変わったこと、変わらないこと
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「ここ、いい?」
そろそろ、夕焼けが早く町を包むようになってきた。
展望台でぼんやりと町を眺めていた白鐘に声を掛けたのは、いつものパーカー姿の男性だった。
白鐘は頷き、同じようにぼうっとし始めた彼に徐に話しかける。
「桜木さん」
「?」
「桜木さんは、どう思ってますか?今回の事件について」
「……沢山考えてるけど、全部、証拠がない」
可能性が無いことを証明する事は出来るかもしれないけど、あるものが見つからない。そう言って、白髪は小さく揺れた。
「難しいね。勉強を沢山してても、実際全部掴みきれないのは」
その、事件以外にもかかっていそうな言葉に白鐘は目を丸くし、しかし言及しないようにと相手を見ずに話を続ける。
「……マヨナカテレビの事なんですけど、貴方も一度、映りましたよね?それも……特番で扱われていない時に」
「……ああ、帽子屋?」
「はい?」
「あの時、風邪引いちゃって。悠達に後から聞いたんだ。帽子屋みたいな格好した俺がテレビに映ってたって」
見てたんだね。そう言われ、ええと返す。
「……行方不明にはならなかったんですか?」
「聞いてると思うけど、足立さんとか、堂島さんとか、あとお医者さんも俺の家に来てるんだよ。行方不明になってはない。だから俺もある意味、イレギュラーって事になるかな」
「……そうですか」
「……ごめんね、記憶無くて」
桜木は目を細め、ほんの少し眉を下げた。
「君にとって、確実な正体に俺はなれないんだろうなって、思ったから」
それは、少し迷っている顔だった。
隠し事をしている訳ではなく、誠意を返せない事を、どうするべきかと考えている顔だった。
「……これでも、探偵ですよ?僕は」とそれに対し苦笑すると、その目がまた少しだけ丸くなる。
「桜木ユキさん。19歳。月光館学園の初等部から高等部2年まで通っていて、御両親は事故死。それと……」
白鐘は少し躊躇い、一層小さな声で、けれど届きそうな声で繋げた。
「……貴方は中等部の時に一度、暴力沙汰を起こして謹慎処分になっています」
「……」
「内容も、申し訳ありませんが調べさせていただきました。上級生に対する一方的な暴力というのが、大多数の見解でしたが……」
「違うの?」
「ええ。当時の高等部の保健医などからの証言が取れています。貴方は上級生に無理矢理……その、性行為を迫られて、その際目を塞がれた事で暗所恐怖症のパニックに陥り咄嗟に殴ってしまったと」
暗所恐怖症だった、というのも、白鐘にとっては意外だった。
だって彼は暗闇に対し、あまりにも普通でいそうだと思っていたから。
「……せい、こうい」
「はい。……だから思ったんです。幾ら貴方が死体の発見者で、記憶がないと言っていても……貴方は犯人じゃない。ただとても……勘違いされやすい人なんだって」
自分の事を、擁護しない人。
そして、少し悲しいくらい、運が悪い人。
多分そんな感じだろうと評価した彼は「……そ、う」と目を伏せて景色の方へ目を向ける。
「どうかしましたか?」
「……ううん。少し、自分の事が分かっただけ」
「桜木、さん……」
……この人は、初めて会った時にこんな表情をする人だっただろうか。
それとも、初対面だったからこそ表情が能面に近く見えていたのだろうか。
「……彼らに、この話は?」
「した事ないし、する気もない。だって俺は、ただの助っ人だから」
「……そうやって話さないから、勘違いされるのでは?」
「そうかもね。……それでも、俺以外の人が勘違いされるよりはマシだよ」
俺は別に、勘違いされて辛いと思ってはいないし。
そう呟いて、ふと白鐘の方を見「そういえば」と首を傾げた。
「試すの?マヨナカテレビ」
「!……ええ」
「分かった。必ず助ける」
「……よろしくお願いします」
相変わらず、どうやって、とか、何を、とかが欠けた言葉だ。
