暗転
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「……そうだな。……そうだ。俺は、お前らにとって、”そういう存在”だったな。
………忘れてた。ごめん」
小さな、声だった。
部屋は静まり返り、ただ彼に視線が集まる。
彼は髪を掻き毟り、歪んだ顔のまま微笑んだ。
まるで、熱を出したあの日のように――
「ユキ、さ……」
「俺はただの助っ人だ。菜々子ちゃんとも、何の繋がりもない。
……どうして、忘れてたんだろう。ごめん」
なかまじゃ、なかったもんな。
どこから、かんちがいしていたんだろう。
「……俺、帰るから。……サヨナラ」
ユキはフラフラと俺達の間を抜けて離れ、姿も闇に包まれ見えなくなる。
「え、ユキ、さ、……ユキさん!!」
『うそつき』
追いかけようとすると、ドアから出ようとする鳴上達の前に立ちふさがるように、小さな子供がこちらを睨んでいた。
『おにいちゃたちの、うそつき。ユキ、しんじてたのに』
子供は赤い瞳に怒りを孕ませ、ぎゅっと自身の服を掴む。
『……もういい、ユキの事なんて気にしないで、ユキと同じ人殺しになっちゃえばいい!!』
その目は、深い深い怒りの底に、心配と絶望がぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。
『血の気の引くかんかくも、体じゅうをまとう”れいき”も、一生ぬぐえないざいあくかんも!
ずっとずっとせおえばいい!ユキと同じみちにすすみたいなら、かってにして!!』
―ユキと同じ、つめたく暗いみちに来てほしくなかった。
―ずっとずっと、明るいみちを、すすんでほしかった、それだけだったのに。
くしゃりと顔は歪んで、子供は叫ぶ。
『返して!』
「え……」
『返して!おにいちゃはもう、いらないんでしょ!だからそれはユキのなの!返して!』
鳴上に対して、何度も何度も小さな手で何かを取ろうとする。
『ユキはもう、おにいちゃたちに助けてほしいなんて言わないもん!!!ぜったいに、ぜったいに言わないもん!!』
『おにいちゃたちなんて、だいっきらい!!!』
子供は鳴上の持っていた懐中時計を奪い取り、走り去った。
慌てて追いかけたが、彼はフッと、消えてしまった。
「……嘘つき、だって」
天城がふと、放心したように呟く。
がくりと膝からくずおれ、両手で顔を覆った。
「なんで、こうなっちゃったんだろ………アタシ達、何を間違えちゃったんだろ……?」
「菜々子ちゃんが死んじゃって、……ユキさんも、いなくなっちゃって。
なにやってんだろ……バカみたい」
「……どうしたら、いいんスかね、これから……」
「……今日はもう、解散にしよう」
そう、言うしかなかった。
大事な人を喪ったこと。
殺人をしようとしたこと。
止めた人を、傷つけてしまったこと。
何もかもが一瞬で、何もかもを失って。
『おまえはその正しさと優しさ故に、いつか大切なものを失う。
自らの命を賭しても足りないほどの、重要なものを』
そう言われた時のあの人の顔を、思い出せなかった。
………忘れてた。ごめん」
小さな、声だった。
部屋は静まり返り、ただ彼に視線が集まる。
彼は髪を掻き毟り、歪んだ顔のまま微笑んだ。
まるで、熱を出したあの日のように――
「ユキ、さ……」
「俺はただの助っ人だ。菜々子ちゃんとも、何の繋がりもない。
……どうして、忘れてたんだろう。ごめん」
なかまじゃ、なかったもんな。
どこから、かんちがいしていたんだろう。
「……俺、帰るから。……サヨナラ」
ユキはフラフラと俺達の間を抜けて離れ、姿も闇に包まれ見えなくなる。
「え、ユキ、さ、……ユキさん!!」
『うそつき』
追いかけようとすると、ドアから出ようとする鳴上達の前に立ちふさがるように、小さな子供がこちらを睨んでいた。
『おにいちゃたちの、うそつき。ユキ、しんじてたのに』
子供は赤い瞳に怒りを孕ませ、ぎゅっと自身の服を掴む。
『……もういい、ユキの事なんて気にしないで、ユキと同じ人殺しになっちゃえばいい!!』
その目は、深い深い怒りの底に、心配と絶望がぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。
『血の気の引くかんかくも、体じゅうをまとう”れいき”も、一生ぬぐえないざいあくかんも!
ずっとずっとせおえばいい!ユキと同じみちにすすみたいなら、かってにして!!』
―ユキと同じ、つめたく暗いみちに来てほしくなかった。
―ずっとずっと、明るいみちを、すすんでほしかった、それだけだったのに。
くしゃりと顔は歪んで、子供は叫ぶ。
『返して!』
「え……」
『返して!おにいちゃはもう、いらないんでしょ!だからそれはユキのなの!返して!』
鳴上に対して、何度も何度も小さな手で何かを取ろうとする。
『ユキはもう、おにいちゃたちに助けてほしいなんて言わないもん!!!ぜったいに、ぜったいに言わないもん!!』
『おにいちゃたちなんて、だいっきらい!!!』
子供は鳴上の持っていた懐中時計を奪い取り、走り去った。
慌てて追いかけたが、彼はフッと、消えてしまった。
「……嘘つき、だって」
天城がふと、放心したように呟く。
がくりと膝からくずおれ、両手で顔を覆った。
「なんで、こうなっちゃったんだろ………アタシ達、何を間違えちゃったんだろ……?」
「菜々子ちゃんが死んじゃって、……ユキさんも、いなくなっちゃって。
なにやってんだろ……バカみたい」
「……どうしたら、いいんスかね、これから……」
「……今日はもう、解散にしよう」
そう、言うしかなかった。
大事な人を喪ったこと。
殺人をしようとしたこと。
止めた人を、傷つけてしまったこと。
何もかもが一瞬で、何もかもを失って。
『おまえはその正しさと優しさ故に、いつか大切なものを失う。
自らの命を賭しても足りないほどの、重要なものを』
そう言われた時のあの人の顔を、思い出せなかった。