頼らない人
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赤蜻蛉が飛んで、つい、とそれを目で追う。
もうすっかり、日差しが優しくなったものだ。そう考えながらガラリと引き戸を開けると、丁度仕入れをしていた早紀さんの弟と目が合った。
夏がピークを迎える頃から着ているエプロンはすっかり馴染んでいて、品物を扱う手は随分と手馴れてきた。それもこれも、彼の努力の賜物なのだろう。
ふっと目を細めてから小さな味醂の瓶をひとつ取り、彼の前に出す。
「お会計、お願い」
「はい。……いつも、ありがとうございます」
「ん。ここのみりん、美味しいからつい」
彼の眉が、照れくさそうに八の字を描いた。
それを見て、少し考えてから首を傾げる。
「……疲れてる?」
空気が、ほんの少しの表情が、落ちていた気がした。
慣れてきた分の疲労が、そろそろ出てきたのかもしれない。
彼は呆気にとられてから、また眉を下げて笑う。
「……はは、少し」
「そう。あまり無理しすぎないでね」
倒れたら、心配だから。
呟くように言うと、気をつけます、と同じくらいの声で聞こえてきて。
俺は頷いてから、ガラス瓶が静かに輝く店を出た。
もうすっかり、日差しが優しくなったものだ。そう考えながらガラリと引き戸を開けると、丁度仕入れをしていた早紀さんの弟と目が合った。
夏がピークを迎える頃から着ているエプロンはすっかり馴染んでいて、品物を扱う手は随分と手馴れてきた。それもこれも、彼の努力の賜物なのだろう。
ふっと目を細めてから小さな味醂の瓶をひとつ取り、彼の前に出す。
「お会計、お願い」
「はい。……いつも、ありがとうございます」
「ん。ここのみりん、美味しいからつい」
彼の眉が、照れくさそうに八の字を描いた。
それを見て、少し考えてから首を傾げる。
「……疲れてる?」
空気が、ほんの少しの表情が、落ちていた気がした。
慣れてきた分の疲労が、そろそろ出てきたのかもしれない。
彼は呆気にとられてから、また眉を下げて笑う。
「……はは、少し」
「そう。あまり無理しすぎないでね」
倒れたら、心配だから。
呟くように言うと、気をつけます、と同じくらいの声で聞こえてきて。
俺は頷いてから、ガラス瓶が静かに輝く店を出た。