変わったこと、変わらないこと
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「……人間、老けるとそうなるんだな」
そんなどこか感心した声に、「ですね」以外の言葉が出ずに肩を落とす。
クマや花村など、男性陣がほぼ敵シャドウの攻撃を受け高齢化した今の状況は、混沌以外の何物でもないからだ。
白鐘のもとに辿り着いた後、いつも通りシャドウに話しかけに行ったユキさんは、白鐘が女性だったことも知っていたようで小声ではあるものの普通に会話をしていた。
「そっか。なら、仕方ないね」という声と同時に敵のシャドウ化が始まり、今に至ったわけなのだが……
「少し本人と話をしたいけど、攻撃が厳しいかも。受けるとペルソナも出なくなるのはきついね」
「そうですね……女子には特に受けさせたくないですから、回避に専念してもらっていますし……」
思わずため息をつくと、その体を「危ない!」とユキさんに引かれ尻餅をつく。
引いた反動でシャドウの攻撃が当たった彼を見、思わず「ユキさん!?」と叫んだ。
あの人がいないと、攻撃も厳しくなるのに。
というかあの人が老けるなんて、想像もできない!!
冷静なのか何なのか分からない頭で考えていれば、その物陰は小さく体を揺らした。
「あれ……ユキさん、なんか……」
黒いフード。白い髪を揺らす、小さな身体。
丸く大きな赤い瞳は、きょろりと辺りを見回す。
「?」
どう見ても、小さい。
高齢化じゃなく、幼少化したとでも言うべきか。
シャドウ自体も驚いたのか攻撃が止んだものの、衝撃的すぎて攻撃するどころじゃない。
彼はこちらに目もくれずシャドウを横切りとてとてと白鐘に近づいて、首を傾げた。
「…おねえちゃ、お名前、なんていうの?」
「え……」
「あ、そじゃなかった、えっと、はじめまして!おねえちゃのお名前、おしえてください!」
きらきらした瞳で、にこにこと。
この場でやる事なのか分からないそれに彼女も呆気に取られ、口を開く。
「……白鐘、直斗です」
「ユキはね、ユキって名前なの。んー…なおとおねえちゃは、かっこいいおねえちゃなんだね!」
「……かっこよく、なんて……それに、僕は女ですから……変、ですよ……」
「?」
俯いた白鐘に合わせるようにしゃがんで首をかしげると、少年は困ったような顔で聞き返した。
「ユキはぬいぐるみが好きだけど、おとこだよ?
ユキ、へんなの……?」
「い、いえ、そんな事は、」
「だったらおねえちゃだってぜんぜんおかしくないもん!
なんで好きなもので、なりたいものでへんって言われなきゃいけないの!?」
彼は小さな手で彼女の片手を包み、そして真っすぐ目を見て言葉を続ける。
「お母さん言ってたもん!好きなものは人それぞれで、ほかの人がへんとかむりだとか言う”けんり”なんてないって!
とくいなものも、なりたいものも、だれにもひていされるものじゃないって!」
「……!」
「じぶんがみとめなきゃ、ダメなの、じぶんが好きなこととか、なりたいもの、したいこと、ちゃんとみとめてあげなきゃ、ダメなのぉ……!!」
嗚咽が混じり、泣きそうな声になっても必死に伝えようとする少年は、『桜木ユキ』そのものだった。
小さくても、幼くても、どこまでも優しくて、どこまでも温かくて。
白鐘もその手を自分の両手で包み返し、そして弱弱しく笑う。
「……そうですね、自分が自信を持たないと、何処へも進めませんもんね。
…変われるでしょうか、僕も」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ、なおとおねえちゃ。
なおとおねえちゃは、一人じゃないもん」
暖かな、ゆっくりとした声。
それに白鐘は笑い、少年もにへらと笑った。
シャドウは白く輝くカードへと変わり、彼女の手元へ消える。
彼はというと、手を離して俺に近づき、何かを取り出して言った。
「おねがい、ユキをたすけて。おにいちゃたちなら、できるかもしれないから」
少年は懐中時計を手渡し、そして笑う。
「ユキさ、」
声をかけようとしたその時、少年は白い光に包まれて、いなくなった。
その代わりに、同じ風貌の青年がぼんやりと立っていて、周りを見て目を細める。
「………あ、治ったんだ?」
「え、ちょっと、ユキさん、今の、って……」
「?何?」
「今、ユキさんのちっちぇーバージョンが……」
「?」
首を傾げたその仕草は先ほどの少年にそっくりで、けれどユキさんは少年になっていた間のことを何も覚えていないらしい。
気を失っていたら物事が片付いていた。そう言った彼はとりあえずと白鐘を抱え爆破寸前の実験場から逃げるように指示し、全員がそれに従って走り今日はそれで解散となった。
咄嗟にポケットに入れた懐中時計は、帰った後も消えずに残り続けていた。
そんなどこか感心した声に、「ですね」以外の言葉が出ずに肩を落とす。
クマや花村など、男性陣がほぼ敵シャドウの攻撃を受け高齢化した今の状況は、混沌以外の何物でもないからだ。
白鐘のもとに辿り着いた後、いつも通りシャドウに話しかけに行ったユキさんは、白鐘が女性だったことも知っていたようで小声ではあるものの普通に会話をしていた。
「そっか。なら、仕方ないね」という声と同時に敵のシャドウ化が始まり、今に至ったわけなのだが……
「少し本人と話をしたいけど、攻撃が厳しいかも。受けるとペルソナも出なくなるのはきついね」
「そうですね……女子には特に受けさせたくないですから、回避に専念してもらっていますし……」
思わずため息をつくと、その体を「危ない!」とユキさんに引かれ尻餅をつく。
引いた反動でシャドウの攻撃が当たった彼を見、思わず「ユキさん!?」と叫んだ。
あの人がいないと、攻撃も厳しくなるのに。
というかあの人が老けるなんて、想像もできない!!
