絶望の怒り
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皆でマヨナカテレビについて連絡を取り合って、クマの元へ行く。
「え?ユキサンのマヨナカテレビ?」
クマは一部始終を聞いて、きょとんとした顔をした。
「ユキサンはずーっと、ずーーっと此処に居たクマよ?クマのことを励まして、できるだけあっちの世界に余計な被害がこれ以上出ないようにってずっとシャドウと戦ってたクマ」
「え……」
こっちクマ。そう案内された場所は、ユキさんのテレビがある方向。
高い高い、灰色の壁。確か此処には、帽子屋のお茶会場があったはずだ。
壁で覆い尽くされた要塞のような場所の前に、あの人はいた。
いや、違う。彼が今持っているのは、大きな黒い鎌。
「……悠?」
そう、彼の口が動いた。
「……誰だ」
「桜木ユキだけど」
「”そう”だけど、”そうじゃない”だろ?」
「……大正解。まあ、俺はハッターみたいに謎かけする程人良しじゃないからな」
黒い兎が立っていた。
黒髪に紅い目、『あの人』にそっくりな顔。兎耳が頭の上でひょこひょこと揺れ、真っ赤なスーツを着て微笑んでいる。
『ここは観衆の目に晒されたチンケな舞台。己が抑制したい思いを勝手に曝け出される拷問場』
『こんにちは初めまして、桜木ユキの”絶望”のペルソナ、イーターです』
彼はニコニコと笑ってお辞儀し、スッと目を細めた。
『俺はアイツの感情を全て受け持つ黒兎。前回は時計兎と帽子屋にちょっと感情を託して寝てたから、今日はそれに関したお願いをね』
「……お願い?」
『そう、お願い』
そうしてニコニコと、呆然としている俺達に手に持っていた大きな鎌を向けた。
『これ以上、俺に関わんないでくれないかな』
イーターは俺達に向けてそう言い放つ。
その目は禍々しく黒が渦巻いていて、口元の笑みは完全に消え去った。
『本当に後悔してる。こんなことになるなら、アイツに感情を返すべきじゃなかった。アンタ等にアイツの事を話すまでもなく、二度と戻せないように俺が食っちまえば良かった』
「な……!」
『アイツは今、病院で倒れて一人、治療を受けてるよ』
冷たい声。あの時とは違う声に、その事実に、呆然とする。
『感情がぶっ壊れたんだ。何もせず無事に起き上がれる見込みは、今のところない。
ハッターも、アイツの中で蹲って啼いている。時計兎は……辛うじて世界の死を望むものを阻んでいるけれど、もうボロボロだ。死を回避出来なくなるのも時間の問題だな。
アンタ達は、チンケな探偵ごっこで犯人を捕まえるどころか、世界を滅ぼす主犯になったワケだ』
「!!」
『此処はアイツの最後の砦。それさえなくなれば、アイツは自分を見失う。
……頼むから、アイツを一人にしてくれ。アンタ達が無用心に近づくべき場所じゃない』
高い壁の向こう。その向こう側で、人とも動物とも思えないような咆哮が聞こえてくる。
「ユキさん……!」
「そんなこと、言ってられるワケないじゃない!」
壁に身を打ち付ける音、何かを投げつけた音が響いては、イーターは哂った。
『なんで?』
「え……」
『仲間でもないのに、なんで?って、聞いてるんだけど』
一歩、一歩。軽やかな足取りで近づくと、トンと花村の肩を押した。
『そうだよな?だって、俺はただの助っ人なんだから。どうなろうがどう潰れようが、アンタ達に関係なんてない』
「っ……」
『……俺が、桜木ユキがアンタ等と何も変わんねえ、それより不完全な人間ってこと、いつから忘れてた?』
笑みは消え、また冷たい声に戻る。
『アイツは、感情を7の時から失っている。つまりな、複雑な感情も、死に対するそんな自分の無意識下の感情の制御の仕方もわかってない。だからアイツは、うまい感情の吐き出し方も知らねえんだよ』
黒ウサギはスウと息を吸い込み、フワリと表情を和らげた。
それはどこか苦しげな表情で、口から吐かれた言葉は冷たさを伴い響き渡る。
『「もし大切な人が殺されて、その殺した人が憎くて恨むのが当たり前なら、俺は俺自身を恨んで殺してしまった方が正しかったのかな」』
それは当たり前で、……当たり前の、苦しみで。
『「俺は父さんと母さんを殺した。沢山の人の人格を、シャドウを食った。……この罪は、一生かけても拭えないんだろ?」』
優しいあの人だからこそ、俺達を認めてくれたあの人だからこそ、抱え込んで。
『「菜々子ちゃんが死んだのは、俺のせいだ。だから、だから俺が俺を殺さないと、……ねぇ、」』
そう、だろ?
