かつての友人達
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生田目の病室。
数回ノックして、いつも通りに入る。
「生田目さん、こんにちは」
「……君、は、」
「“救世主”としてのあなたと、生田目さん自身に、質問をしにきました」
そう言って腰を下ろせば、彼はどこか怯えたような顔でうつむいた。
「……あなたは、テレビ向こうがどんなものか、あの日初めて知りましたか?」
まず、一つ。
「他者の目に晒され、ありもしないことを決めつけられた世界を、あなたはその時知りましたか?」
「……あ、ああ」
「では、そこが安全だと、誰かに示唆されましたか?」
「…………」
「生田目さん」
彼は俯く生田目に近づき、そしてその手を優しく包んだ。
「あの世界に初めて入り込んでしまったあなたが、今こうして生きてて良かったと思っています」
「え……」
「あそこの世界では、皆が自身を見失ってしまうから。……犯人だと言われていても、誰かを殺しかけた人だったとしても、……人が死なれるのは、心地が悪い」
桜木から紡がれる言葉は、どれも本当の言葉で。
「……足立、透」
ぽつり、と、生田目が呟く。
「足立透っていう、刑事、彼が、そう、私に、」
「……やはり、そうですか。
お答えいただき、ありがとうございました」
桜木は頭を下げ、そしてまた、向き直った。
「色んな人を殺しかけた貴方には、少しだけ憤りを感じますけど」
そこで一度区切ると、彼はペシリ、と生田目の額に軽くデコピンをした。
「これで俺はいいです。……貴方だって、“力”によって殺されかけた、無知であった被害者ですから。俺に裁く権利は、ありません」
そう言って、立ち上げる。
「いなくていい人はいない、なんてありきたりですけど、俺は貴方のお陰で沢山の人に会うこともできた。……それは、感謝します」
「……君は、」
生田目が、恐る恐る口を開く。
「君は、あの子達と違う、優しすぎる、なんで、どうして、」
「……俺が人殺しだからと言えば、分かってもらえますか?」
扉の手前。生田目に顔を向けずに、桜木は答える。
「殺してしまったと感じたあとの、どうしようもない辛さを知ってます。貴方はまだ、希望がある。
……せめて、それを見捨ててあげないでください」
扉を閉めると、フウと息を吐いて前を向いた。
「……後は、明日にやる」
「お前……」
「遼太郎さん。悪いけど、足立さんの動機について洗っておいてくれない?どうせ本人から話聞くけど、一応」
「ああ……」
「じゃあ、俺は一旦部屋に戻って仮眠でもしてくる」
「おい……桜木!」
「刑死者説、あながち間違いじゃなかったって気づいたのは、そこで、1人の人間が死ぬ様を見てからだ」
[#dn=q#]は立ち止まって、呟くように言う。
「そこから、動機や行く先を推測して、今と同じ結論に至った」
それは、ただの彼の道のり。
「でも、それじゃあ裏付けも何も無いし、言ったところで信じては貰えない」
ただの、彼の中にあった事実。
「だから、人を助けながら、裏付けをしてった。所謂、確認作業だよ」
そこまで言って、少しだけ鳴上達の方を向いた。
「全て出揃うまで、誰にも言う気はなかった。何処かが間違ってたら終わりだからな。悠達にも、話す気は全く無かった」
そして、また視線を戻し、歩き出す。
「今回の話は、それだけだ。
……早く、菜々子ちゃんと話がしたいな」
その背中を追うか躊躇って、鳴上だけ、ただ追う事にした。
明日、どうするのか。何か、やれる事は無いのか。
考えて考えて、前を歩いていた彼の背中にぶつかる。
前に誰かいたのだろうか。「すみません」と桜木に謝って前を見ると、二人、そこに立っていた。
「お久しぶり、ユキ君」
「……りょ、うじ?」
「……綾時だけじゃないけど」
「湊も……?どうして、此処に……」
桜木はひどく驚いて、「お医者さんと、そんなに仲良かったっけ」と尋ねる。
有里はそれに肩を竦め、「少しだけだよ」と言った。
「あ、そうそう。その子が鳴上君?」
「うん」
間髪入れずに頷いた桜木につられ、鳴上は慌てて「鳴上悠です」と頭を下げる。
「うん。君達にね、ひと段落したら、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「頼み……ですか?」
「うん、頼み。それと君達に言いたい事もあるし、今日皆で集まってもらう事ってできる?」
「は、はい。聞いてみます」
鳴上が携帯を出し、メールを打ち始める。桜木はそんな彼を見て、そして望月に聞いた。
「……ひと段落するまで、どこに泊まるの?」
「ユキ君の家に住ませてもらうから大丈夫!」
「え……まあ、いいけど………狭いよ?」
そう言って、[#dn=q#]は病室に戻っていく。
