頼らない人
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ライブから数日後。
「”コレイジョウタスケルナ”?」
買い物から帰ってきたユキさんは、自分の持っていた手紙を覗いてそう口を開いた。
俺はその声に驚き、肩を大きく跳ねさせる。
「うわっ!?」
「あ、ごめん。直筆のものじゃなかったから、目に入って」
「い、いえ……」
「君宛?誰から?」
「誰からか、までは……」
自分の住所と名前が書かれた封筒に、一言だけかかれた紙。
”タスケルナ”なんて、心当たりは一つしかない。
彼は口元に指を置いてから、「まぁ、」と目を細めた。
「あまり気にしなくていいと思うよ」
「……そうですか?」
「文面的に、その人はこちらが助ける事に直接妨害や介入ができないんじゃないかな。
もしかしたら、今までの人達を『入れている』犯人かもしれないけど、そうだとしたら『見殺しにしろ』っていうことでしょ?
君達に出来る?」
そう聞かれ、俺は少し考えてから肩を竦めて首を振る。
「無理ですね」
「なら、多少心に留めておくだけでいい。皆にも一応共有しておいて。
……じゃあ、晩御飯作ろうか」
その少しだけ大きめに発せられた声に、菜々子は自室からひょっこりと顔を出して「ご飯、作るの?」と目を輝かせた。
「うん。今日は餃子だから、菜々子ちゃんも手伝ってくれる?悠も」
「わかった!じゃあ、手を洗ってくるね!」
「はい」
いつも通りの、三人での晩御飯作り。
ユキさんは手際よくメイン以外の料理を作って、菜々子と俺は餃子のタネを皮で包む作業をしていた。
真剣に包む菜々子を微笑ましく思いながら、ふと顔を上げユキさんに声を掛ける。
「ユキさん」
「何?」
「文化祭、来ないんですか?」
マヨナカテレビで会った時に、言っていた言葉。
彼は少しこちらに視線をやると、また手元に戻した。
「バイトがあるから。それに、……別段やることも無い」
「そう、ですか。俺達、ユキさんと回りたいって思ってたんですけど」
「……なんで?」
「なんで、って……」
そりゃあ、回る人が多い方が楽しいに決まってる。
そう言おうとして、ユキさんが手を止めこちらを見ている事に気づく。
出会った時の硝子のような澄んだ瞳は、変わらずそのままにこちらを映しているようで。
(……俺達といるの、実は楽しくなかったり……なんて)
普段から、はしゃいでいるのを離れて見ているだけ。
夏祭りだって自分から何かをする事はなく、修学旅行にも(学年が違うと言ってはいたけれど)クマと一緒に来なかった。
『俺は、ただの助っ人だから』
力を貸して欲しいと言った時に、彼が言っていた言葉。
俺は餃子の皮を手のひらに乗せたまま、つい考え込んでしまう。
(そういえば風邪を引いた時も、俺達を頼ってくれなかった。
…正直、考えたくはない。けれど……)
(俺達が勝手に楽しんでるだけで、もしユキさんが、何とも思ってなかったら…)
それは、とても悲しくて。
どうしようもなく厚く、寂しい壁だと、そう、思った。
「”コレイジョウタスケルナ”?」
買い物から帰ってきたユキさんは、自分の持っていた手紙を覗いてそう口を開いた。
俺はその声に驚き、肩を大きく跳ねさせる。
「うわっ!?」
「あ、ごめん。直筆のものじゃなかったから、目に入って」
「い、いえ……」
「君宛?誰から?」
「誰からか、までは……」
自分の住所と名前が書かれた封筒に、一言だけかかれた紙。
”タスケルナ”なんて、心当たりは一つしかない。
彼は口元に指を置いてから、「まぁ、」と目を細めた。
「あまり気にしなくていいと思うよ」
「……そうですか?」
「文面的に、その人はこちらが助ける事に直接妨害や介入ができないんじゃないかな。
もしかしたら、今までの人達を『入れている』犯人かもしれないけど、そうだとしたら『見殺しにしろ』っていうことでしょ?
君達に出来る?」
そう聞かれ、俺は少し考えてから肩を竦めて首を振る。
「無理ですね」
「なら、多少心に留めておくだけでいい。皆にも一応共有しておいて。
……じゃあ、晩御飯作ろうか」
その少しだけ大きめに発せられた声に、菜々子は自室からひょっこりと顔を出して「ご飯、作るの?」と目を輝かせた。
「うん。今日は餃子だから、菜々子ちゃんも手伝ってくれる?悠も」
「わかった!じゃあ、手を洗ってくるね!」
「はい」
いつも通りの、三人での晩御飯作り。
ユキさんは手際よくメイン以外の料理を作って、菜々子と俺は餃子のタネを皮で包む作業をしていた。
真剣に包む菜々子を微笑ましく思いながら、ふと顔を上げユキさんに声を掛ける。
「ユキさん」
「何?」
「文化祭、来ないんですか?」
マヨナカテレビで会った時に、言っていた言葉。
彼は少しこちらに視線をやると、また手元に戻した。
「バイトがあるから。それに、……別段やることも無い」
「そう、ですか。俺達、ユキさんと回りたいって思ってたんですけど」
「……なんで?」
「なんで、って……」
そりゃあ、回る人が多い方が楽しいに決まってる。
そう言おうとして、ユキさんが手を止めこちらを見ている事に気づく。
出会った時の硝子のような澄んだ瞳は、変わらずそのままにこちらを映しているようで。
(……俺達といるの、実は楽しくなかったり……なんて)
普段から、はしゃいでいるのを離れて見ているだけ。
夏祭りだって自分から何かをする事はなく、修学旅行にも(学年が違うと言ってはいたけれど)クマと一緒に来なかった。
『俺は、ただの助っ人だから』
力を貸して欲しいと言った時に、彼が言っていた言葉。
俺は餃子の皮を手のひらに乗せたまま、つい考え込んでしまう。
(そういえば風邪を引いた時も、俺達を頼ってくれなかった。
…正直、考えたくはない。けれど……)
(俺達が勝手に楽しんでるだけで、もしユキさんが、何とも思ってなかったら…)
それは、とても悲しくて。
どうしようもなく厚く、寂しい壁だと、そう、思った。