画面向こうの世界
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やや古ぼけた一軒家の中に入ればコンタクトを取ってさっさと家具を居間に置き、適当に中を探索する。
きしむ音は僅かにするもののそこまで心配するようなものでもないようで、一通り確認しまた居間に戻ってきた。
冷蔵庫をつなぎ食料を放り入れ机を組み立てていると、ふと視界に何か黒いものが入って顔を上げる。
「……?大きい、テレビ……?」
目の前に、ジュネスでも売っていたような大きなテレビが一台、ビデオケースの上に置いてあった。
前の住人の、置いていったものか。
組み立て終わった机を置き、電源は付くのかと弄り始める。
そしてふとディスプレイに手を触れると、手は固定されることなくするりと”テレビの中へ”入っていった。
「うわ……」
何処に、繋がっているのだろう。そう考えるよりも先にずぶずぶと腕は中へと入り、あっという間に全身がテレビ向こうへと収まった。
「……此処は……」
白い壁で覆われた、何もない空間。
そこに立ったユキはくるりと周りを見回し、首を傾げた。
(テレビの向こう……誰かに見られる、対だけど違の鏡……?空間的に、どう処理するべきなんだろう)
そう考えながら足を進めていると、「ちょっと、そこの人~!」と何かが近づいてくる。
「うわっ……」
「わぷっ」
ユキはその突進してきた物体を押さえ込み、まじまじとそれを見た。
奇妙な、丸い、生き物というよりぬいぐるみに近いそれは、キッと彼を睨んで怒鳴った。
「何処から来たクマ!?早くこっからアッチに帰るクマよ!」
「……クマ?」
「クマはクマだクマ!ココはボクがずっと住んでるのに、最近誰かがココに人を放りこむから迷惑してるクマよ!もしかして、君がその犯人クマか!?」
「クマだクマ?…クマって名前なの?」
ユキはしゃがんで、その生き物に目を合わせる。
「それで、人が最近放り込まれてるんだね?自主的に入ってきたんじゃなく、放り込まれた」
「そうクマ!話が分かるみたいで安心クマ!犯人じゃないなら、証拠を見せるクマ!!」
クマがジタバタと体を揺らしながら言うと、ユキは首をかしげて、眉を寄せた。
「……証拠というか……まず記憶が無いから、もしかしたら俺犯人かもしれないし」
「なんですとー!!」
クマは目を丸くし、まじまじと彼を見つめる。
真っ赤な、ただクマを映すガラスのような瞳。整った顔は嘘をついているのか以前に、ちゃんと人間であるのかさえ不安になるような表情をともしていた。
「…お名前、なんていうクマか?」
「桜木ユキ」
表情にそぐわない、無機質ではない落ち着いた声が返ってくる。
それにクマは息を漏らして、「ひとまず、信じるクマ」と頷いた。
「じゃあ、すぐ帰るクマね?」
「……それより、この黒いの、倒したほうよくない?」
ユキがそういって指差したのは、彼らを取り巻くように漂っていた沢山のシャドウ。
クマはまた目を丸くして、「シャドウが見えるクマか?」と訊ねる。
「霧で、もわわ~ってしてないクマ?」
「見える、っていうか……そもそも、霧なんてあるのか?」
ユキは首を傾げて辺りを見回した。
見えているのは大量の浮く舌だけだ。
さて、と自分の状況を確認していると、ふと自分の手元が淡く光っていた。
『汝には、我が何者に見える?』
声が、その光から聞こえてくる。
その光は人の姿を模していて、ユキは首を傾げた。
時計兎のような、焦りはない。
ハンプのように、解を持ってはいない。
……寧ろ、問いかける者……
「……帽子屋…」
ポツリ呟くと、それはすぐに、燕尾服を着シルクハットを被った男性の姿に変わる。
『我は汝、汝は我、我は汝の”記憶なき湖”より生まれし問者、ハッターなり』
「…ハッター、君、これ倒せる?」
『汝が願えば、我、その願いを叶えよう』
帽子屋はニヤリと笑みを浮かべたまま、そう答えた。
