画面向こうの世界
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布団、机、飲み物しか入れない小さな冷蔵庫、生活用品に、今朝使った分より少し多めの食材。
自分の分は飴と、お茶を数本。
それだけを目的としてジュネスに入り、さっさと用事を済ませていく。
「只今、一人暮らしキャンペーンでして、ローンが……」
「すみません、現金払いでお願いします」
「え」
家具や携帯は即払いでいいと言うと何故か定価より安く手に入り、家具と布団は背中に軽々と担いだ。
両手には食材と生活用品の入ったレジ袋。傘を手の甲に乗せピエロのように安定させて歩いていると、丁度死体を見かけた通りに入る。
そこにはパトカーと警官がいて、自分を見て怪訝そうな目をする。
そのうち一人は、俺を見て驚いたように近づいてきた。
「遼太郎さん」
「ユキ、お前、それどうしたんだ……?」
「家借りられたから、必要なもの揃えてた。そっちは、死体の捜査?」
訊ねれば、遼太郎の近くにいた警官らしき男が、「あ、その声!」と俺を指差す。
「君、今朝堂島さんとこの電話に出た子でしょ!うっわあ、髪しっろいねー、脱色?」
「おい、足立……」
「まあ、脱色ですね。先天的な病気のせいで、色素がおかしいらしいです」
「あ、そうなんだー、へー……。君、何歳?学生?」
「19です。明日からバイト生活なんで、フリーターです」
そう答えると、遼太郎の方を見、「弁当、食べた?」と訊ねた。
「ん?ああ……食ったよ。うまかった」
「そう」
「あー……あと、菜々子に今日は遅くなるって伝えておいてくれ」
「分かった」
「え、あれ、君が作ったの?いーなあ、堂島さんは……僕なんてさあ……」
「足立」
遼太郎が戒めるように足立という人を睨む。
足立は「ヒッ」とのどを鳴らして、肩を竦めた。
「……別に、あの弁当くらいでいいなら作れますけど」
時間なら無駄にあるし。そういうと足立は「本当かい!?」と期待に満ちた目で見てくる。
「おい、ユキ……おめえなあ……」
「やる事ないより、ある方が楽。……それとも、遼太郎さんも俺が毎日朝食と弁当作った方がいいか?」
「ああ?」
「お願いした方がいいですよ、堂島さん。お弁当作ると、食費が浮くっていうくらいだし!」
「足立、少し黙ってろ」
遼太郎は眉間に皺を寄せ、何かを天秤にかけるように思考をし始める。
「…給料は」
「え?」
「作ってもらうなら、給料がいるだろ。食費はこっちで負担できるが、それ以外で……」
「……」
どうやら、バイトのような形態にしたいらしい。
「一ヶ月500円でいいよ、100円でも変わらないけど」
「いや、それは……」
「そこまで本格的にするわけじゃないんだから必要ないって」
呆れたように目を細め、傘の柄を甲の上であそばせる。
足立は既にニコニコと百円玉を取り出していて、俺は右手にレジ袋を束ねてもって左手でそれを受け取った。
「じゃあ、足立さんの分は毎朝署の受付の人にでも渡しておきますね」
「頼んだよー。いやあ、これでキャベツ生活から開放される……」
「……キャベツ……」
じゃあ、キャベツは入れない方がいいのかもしれない。
そう考えながら、「じゃあ、俺行くから」と遼太郎に告げる。
「あ、ああ……そういや、お前もこの死体見たのか?」
「うん。それが?」
「この死体みて、思ったこととかあったら教えてほしいんだけど」
足立が眉を下げながら言った言葉に、俺は少し考えてから口を開いた。
「……刑死者みたいだな、と」
「けいししゃ?」
「吊るされた男っていう、タロットカードの通称。逆さに吊るされて、身動きの取れない状態で人の眼に曝される……まあ、本人も望んでそこにいるわけじゃないだろうけど」
「じゃあもし、これが刑死者をあらわすとして、何の意味があると思う?」
「意味……?」
足立の問いに首を傾げ、そして肩に背負っていた家具類を担ぎ直して言う。
「刑死者は、精神に囚われた者。だから……その人が刑死者なら、殺したのはその人自身だろ」
「へ?」
「自分の心を殺せるのは、結局は自分自身しかいない。まあ、現実だけじゃ自分でここまでお膳立てするのは不可能だろうし、刑死者説は現状無理があるな」
言い終わるともうすることもなくなったので、また袋を両手に持って歩き出した。
(早く帰らないと、食材が腐るし)
「ええっと……とても利発な子ですねえ?」
足立が、何とか会話を保とうと遼太郎に笑いかける。
遼太郎は肩をすくめて「ほんとだよ」と返した。
「お陰で、こっちの頭が追いつきゃしねえ……突拍子もない意見が出たってことは分かるがよ」
「僕は、とても面白い意見だと思うけどなあ……自分が自分を殺すって」
「アイツも言ってたろ、自分でここまでお膳立てすんのは無理だ。さっさと署に戻るぞ」
