曇天
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ナナチャン……みんなみたくもうひとりの自分ちゃんと出なかった……
その上アイツの暴走にも巻き込まれて……大丈夫だといいんだけど……」
病院の廊下。桜木以外全員が揃ったところで、クマがぽそりと呟く。
廊下はひどく静かで、その声さえもはっきりと聞こえた。
「普通のお医者さんに治せるのかな……」
「けど……こっから先はあたしたちにはどうにもできないよ……」
マヨナカテレビでの消耗。意識不明。
どうにもならない事実だけが、そこにはあって。
「生田目という”運送屋”の存在……菜々子ちゃんが狙われる可能性……
いつも思う……もっとマシな推理ができてもよかったはずなのに……!
そうすれば菜々子ちゃんはこんな目にあわずに済んだのに……」
白鐘が唇を噛みしめる。花村はそれを見て、少し躊躇ってから声を出した。
「んなの……俺だって同じだ。
いや、みんな同じ気持ちなはずだ。
もう気にするな」
「でも……でも僕は……」
「ハァ……やめだ。
花村先輩の言うとおりだ。弱音はその辺にしようぜ……」
そう言ったのは巽だ。
「オレらがやんなきゃならねえのはここでピーチク言ってることか?
テメェを責めて傷舐め合って……そんであの子のためんなんのか?」
「完二君……」
「ユキさんだって、まだマヨナカテレビ残って方法探ってくれてんだ。
……今は信じるしかねえだろ。過ぎた事言ってんな。
シャキッとしろ……直斗!」
その言葉に白鐘はハッとした顔になり、自分に対して苦笑した。
「ごめん……キミの言う通りだ」
「悪ぃのは全部生田目の野郎だ……アイツはキッチリふん縛ったろ?
それに菜々子ちゃんだって救い損ねたワケじゃねえ」
フンと息を鳴らす。クマがそれに反応して、勢いよく手を挙げた。
「ナナチャン早く元気になるように、クマ毎日お見舞いに来るクマ!」
「それが今の私らにできること……だね。
何よ……完二のくせにちょっとだけカッコイイじゃない」
空気が少しだけ、軽くなる。
「あれ……キミたちまだいたの?」
足立がゆっくりと奥から歩いてきて、呆れたような驚いたような声を出した。
「足立さん。あの……何かわかったことは……」
「堂島さんが今担当の先生と話してるけど、詳しいことはいろいろ検査してみないと……」
肩を竦め、そして頭を搔きながら続ける。
「菜々子ちゃんもだけど容疑者がなあ……
聴取はじめられるのいつになるんだか」
それは、聞かれる事を前提としていないぼやき。
けれどこの空間には、強く響いて耳に届く。
「ま、とにかくもう遅いから早く帰りな。
キミらまで倒れちゃダメだよ」
「そうだな……
今日んとこは俺たちも帰るか……」
一人、また一人と立ち上がり、帰り支度をしていく。
そんな中花村は、鳴上に近づいて口を開いた。
「……あの人さあ」
あの人。その対象は、分かり切っている。
「今回の事も、分かってたのかな」
「……可能性の一つとしては、あったんじゃないか?」
鳴上は、そう答えるしかない。
あの人は、桜木は、いつだって先の先の事まで考えているような人物だから。
「そうだよな。いや、それにしては、いつもより何も言わなかったから気になってさ」
花村が下を向く。そしてもう一度顔を上げて、念を押した。
「……あの人、大丈夫って言ってたんだよな、悠?」
鳴上も、目をそらさずに頷く。
「……なら、大丈夫だよな。うん」
ワリィ。そう言って、花村はパッと笑顔を見せた。
「菜々子ちゃんは元気んなって戻ってくる。
だから俺らも暗くなんないでおこう」
「うん、そうだよね!」
「菜々子ちゃんの退院のお祝い何にしよっか?」
「早ッ!……早くね?」
「ジュネス貸し切りパーティーとか?」
「スーパー貸し切るって意味わかんなくね?」
病院内では小声で、外では大きな声で会話しながら、鳴上達は歩いた。
その上アイツの暴走にも巻き込まれて……大丈夫だといいんだけど……」
病院の廊下。桜木以外全員が揃ったところで、クマがぽそりと呟く。
廊下はひどく静かで、その声さえもはっきりと聞こえた。
「普通のお医者さんに治せるのかな……」
「けど……こっから先はあたしたちにはどうにもできないよ……」
マヨナカテレビでの消耗。意識不明。
どうにもならない事実だけが、そこにはあって。
「生田目という”運送屋”の存在……菜々子ちゃんが狙われる可能性……
いつも思う……もっとマシな推理ができてもよかったはずなのに……!