冷静なのか何なのか分からない頭で考えていれば、その物陰は小さく体を揺らした。
「あれ……ユキさん、なんか……」
黒いフード。白い髪を揺らす、小さな身体。
丸く大きな赤い瞳は、きょろりと辺りを見回す。
「?」
どう見ても、小さい。
高齢化じゃなく、幼少化したとでも言うべきか。
シャドウ自体も驚いたのか攻撃が止んだものの、衝撃的すぎて攻撃するどころじゃない。
彼はこちらに目もくれずシャドウを横切りとてとてと白鐘に近づいて、首を傾げた。
「…おねえちゃ、お名前、なんていうの?」
「え……」
「あ、そじゃなかった、えっと、はじめまして!おねえちゃのお名前、おしえてください!」
きらきらした瞳で、にこにこと。
この場でやる事なのか分からないそれに彼女も呆気に取られ、口を開く。
「……白鐘、直斗です」
「ユキはね、ユキって名前なの。んー…なおとおねえちゃは、かっこいいおねえちゃなんだね!」
「……かっこよく、なんて……それに、僕は女ですから……変、ですよ……」
「?」
俯いた白鐘に合わせるようにしゃがんで首をかしげると、少年は困ったような顔で聞き返した。
「ユキはぬいぐるみが好きだけど、おとこだよ?
ユキ、へんなの……?」
「い、いえ、そんな事は、」
「だったらおねえちゃだってぜんぜんおかしくないもん!
なんで好きなもので、なりたいものでへんって言われなきゃいけないの!?」
彼は小さな手で彼女の片手を包み、そして真っすぐ目を見て言葉を続ける。
「お母さん言ってたもん!好きなものは人それぞれで、ほかの人がへんとかむりだとか言う”けんり”なんてないって!
とくいなものも、なりたいものも、だれにもひていされるものじゃないって!」
「……!」
「じぶんがみとめなきゃ、ダメなの、じぶんが好きなこととか、なりたいもの、したいこと、ちゃんとみとめてあげなきゃ、ダメなのぉ……!!」
嗚咽が混じり、泣きそうな声になっても必死に伝えようとする少年は、『桜木ユキ』そのものだった。
小さくても、幼くても、どこまでも優しくて、どこまでも温かくて。
白鐘もその手を自分の両手で包み返し、そして弱弱しく笑う。
「……そうですね、自分が自信を持たないと、何処へも進めませんもんね。
…変われるでしょうか、僕も」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ、なおとおねえちゃ。
なおとおねえちゃは、一人じゃないもん」
暖かな、ゆっくりとした声。
それに白鐘は笑い、少年もにへらと笑った。
シャドウは白く輝くカードへと変わり、彼女の手元へ消える。
彼はというと、手を離して俺に近づき、何かを取り出して言った。
「おねがい、ユキをたすけて。おにいちゃたちなら、できるかもしれないから」
少年は懐中時計を手渡し、そして笑う。
「ユキさ、」
声をかけようとしたその時、少年は白い光に包まれて、いなくなった。
その代わりに、同じ風貌の青年がぼんやりと立っていて、周りを見て目を細める。
「………あ、治ったんだ?」
「え、ちょっと、ユキさん、今の、って……」
「?何?」
「今、ユキさんのちっちぇーバージョンが……」
「?」
首を傾げたその仕草は先ほどの少年にそっくりで、けれどユキさんは少年になっていた間のことを何も覚えていないらしい。
気を失っていたら物事が片付いていた。そう言った彼はとりあえずと白鐘を抱え爆破寸前の実験場から逃げるように指示し、全員がそれに従って走り今日はそれで解散となった。
咄嗟にポケットに入れた懐中時計は、帰った後も消えずに残り続けていた。