を手に戻ってきた」
目を伏せて、そして両手を広げて嗤う。
「本当、凄いよね君達は。普段散々甘えて頼ってを繰り返した恩を、何倍もの仇で返したんだから」
「っ……仇、なんて、そんなつもりは……」
「仇だよ、仇。『自分と同じ人殺しにさせたくない』っていう、小さな願いの、大きな報復」
「君達が大切だった。だから、人殺しになってほしくなかった。
だから止めたのに、部外者は引っ込んでろ、とかさぁ。自分の持つ力で悪いことをしようとしてるのは確実に君達なのに、何様のつもりだって」
「……それ、は……」
「理由と力があったら人を殺していいなら、君達は生田目の救済も赦すべきだろ?生田目だって、理由と力が存在していたんだからさ」
望月の言葉に、誰も何も返せない。有里はため息をついて、「話を戻すけど」と口を開いた。
「僕らはユキを助ける為だけに来た。もし君達が協力してくれないならそれでいい。その時は、君達の力を奪ってでも為すべきことを為すまでだから」
有里のその言葉には、力があった。
「……俺は、……もう二度とユキさんに許されなくても、いい」
「鳴上……」
「もう、どうにもならないことは分かってる」
覆水、盆に返らず。
もうあの人との距離は、戻らない。
「ただ、あの人を苦しみから助ける手段があるなら、俺は協力したい」
「……うん。君は一番、感じる余裕はあっただろうし」
望月は頷いて、そして全員の方を見た。
「他の子達も、もう一度聞くまでの間に決めて欲しい。誰かにつられて、じゃなく、自分の意思でね。
じゃないと、ただ死ぬだけになっちゃうから」
それじゃあ、解散。
両手を叩く音がして、それでも、皆すぐには帰れなかった。
今日言われた事を、ユキさんに言われた事を、イーターに言われた事を、思い出して、噛みしめて。
「……そういえば、明日ユキは真犯人の所に行くんだっけ」
「ついてきていいよって言ってたから、行くだけ行ってみてもいいんじゃないかな」
望月達がそう喋るのを聞きながら、それぞれの家へと帰っていった。