『俺が、アイツが、強いと思った?んなわけねえだろ!ただ我慢して、我慢して、我慢して……!アンタ達に甘えるより前に、自分と同じ目に遭って欲しくない、同じ感情を持たせてはいけないって、ずっと周りのことばっか気にしてさあ!』
『俺が何をしたんだよ、どうしてこんな事にしかなんねえんだよ、なんで俺が、感情の無いバケモノになんなきゃいけねぇんだよ……ッ!』
それが、”絶望”の本音。
彼は大きく息を吐いて、そしてゆらりと鎌を振り上げた。
『……こいよ。前は俺はただちょっとの感情と記憶を差し出しただけだからな。……一度アンタ達のペルソナを食わなきゃ気がすまねえ』
「え……」
『言っておくが、俺はクロッカーやハッターみてえにできてねえからな?アルカナは『死神』。さあ、全員のペルソナを食ったらどんな味がすんだろうなあ!!!!!』
ズドン。
鎌が振り落とされた音と、強烈で膨大な殺気。
背筋を凍らせるそれに、鳴上達は歯を震わせながら覚悟を決めるしかなかった。
やらなきゃ、殺される。
『咆哮!』
「え?ユキサンのマヨナカテレビ?」
クマは一部始終を聞いて、きょとんとした顔をした。
「ユキサンはずーっと、ずーーっと此処に居たクマよ?クマのことを励まして、できるだけあっちの世界に余計な被害がこれ以上出ないようにってずっとシャドウと戦ってたクマ」
「え……」
こっちクマ。そう案内された場所は、ユキさんのテレビがある方向。
高い高い、灰色の壁。確か此処には、帽子屋のお茶会場があったはずだ。
壁で覆い尽くされた要塞のような場所の前に、あの人はいた。
いや、違う。彼が今持っているのは、大きな黒い鎌。
「……悠?」
そう、彼の口が動いた。
「……誰だ」
「桜木ユキだけど」
「”そう”だけど、”そうじゃない”だろ?」
「……大正解。まあ、俺はハッターみたいに謎かけする程人良しじゃないからな」
黒い兎が立っていた。
黒髪に紅い目、『あの人』にそっくりな顔。兎耳が頭の上でひょこひょこと揺れ、真っ赤なスーツを着て微笑んでいる。
『ここは観衆の目に晒されたチンケな舞台。己が抑制したい思いを勝手に曝け出される拷問場』
『こんにちは初めまして、桜木ユキの”絶望”のペルソナ、イーターです』
彼はニコニコと笑ってお辞儀し、スッと目を細めた。
『俺はアイツの感情を全て受け持つ黒兎。前回は時計兎と帽子屋にちょっと感情を託して寝てたから、今日はそれに関したお願いをね』
「……お願い?」
『そう、お願い』
そうしてニコニコと、呆然としている俺達に手に持っていた大きな鎌を向けた。
『これ以上、俺に関わんないでくれないかな』
イーターは俺達に向けてそう言い放つ。
その目は禍々しく黒が渦巻いていて、口元の笑みは完全に消え去った。
『本当に後悔してる。こんなことになるなら、アイツに感情を返すべきじゃなかった。アンタ等にアイツの事を話すまでもなく、二度と戻せないように俺が食っちまえば良かった』
「な……!」
『アイツは今、病院で倒れて一人、治療を受けてるよ』
冷たい声。あの時とは違う声に、その事実に、呆然とする。
『感情がぶっ壊れたんだ。何もせず無事に起き上がれる見込みは、今のところない。