自分はもう必要ないと思ったのだろう。それは正しかったようで、望月と有里は「じゃ、行こうか」と鳴上に声を掛けた。
数回ノックして、いつも通りに入る。
「生田目さん、こんにちは」
「……君、は、」
「“救世主”としてのあなたと、生田目さん自身に、質問をしにきました」
そう言って腰を下ろせば、彼はどこか怯えたような顔でうつむいた。
「……あなたは、テレビ向こうがどんなものか、あの日初めて知りましたか?」
まず、一つ。
「他者の目に晒され、ありもしないことを決めつけられた世界を、あなたはその時知りましたか?」
「……あ、ああ」
「では、そこが安全だと、誰かに示唆されましたか?」
「…………」
「生田目さん」
彼は俯く生田目に近づき、そしてその手を優しく包んだ。
「あの世界に初めて入り込んでしまったあなたが、今こうして生きてて良かったと思っています」
「え……」
「あそこの世界では、皆が自身を見失ってしまうから。……犯人だと言われていても、誰かを殺しかけた人だったとしても、……人が死なれるのは、心地が悪い」
桜木から紡がれる言葉は、どれも本当の言葉で。
「……足立、透」
ぽつり、と、生田目が呟く。
「足立透っていう、刑事、彼が、そう、私に、」
「……やはり、そうですか。
お答えいただき、ありがとうございました」
桜木は頭を下げ、そしてまた、向き直った。
「色んな人を殺しかけた貴方には、少しだけ憤りを感じますけど」
そこで一度区切ると、彼はペシリ、と生田目の額に軽くデコピンをした。
「これで俺はいいです。……貴方だって、“力”によって殺されかけた、無知であった被害者ですから。俺に裁く権利は、ありません」
そう言って、立ち上げる。
「いなくていい人はいない、なんてありきたりですけど、俺は貴方のお陰で沢山の人に会うこともできた。……それは、感謝します」
「……君は、」
生田目が、恐る恐る口を開く。
「君は、あの子達と違う、優しすぎる、なんで、どうして、」
「……俺が人殺しだからと言えば、分かってもらえますか?」
扉の手前。生田目に顔を向けずに、桜木は答える。
「殺してしまったと感じたあとの、どうしようもない辛さを知ってます。貴方はまだ、希望がある。
……せめて、それを見捨ててあげないでください」
扉を閉めると、フウと息を吐いて前を向いた。
「……後は、明日にやる」
「お前……」
「遼太郎さん。悪いけど、足立さんの動機について洗っておいてくれない?どうせ本人から話聞くけど、一応」
「ああ……」
「じゃあ、俺は一旦部屋に戻って仮眠でもしてくる」
「おい……桜木!」
「刑死者説、あながち間違いじゃなかったって気づいたのは、そこで、1人の人間が死ぬ様を見てからだ」
[#dn=q#]は立ち止まって、呟くように言う。
「そこから、動機や行く先を推測して、今と同じ結論に至った」
それは、ただの彼の道のり。
「でも、それじゃあ裏付けも何も無いし、言ったところで信じては貰えない」
ただの、彼の中にあった事実。
「だから、人を助けながら、裏付けをしてった。所謂、確認作業だよ」
そこまで言って、少しだけ鳴上達の方を向いた。
「全て出揃うまで、誰にも言う気はなかった。何処かが間違ってたら終わりだからな。悠達にも、話す気は全く無かった」
そして、また視線を戻し、歩き出す。
「今回の話は、それだけだ。
……早く、菜々子ちゃんと話がしたいな」
その背中を追うか躊躇って、鳴上だけ、ただ追う事にした。
明日、どうするのか。何か、やれる事は無いのか。
考えて考えて、前を歩いていた彼の背中にぶつかる。
前に誰かいたのだろうか。「すみません」と桜木に謝って前を見ると、二人、そこに立っていた。
「お久しぶり、ユキ君」
「……りょ、うじ?」
「……綾時だけじゃないけど」
「湊も……?どうして、此処に……」
桜木はひどく驚いて、「お医者さんと、そんなに仲良かったっけ」と尋ねる。
有里はそれに肩を竦め、「少しだけだよ」と言った。
「あ、そうそう。その子が鳴上君?」
「うん」
間髪入れずに頷いた桜木につられ、鳴上は慌てて「鳴上悠です」と頭を下げる。
「うん。君達にね、ひと段落したら、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「頼み……ですか?」
「うん、頼み。それと君達に言いたい事もあるし、今日皆で集まってもらう事ってできる?」
「は、はい。聞いてみます」
鳴上が携帯を出し、メールを打ち始める。桜木はそんな彼を見て、そして望月に聞いた。
「……ひと段落するまで、どこに泊まるの?」
「ユキ君の家に住ませてもらうから大丈夫!」
「え……まあ、いいけど………狭いよ?」
そう言って、[#dn=q#]は病室に戻っていく。
自分はもう必要ないと思ったのだろう。それは正しかったようで、望月と有里は「じゃ、行こうか」と鳴上に声を掛けた。