「はいはい……ったく、堂島さんも頭が固いなあ……」
ボソリと足立が呟いた言葉は、雨音にかき消され溶けていった。
自分の分は飴と、お茶を数本。
それだけを目的としてジュネスに入り、さっさと用事を済ませていく。
「只今、一人暮らしキャンペーンでして、ローンが……」
「すみません、現金払いでお願いします」
「え」
家具や携帯は即払いでいいと言うと何故か定価より安く手に入り、家具と布団は背中に軽々と担いだ。
両手には食材と生活用品の入ったレジ袋。傘を手の甲に乗せピエロのように安定させて歩いていると、丁度死体を見かけた通りに入る。
そこにはパトカーと警官がいて、自分を見て怪訝そうな目をする。
そのうち一人は、俺を見て驚いたように近づいてきた。
「遼太郎さん」
「ユキ、お前、それどうしたんだ……?」
「家借りられたから、必要なもの揃えてた。そっちは、死体の捜査?」
訊ねれば、遼太郎の近くにいた警官らしき男が、「あ、その声!」と俺を指差す。
「君、今朝堂島さんとこの電話に出た子でしょ!うっわあ、髪しっろいねー、脱色?」
「おい、足立……」
「まあ、脱色ですね。先天的な病気のせいで、色素がおかしいらしいです」
「あ、そうなんだー、へー……。君、何歳?学生?」
「19です。明日からバイト生活なんで、フリーターです」
そう答えると、遼太郎の方を見、「弁当、食べた?」と訊ねた。
「ん?ああ……食ったよ。うまかった」
「そう」
「あー……あと、菜々子に今日は遅くなるって伝えておいてくれ」
「分かった」
「え、あれ、君が作ったの?いーなあ、堂島さんは……僕なんてさあ……」
「足立」
遼太郎が戒めるように足立という人を睨む。
足立は「ヒッ」とのどを鳴らして、肩を竦めた。
「……別に、あの弁当くらいでいいなら作れますけど」
時間なら無駄にあるし。そういうと足立は「本当かい!?」と期待に満ちた目で見てくる。
「おい、ユキ……おめえなあ……」
「やる事ないより、ある方が楽。……それとも、遼太郎さんも俺が毎日朝食と弁当作った方がいいか?」
「ああ?」
「お願いした方がいいですよ、堂島さん。お弁当作ると、食費が浮くっていうくらいだし!」
「足立、少し黙ってろ」
遼太郎は眉間に皺を寄せ、何かを天秤にかけるように思考をし始める。
「…給料は」
「え?」
「作ってもらうなら、給料がいるだろ。食費はこっちで負担できるが、それ以外で……」
「……」
どうやら、バイトのような形態にしたいらしい。
「一ヶ月500円でいいよ、100円でも変わらないけど」
「いや、それは……」
「そこまで本格的にするわけじゃないんだから必要ないって」
呆れたように目を細め、傘の柄を甲の上であそばせる。
足立は既にニコニコと百円玉を取り出していて、俺は右手にレジ袋を束ねてもって左手でそれを受け取った。
「じゃあ、足立さんの分は毎朝署の受付の人にでも渡しておきますね」
「頼んだよー。いやあ、これでキャベツ生活から開放される……」
「……キャベツ……」
じゃあ、キャベツは入れない方がいいのかもしれない。
そう考えながら、「じゃあ、俺行くから」と遼太郎に告げる。
「あ、ああ……そういや、お前もこの死体見たのか?」
「うん。それが?」
「この死体みて、思ったこととかあったら教えてほしいんだけど」
足立が眉を下げながら言った言葉に、俺は少し考えてから口を開いた。
「……刑死者みたいだな、と」
「けいししゃ?」
「吊るされた男っていう、タロットカードの通称。逆さに吊るされて、身動きの取れない状態で人の眼に曝される……まあ、本人も望んでそこにいるわけじゃないだろうけど」
「じゃあもし、これが刑死者をあらわすとして、何の意味があると思う?」
「意味……?」
足立の問いに首を傾げ、そして肩に背負っていた家具類を担ぎ直して言う。
「刑死者は、精神に囚われた者。だから……その人が刑死者なら、殺したのはその人自身だろ」
「へ?」
「自分の心を殺せるのは、結局は自分自身しかいない。まあ、現実だけじゃ自分でここまでお膳立てするのは不可能だろうし、刑死者説は現状無理があるな」
言い終わるともうすることもなくなったので、また袋を両手に持って歩き出した。
(早く帰らないと、食材が腐るし)
「ええっと……とても利発な子ですねえ?」
足立が、何とか会話を保とうと遼太郎に笑いかける。
遼太郎は肩をすくめて「ほんとだよ」と返した。
「お陰で、こっちの頭が追いつきゃしねえ……突拍子もない意見が出たってことは分かるがよ」
「僕は、とても面白い意見だと思うけどなあ……自分が自分を殺すって」
「アイツも言ってたろ、自分でここまでお膳立てすんのは無理だ。さっさと署に戻るぞ」
「はいはい……ったく、堂島さんも頭が固いなあ……」
ボソリと足立が呟いた言葉は、雨音にかき消され溶けていった。