ハッターも、アイツの中で蹲って啼いている。時計兎は……辛うじて世界の死を望むものを阻んでいるけれど、もうボロボロだ。死を回避出来なくなるのも時間の問題だな。
アンタ達は、チンケな探偵ごっこで犯人を捕まえるどころか、世界を滅ぼす主犯になったワケだ』
「!!」
『此処はアイツの最後の砦。それさえなくなれば、アイツは自分を見失う。
……頼むから、アイツを一人にしてくれ。アンタ達が無用心に近づくべき場所じゃない』
高い壁の向こう。その向こう側で、人とも動物とも思えないような咆哮が聞こえてくる。
「ユキさん……!」
「そんなこと、言ってられるワケないじゃない!」
壁に身を打ち付ける音、何かを投げつけた音が響いては、イーターは哂った。
『なんで?』
「え……」
『仲間でもないのに、なんで?って、聞いてるんだけど』
一歩、一歩。軽やかな足取りで近づくと、トンと花村の肩を押した。
『そうだよな?だって、俺はただの助っ人なんだから。どうなろうがどう潰れようが、アンタ達に関係なんてない』
「っ……」
『……俺が、桜木ユキがアンタ等と何も変わんねえ、それより不完全な人間ってこと、いつから忘れてた?』
笑みは消え、また冷たい声に戻る。
『アイツは、感情を7の時から失っている。つまりな、複雑な感情も、死に対するそんな自分の無意識下の感情の制御の仕方もわかってない。だからアイツは、うまい感情の吐き出し方も知らねえんだよ』
黒ウサギはスウと息を吸い込み、フワリと表情を和らげた。
それはどこか苦しげな表情で、口から吐かれた言葉は冷たさを伴い響き渡る。
『「もし大切な人が殺されて、その殺した人が憎くて恨むのが当たり前なら、俺は俺自身を恨んで殺してしまった方が正しかったのかな」』
それは当たり前で、……当たり前の、苦しみで。
『「俺は父さんと母さんを殺した。沢山の人の人格を、シャドウを食った。……この罪は、一生かけても拭えないんだろ?」』
優しいあの人だからこそ、俺達を認めてくれたあの人だからこそ、抱え込んで。
『「菜々子ちゃんが死んだのは、俺のせいだ。だから、だから俺が俺を殺さないと、……ねぇ、」』
そう、だろ?
『俺が、アイツが、強いと思った?んなわけねえだろ!ただ我慢して、我慢して、我慢して……!アンタ達に甘えるより前に、自分と同じ目に遭って欲しくない、同じ感情を持たせてはいけないって、ずっと周りのことばっか気にしてさあ!』
『俺が何をしたんだよ、どうしてこんな事にしかなんねえんだよ、なんで俺が、感情の無いバケモノになんなきゃいけねぇんだよ……ッ!』
それが、”絶望”の本音。
彼は大きく息を吐いて、そしてゆらりと鎌を振り上げた。
『……こいよ。前は俺はただちょっとの感情と記憶を差し出しただけだからな。……一度アンタ達のペルソナを食わなきゃ気がすまねえ』
「え……」
『言っておくが、俺はクロッカーやハッターみてえにできてねえからな?アルカナは『死神』。さあ、全員のペルソナを食ったらどんな味がすんだろうなあ!!!!!』
ズドン。
鎌が振り落とされた音と、強烈で膨大な殺気。
背筋を凍らせるそれに、鳴上達は歯を震わせながら覚悟を決めるしかなかった。
やらなきゃ、殺される。
『咆哮!』