早朝の焦り
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
菜々子ちゃんの授業参観の日付が決まって、しばらくして。
俺とユキさんは、取調室にいた。
宛先不明の、同じような手紙が来ていたのだ。
「コンドコソ
ヤメナイトダイジナ
ヒトガイレラレテ
コロサレルヨ」
「どういう事か、説明してもらおうか」
目の前に堂島さんが座り、後ろのドア近くに足立さんが立っている中で、そう尋ねられる。
ユキさんはその言葉を聞くと、淡々と答えた。
「信じてもらえないから、俺は喋らないよ」
それは、彼の中では既に決意されたものであった。
どうせ、という弱さもない、ただただ、決定事項としての言葉。
「話はそれだけ?俺、やることあるんだけど」
「、待て。信じてもらえないって、一体お前は……」
「信じてもらえない事をしてる。俺の勝手な自己満足の為に。
……悠は話したそうだし、聞くならそっちに聞いたら?」
そう言われて、堂島さんの視線がユキさんからこちらに移る。
俺は覚悟を決めて、これまでの話をし始めた。
テレビの中に、マヨナカテレビという空間があったこと。
そこで、人を助けてきたこと。
話している間、ユキさんは無言で座っていた。
出会った時より伸びた背はまっすぐ正されていて、腰にまで届きそうな髪は後ろに一本に結ばれて。
そういえば、最近、皆と一緒の時にユキさんにあまり会っていない。
来てほしいと頼めば来てくれるが、それも今までより少ないような。
(俺は、俺達は、この人の何なのだろう)
仲間ではない、助っ人だと言われ続けて。
壁は感じていた。でも、季節が過ぎるにつれて段々厚くなっているような気がする。
チラリと横目で見ても、彼の表情は変わらない。
―推理している事って何だ?犯人はもう分かってるのか?
何も教えてくれない。
何も相談してはくれない。
感情が少しは戻っているはずなのに、記憶だって戻ってるはずなのに。
それでも、全然今までと変わってなくて。
(……どうして)
どうして、何故、そんな言葉が、静かな空間に沢山浮かぶ。
だから、ユキさんが熱を出した時の話はできなかった。
何も知らないこの人の話を、できなかった。
「……以上、です」
「……」
「桜木、訂正はあるか?」
「特にないよ。俺は別行動も多かったし、その間の話は悠の言っている通りなんだろうなとしか」
「別行動?」
「うん。言わないけど」
「……」
本当に、頑として言う気はないようだ。
堂島さんは深くため息をつき、眉間に皺を寄せた。
「……少し、考えさせてくれ」
絞りだしたような声だった。
信じてもらえたかは、分からない。それでも、否定されなかっただけマシだろう。
「悠。携帯は預かる。今日はここに泊まっていけ」
「堂島さん……」
「桜木も、」
「帰る」
ユキさんは言葉を遮って立ち上がり、荷物を肩にさげる。
「遼太郎さん。再度言うけど、俺は信じてもらう必要がない」
「……」
「これで俺が疑われようと、悠が疑われようと。俺は俺のやるべきことを全うするだけだ」
いつも通りの、彼の表情。
そして俺に顔を近づけて、耳打ちした。
「もし何かあったら連絡して。俺はしばらく、マヨナカテレビにいることにする」
「……はい」
「おい、桜木……」
「おやすみなさい」
有無を言わさない声で、扉を開けて去っていく。
「ど、堂島さん……」
「……足立、悠を案内してやれ」
「はぁい……ったく、大丈夫かな……」
足立さんは頭をかいて、へらりと笑ってからこちらを向いた。
「じゃ、行こうか、鳴上君」
「はい」
その日の、深夜。
マヨナカテレビには、見覚えのある少女の姿が映り。
白鐘が向かった先―堂島宅で、その少女、堂島菜々子の失踪が確認された。
俺とユキさんは、取調室にいた。
宛先不明の、同じような手紙が来ていたのだ。
「コンドコソ
ヤメナイトダイジナ
ヒトガイレラレテ
コロサレルヨ」
「どういう事か、説明してもらおうか」
目の前に堂島さんが座り、後ろのドア近くに足立さんが立っている中で、そう尋ねられる。
ユキさんはその言葉を聞くと、淡々と答えた。
「信じてもらえないから、俺は喋らないよ」
それは、彼の中では既に決意されたものであった。
どうせ、という弱さもない、ただただ、決定事項としての言葉。
「話はそれだけ?俺、やることあるんだけど」
「、待て。信じてもらえないって、一体お前は……」
「信じてもらえない事をしてる。俺の勝手な自己満足の為に。
……悠は話したそうだし、聞くならそっちに聞いたら?」
そう言われて、堂島さんの視線がユキさんからこちらに移る。
俺は覚悟を決めて、これまでの話をし始めた。
テレビの中に、マヨナカテレビという空間があったこと。
そこで、人を助けてきたこと。
話している間、ユキさんは無言で座っていた。
出会った時より伸びた背はまっすぐ正されていて、腰にまで届きそうな髪は後ろに一本に結ばれて。
そういえば、最近、皆と一緒の時にユキさんにあまり会っていない。
来てほしいと頼めば来てくれるが、それも今までより少ないような。
(俺は、俺達は、この人の何なのだろう)
仲間ではない、助っ人だと言われ続けて。
壁は感じていた。でも、季節が過ぎるにつれて段々厚くなっているような気がする。
チラリと横目で見ても、彼の表情は変わらない。
―推理している事って何だ?犯人はもう分かってるのか?
何も教えてくれない。
何も相談してはくれない。
感情が少しは戻っているはずなのに、記憶だって戻ってるはずなのに。
それでも、全然今までと変わってなくて。
(……どうして)
どうして、何故、そんな言葉が、静かな空間に沢山浮かぶ。
だから、ユキさんが熱を出した時の話はできなかった。
何も知らないこの人の話を、できなかった。
「……以上、です」
「……」
「桜木、訂正はあるか?」
「特にないよ。俺は別行動も多かったし、その間の話は悠の言っている通りなんだろうなとしか」
「別行動?」
「うん。言わないけど」
「……」
本当に、頑として言う気はないようだ。
堂島さんは深くため息をつき、眉間に皺を寄せた。
「……少し、考えさせてくれ」
絞りだしたような声だった。
信じてもらえたかは、分からない。それでも、否定されなかっただけマシだろう。
「悠。携帯は預かる。今日はここに泊まっていけ」
「堂島さん……」
「桜木も、」
「帰る」
ユキさんは言葉を遮って立ち上がり、荷物を肩にさげる。
「遼太郎さん。再度言うけど、俺は信じてもらう必要がない」
「……」
「これで俺が疑われようと、悠が疑われようと。俺は俺のやるべきことを全うするだけだ」
いつも通りの、彼の表情。
そして俺に顔を近づけて、耳打ちした。
「もし何かあったら連絡して。俺はしばらく、マヨナカテレビにいることにする」
「……はい」
「おい、桜木……」
「おやすみなさい」
有無を言わさない声で、扉を開けて去っていく。
「ど、堂島さん……」
「……足立、悠を案内してやれ」
「はぁい……ったく、大丈夫かな……」
足立さんは頭をかいて、へらりと笑ってからこちらを向いた。
「じゃ、行こうか、鳴上君」
「はい」
その日の、深夜。
マヨナカテレビには、見覚えのある少女の姿が映り。
白鐘が向かった先―堂島宅で、その少女、堂島菜々子の失踪が確認された。