そうすれば菜々子ちゃんはこんな目にあわずに済んだのに……」
白鐘が唇を噛みしめる。花村はそれを見て、少し躊躇ってから声を出した。
「んなの……俺だって同じだ。
いや、みんな同じ気持ちなはずだ。
もう気にするな」
「でも……でも僕は……」
「ハァ……やめだ。
花村先輩の言うとおりだ。弱音はその辺にしようぜ……」
そう言ったのは巽だ。
「オレらがやんなきゃならねえのはここでピーチク言ってることか?
テメェを責めて傷舐め合って……そんであの子のためんなんのか?」
「完二君……」
「ユキさんだって、まだマヨナカテレビ残って方法探ってくれてんだ。
……今は信じるしかねえだろ。過ぎた事言ってんな。
シャキッとしろ……直斗!」
その言葉に白鐘はハッとした顔になり、自分に対して苦笑した。
「ごめん……キミの言う通りだ」
「悪ぃのは全部生田目の野郎だ……アイツはキッチリふん縛ったろ?
それに菜々子ちゃんだって救い損ねたワケじゃねえ」
フンと息を鳴らす。クマがそれに反応して、勢いよく手を挙げた。
「ナナチャン早く元気になるように、クマ毎日お見舞いに来るクマ!」
「それが今の私らにできること……だね。
何よ……完二のくせにちょっとだけカッコイイじゃない」
空気が少しだけ、軽くなる。
「あれ……キミたちまだいたの?」
足立がゆっくりと奥から歩いてきて、呆れたような驚いたような声を出した。
「足立さん。あの……何かわかったことは……」
「堂島さんが今担当の先生と話してるけど、詳しいことはいろいろ検査してみないと……」
肩を竦め、そして頭を搔きながら続ける。
「菜々子ちゃんもだけど容疑者がなあ……
聴取はじめられるのいつになるんだか」
それは、聞かれる事を前提としていないぼやき。
けれどこの空間には、強く響いて耳に届く。
「ま、とにかくもう遅いから早く帰りな。
キミらまで倒れちゃダメだよ」
「そうだな……
今日んとこは俺たちも帰るか……」
一人、また一人と立ち上がり、帰り支度をしていく。
そんな中花村は、鳴上に近づいて口を開いた。
「……あの人さあ」
あの人。その対象は、分かり切っている。
「今回の事も、分かってたのかな」
「……可能性の一つとしては、あったんじゃないか?」
鳴上は、そう答えるしかない。
あの人は、桜木は、いつだって先の先の事まで考えているような人物だから。
「そうだよな。いや、それにしては、いつもより何も言わなかったから気になってさ」
花村が下を向く。そしてもう一度顔を上げて、念を押した。
「……あの人、大丈夫って言ってたんだよな、悠?」
鳴上も、目をそらさずに頷く。
「……なら、大丈夫だよな。うん」
ワリィ。そう言って、花村はパッと笑顔を見せた。
「菜々子ちゃんは元気んなって戻ってくる。
だから俺らも暗くなんないでおこう」
「うん、そうだよね!」
「菜々子ちゃんの退院のお祝い何にしよっか?」
「早ッ!……早くね?」
「ジュネス貸し切りパーティーとか?」
「スーパー貸し切るって意味わかんなくね?」
病院内では小声で、外では大きな声で会話しながら、鳴上達は歩いた。