それなのに、ひどく安心感のあるその言葉に白鐘はまた笑って頭を下げた。
そろそろ、夕焼けが早く町を包むようになってきた。
展望台でぼんやりと町を眺めていた白鐘に声を掛けたのは、いつものパーカー姿の男性だった。
白鐘は頷き、同じようにぼうっとし始めた彼に徐に話しかける。
「桜木さん」
「?」
「桜木さんは、どう思ってますか?今回の事件について」
「……沢山考えてるけど、全部、証拠がない」
可能性が無いことを証明する事は出来るかもしれないけど、あるものが見つからない。そう言って、白髪は小さく揺れた。
「難しいね。勉強を沢山してても、実際全部掴みきれないのは」
その、事件以外にもかかっていそうな言葉に白鐘は目を丸くし、しかし言及しないようにと相手を見ずに話を続ける。
「……マヨナカテレビの事なんですけど、貴方も一度、映りましたよね?それも……特番で扱われていない時に」
「……ああ、帽子屋?」
「はい?」
「あの時、風邪引いちゃって。悠達に後から聞いたんだ。帽子屋みたいな格好した俺がテレビに映ってたって」
見てたんだね。そう言われ、ええと返す。
「……行方不明にはならなかったんですか?」
「聞いてると思うけど、足立さんとか、堂島さんとか、あとお医者さんも俺の家に来てるんだよ。行方不明になってはない。だから俺もある意味、イレギュラーって事になるかな」
「……そうですか」
「……ごめんね、記憶無くて」
桜木は目を細め、ほんの少し眉を下げた。
「君にとって、確実な正体に俺はなれないんだろうなって、思ったから」
それは、少し迷っている顔だった。
隠し事をしている訳ではなく、誠意を返せない事を、どうするべきかと考えている顔だった。
「……これでも、探偵ですよ?僕は」とそれに対し苦笑すると、その目がまた少しだけ丸くなる。
「桜木ユキさん。19歳。月光館学園の初等部から高等部2年まで通っていて、御両親は事故死。それと……」
白鐘は少し躊躇い、一層小さな声で、けれど届きそうな声で繋げた。
「……貴方は中等部の時に一度、暴力沙汰を起こして謹慎処分になっています」
「……」
「内容も、申し訳ありませんが調べさせていただきました。上級生に対する一方的な暴力というのが、大多数の見解でしたが……」
「違うの?」
「ええ。当時の高等部の保健医などからの証言が取れています。貴方は上級生に無理矢理……その、性行為を迫られて、その際目を塞がれた事で暗所恐怖症のパニックに陥り咄嗟に殴ってしまったと」
暗所恐怖症だった、というのも、白鐘にとっては意外だった。
だって彼は暗闇に対し、あまりにも普通でいそうだと思っていたから。
「……せい、こうい」
「はい。……だから思ったんです。幾ら貴方が死体の発見者で、記憶がないと言っていても……貴方は犯人じゃない。ただとても……勘違いされやすい人なんだって」
自分の事を、擁護しない人。
そして、少し悲しいくらい、運が悪い人。
多分そんな感じだろうと評価した彼は「……そ、う」と目を伏せて景色の方へ目を向ける。
「どうかしましたか?」
「……ううん。少し、自分の事が分かっただけ」
「桜木、さん……」
……この人は、初めて会った時にこんな表情をする人だっただろうか。
それとも、初対面だったからこそ表情が能面に近く見えていたのだろうか。
「……彼らに、この話は?」
「した事ないし、する気もない。だって俺は、ただの助っ人だから」
「……そうやって話さないから、勘違いされるのでは?」
「そうかもね。……それでも、俺以外の人が勘違いされるよりはマシだよ」
俺は別に、勘違いされて辛いと思ってはいないし。
そう呟いて、ふと白鐘の方を見「そういえば」と首を傾げた。
「試すの?マヨナカテレビ」
「!……ええ」
「分かった。必ず助ける」
「……よろしくお願いします」
相変わらず、どうやって、とか、何を、とかが欠けた言葉だ。
それなのに、ひどく安心感のあるその言葉に白鐘はまた笑って頭を下げた。