じゃあ。とユキは手を開いて、そこに形成されたカードを静かに包み込む。
そしてゆっくりと、口を開いた。
「ハッター、『メギドラオン』」
ドゴオと大きな破壊音がし、帽子屋が手に持っていたティーカップを巨大化させて、舌に向かって投げつけたのだと遅れて気づく。
舌はあっという間に消滅し、また静けさが広がる。
帽子屋はこれでいいかとばかりに微笑むと、またカードの中に消えていった。
「ほえー……ユキサン、すごいクマ!あんなに沢山のシャドウを倒すなんて、中々クマね!」
「んー…なんか、体が覚えてるのかな?ま、倒せたんならいいや」
ユキは体を伸ばして、「じゃあ、俺戻らないと」と肩を竦める。
「ねえクマ君、戻る方法知らない?」
「知ってるクマよ!ほらよっと!」
クマは地面を何回か叩き、そこに幾つものテレビを出現させた。
「この中に入れば戻れるクマ!」
「そう。じゃあ、またね」
彼がそう言ってテレビに入ろうとすると、「また?」とクマが首を傾げる。
「また、来てくれるクマ?」
「?まあ、ちょっと調べたい事もあるし……それにシャドウ倒さないと、住んでる場所として不安じゃない?」
あっさりと。
彼の言った言葉に、クマは目を丸くした。
「……助けてくれるクマ?クマ、ユキサンを疑ったりしたクマよ?」
「………?」
ユキは首を傾げ、「よくわかんないけど」と口を開く。
「疑われたら助けないとか、嫌われたら助けないとか……正直、どうでもいいんだ。
俺がしたいことを勝手にするだけだし」
「ほえー……ユキサンは、かっこいいクマねー……惚れ惚れしちゃうクマよー……」
「?」
「クマ、もしユキサンが女だったらここでプロポーズしてたクマ!
いや、クマが女になればワンチャン……?」
「クマ君、俺帰っていい?」
そろそろ帰らないと、傘返せないんだけど。
そう告げるとクマは「およよ……それなら仕方ないクマね……」と手で涙を拭う仕草をした。
「じゃあ、またねクマ」
「うん、またね」
ユキは手を振りかえして、そしてテレビの向こうへと戻っていった。
きしむ音は僅かにするもののそこまで心配するようなものでもないようで、一通り確認しまた居間に戻ってきた。
冷蔵庫をつなぎ食料を放り入れ机を組み立てていると、ふと視界に何か黒いものが入って顔を上げる。
「……?大きい、テレビ……?」
目の前に、ジュネスでも売っていたような大きなテレビが一台、ビデオケースの上に置いてあった。
前の住人の、置いていったものか。
組み立て終わった机を置き、電源は付くのかと弄り始める。
そしてふとディスプレイに手を触れると、手は固定されることなくするりと”テレビの中へ”入っていった。
「うわ……」
何処に、繋がっているのだろう。そう考えるよりも先にずぶずぶと腕は中へと入り、あっという間に全身がテレビ向こうへと収まった。
「……此処は……」
白い壁で覆われた、何もない空間。
そこに立ったユキはくるりと周りを見回し、首を傾げた。
(テレビの向こう……誰かに見られる、対だけど違の鏡……?空間的に、どう処理するべきなんだろう)
そう考えながら足を進めていると、「ちょっと、そこの人~!」と何かが近づいてくる。
「うわっ……」
「わぷっ」
ユキはその突進してきた物体を押さえ込み、まじまじとそれを見た。
奇妙な、丸い、生き物というよりぬいぐるみに近いそれは、キッと彼を睨んで怒鳴った。
「何処から来たクマ!?早くこっからアッチに帰るクマよ!」
「……クマ?」
「クマはクマだクマ!ココはボクがずっと住んでるのに、最近誰かがココに人を放りこむから迷惑してるクマよ!もしかして、君がその犯人クマか!?」
「クマだクマ?…クマって名前なの?」
ユキはしゃがんで、その生き物に目を合わせる。
「それで、人が最近放り込まれてるんだね?自主的に入ってきたんじゃなく、放り込まれた」
