月光館学園
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彼女達が、去って。
あの子はあれだけ人らしくなれたのかと、少し、嬉しくて。
学校の方へ向き直ると、そこにはまた見覚えのある男性が頭をかいて立っていた。
ボサボサの髪。よれた白衣。不思議と、怖くない人。
「ミスター桜木」
そう、その人は口を開いた。そして俺の方に、ゆっくりと足を踏み出す。
「貴方は漸く、貴方自身の人生を顧み始めたようですね」
「……」
「これから整理していく中で、辛かったのだと嘆く事もあるでしょう。無駄だったのかもしれないと絶望することもあるでしょう。ですが、」
ピタリ。一度言葉を切り、そしてまた自分をじっと見つめて口を開いた。
「それを全て経た上で、今の前へ進むべき貴方がいるのです。それが命の理。神よりも無知である我々が、我々たるものを理解する第一歩」
「……」
「おゆきなさい。誰かの為でなく、約束の為でなく、他の何者にもなり得ない貴方自身の為に」
その言葉は、難しくて、優しかった。
幼い頃にも聞いたような声に、俺は頷いてから頭を下げる。
「……ありがとう、ございます」
俺が覚えていない事を、きっとこの人は知っている。分かっている。
それでもこうして、声をかけてくれる。
「いえ。今度会う時には、とびきりのお茶を用意しておきましょう。ここはいつでも、貴方に開かれていますから」
イッヒッヒ……。そう笑いながら手をひらとさせ、その人は踵を返して進み出した。
それを見送りながら、もう、この学校に踏み出そうとは思わなかった。
もっと、思い出してから。もっと、強くなってから。
この学校のいい思い出を、行きたいと思っていた思い出を手に、あの人に会いに行こう。
あの人の出す苦い何かを飲んで、他愛のない話をして、生きていてよかったと、あの人にちゃんと言うために。
あの子はあれだけ人らしくなれたのかと、少し、嬉しくて。
学校の方へ向き直ると、そこにはまた見覚えのある男性が頭をかいて立っていた。
ボサボサの髪。よれた白衣。不思議と、怖くない人。
「ミスター桜木」
そう、その人は口を開いた。そして俺の方に、ゆっくりと足を踏み出す。
「貴方は漸く、貴方自身の人生を顧み始めたようですね」
「……」
「これから整理していく中で、辛かったのだと嘆く事もあるでしょう。無駄だったのかもしれないと絶望することもあるでしょう。ですが、」
ピタリ。一度言葉を切り、そしてまた自分をじっと見つめて口を開いた。
「それを全て経た上で、今の前へ進むべき貴方がいるのです。それが命の理。神よりも無知である我々が、我々たるものを理解する第一歩」
「……」
「おゆきなさい。誰かの為でなく、約束の為でなく、他の何者にもなり得ない貴方自身の為に」
その言葉は、難しくて、優しかった。
幼い頃にも聞いたような声に、俺は頷いてから頭を下げる。
「……ありがとう、ございます」
俺が覚えていない事を、きっとこの人は知っている。分かっている。
それでもこうして、声をかけてくれる。
「いえ。今度会う時には、とびきりのお茶を用意しておきましょう。ここはいつでも、貴方に開かれていますから」
イッヒッヒ……。そう笑いながら手をひらとさせ、その人は踵を返して進み出した。
それを見送りながら、もう、この学校に踏み出そうとは思わなかった。
もっと、思い出してから。もっと、強くなってから。
この学校のいい思い出を、行きたいと思っていた思い出を手に、あの人に会いに行こう。
あの人の出す苦い何かを飲んで、他愛のない話をして、生きていてよかったと、あの人にちゃんと言うために。