「そうクマ!話が分かるみたいで安心クマ!犯人じゃないなら、証拠を見せるクマ!!」
クマがジタバタと体を揺らしながら言うと、ユキは首をかしげて、眉を寄せた。
「……証拠というか……まず記憶が無いから、もしかしたら俺犯人かもしれないし」
「なんですとー!!」
クマは目を丸くし、まじまじと彼を見つめる。
真っ赤な、ただクマを映すガラスのような瞳。整った顔は嘘をついているのか以前に、ちゃんと人間であるのかさえ不安になるような表情をともしていた。
「…お名前、なんていうクマか?」
「桜木ユキ」
表情にそぐわない、無機質ではない落ち着いた声が返ってくる。
それにクマは息を漏らして、「ひとまず、信じるクマ」と頷いた。
「じゃあ、すぐ帰るクマね?」
「……それより、この黒いの、倒したほうよくない?」
ユキがそういって指差したのは、彼らを取り巻くように漂っていた沢山のシャドウ。
クマはまた目を丸くして、「シャドウが見えるクマか?」と訊ねる。
「霧で、もわわ~ってしてないクマ?」
「見える、っていうか……そもそも、霧なんてあるのか?」
ユキは首を傾げて辺りを見回した。
見えているのは大量の浮く舌だけだ。
さて、と自分の状況を確認していると、ふと自分の手元が淡く光っていた。
『汝には、我が何者に見える?』
声が、その光から聞こえてくる。
その光は人の姿を模していて、ユキは首を傾げた。
時計兎のような、焦りはない。
ハンプのように、解を持ってはいない。
……寧ろ、問いかける者……
「……帽子屋…」
ポツリ呟くと、それはすぐに、燕尾服を着シルクハットを被った男性の姿に変わる。
『我は汝、汝は我、我は汝の”記憶なき湖”より生まれし問者、ハッターなり』
「…ハッター、君、これ倒せる?」
『汝が願えば、我、その願いを叶えよう』
帽子屋はニヤリと笑みを浮かべたまま、そう答えた。
じゃあ。とユキは手を開いて、そこに形成されたカードを静かに包み込む。
そしてゆっくりと、口を開いた。
「ハッター、『メギドラオン』」
ドゴオと大きな破壊音がし、帽子屋が手に持っていたティーカップを巨大化させて、舌に向かって投げつけたのだと遅れて気づく。
舌はあっという間に消滅し、また静けさが広がる。
帽子屋はこれでいいかとばかりに微笑むと、またカードの中に消えていった。
「ほえー……ユキサン、すごいクマ!あんなに沢山のシャドウを倒すなんて、中々クマね!」
「んー…なんか、体が覚えてるのかな?ま、倒せたんならいいや」
ユキは体を伸ばして、「じゃあ、俺戻らないと」と肩を竦める。
「ねえクマ君、戻る方法知らない?」
「知ってるクマよ!ほらよっと!」
クマは地面を何回か叩き、そこに幾つものテレビを出現させた。
「この中に入れば戻れるクマ!」
「そう。じゃあ、またね」
彼がそう言ってテレビに入ろうとすると、「また?」とクマが首を傾げる。
「また、来てくれるクマ?」
「?まあ、ちょっと調べたい事もあるし……それにシャドウ倒さないと、住んでる場所として不安じゃない?」
あっさりと。
彼の言った言葉に、クマは目を丸くした。
「……助けてくれるクマ?クマ、ユキサンを疑ったりしたクマよ?」
「………?」
ユキは首を傾げ、「よくわかんないけど」と口を開く。
「疑われたら助けないとか、嫌われたら助けないとか……正直、どうでもいいんだ。
俺がしたいことを勝手にするだけだし」
「ほえー……ユキサンは、かっこいいクマねー……惚れ惚れしちゃうクマよー……」
「?」
「クマ、もしユキサンが女だったらここでプロポーズしてたクマ!
いや、クマが女になればワンチャン……?」
「クマ君、俺帰っていい?」
そろそろ帰らないと、傘返せないんだけど。
そう告げるとクマは「およよ……それなら仕方ないクマね……」と手で涙を拭う仕草をした。
「じゃあ、またねクマ」
「うん、またね」
ユキは手を振りかえして、そしてテレビの向こうへと戻っていった。